国立難関大学の工学系学部と研究科などで構成する一般社団法人八大学工学系連合会は、女性理工系人材と博士人材の育成についての声明を発表した。理工系の学問やキャリアの魅力を伝え、女性学生比率向上を目指す。その入り口として、入試での女子枠設置にも取り組む。

声明を発表した一般社団法人八大学工学系連合会の代表者
声明を発表した一般社団法人八大学工学系連合会の代表者

 2025年3月28日、北海道大学、東北大学、東京大学、東京科学大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の工学系学部と研究科などで構成する一般社団法人八大学工学系連合会は、女性理工系人材と博士人材の育成についての声明を発表した。特に、女子学生比率の向上に向けて、入試に女子枠を新設するほか、8大学が連携して施策の横展開に乗り出す。

 産業界の理工系女性人材の採用意欲は高い。2024年春、経団連が発表した提言では「積極的に採用したい専攻分野」として、工学系、数理・データサイエンス・AI系、理学系を挙げ、6割以上の企業で女性人材採用拡大の方針であることを明らかにした。しかし、この8大学における学部の女性学生比率は13%にとどまる(修士は10%、博士は4%)。この原因について、同連合会は「女子の小中高生、その保護者、進路指導の先生方に、工学系学部の学問の魅力や卒業後のキャリアについて十分伝えられておらず、工学系の進路に対する社会的なバイアスが存在している」と分析する。例えば京都大学の場合、農学部や薬学部の女子学生率が4割近いのに対し、工学系に在学する女子学生は約11%にとどまる。

 こうした大学側の危機感から、8大学では入試制度における女子枠の設置に乗り出した。京都大学と大阪大学では令和8年度入試から総合型選抜入試に女子枠を設置、他大学も検討中だ。すでに名古屋大学工学部の一部学科では学校推薦型選抜に女子枠を設けている。また東京科学大学では、すでに2024年4月入学の学生の一部に女子枠を導入し、25年度には拡大している。ただし、「人数は増えたが、これでは成果だと言えない。女子学生が入学後の過程で何を学びどう成長していくかが問われる」(同大学⼯学院⻑井上裕嗣氏)という。

 そこで8大学は女子学生の学習環境整備や経済支援、広報にも取り組み、各大学で効果的な施策を横展開していく。「女性は理工系に向かないという社会の思い込みは根強い。一方で、女子学生や多国籍の学生が集まる研究室では議論も大いに進展し、研究活動も活発になる」(東京⼤学⼯学部⻑加藤泰浩氏)。工学は、医療・創薬や食・農業などの分野でAI・ネットワーク技術を活用し、社会をデザインする役割も担う学問だ。京都⼤学⼯学部⻑の⽴川康⼈氏は「工学は日常生活に密着するものづくりやインフラに寄与する学問なだけに、女性の視点や感性が取り入れられなければイノベーションは起こせない」と指摘する。

(出所:一般社団法人八大学工学系連合会)
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(出所:一般社団法人八大学工学系連合会)

 同連合会では、こうした取り組みの情報発信強化のため「つながる工学ウェブ」を新設。各大学のイベント情報などを告知していく。