原発事故で屋内退避「全住民に物資供給ムリ」「誰が民間に要請?」 自治体の不安に応えないまま最終報告書

2025年3月29日 06時00分 会員限定記事
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 原発事故時に住民の被ばくを低減させる目的の屋内退避のあり方を巡り、原子力規制委員会の検討チームは28日、最終報告書案に対し寄せられた原発30キロ圏自治体からの意見を公表した。地震や津波が同時に発生する複合災害時の対応や、住民が屋内退避を続けるための物資調達やサービス提供で民間事業者頼みになっている点に、多くの疑問や不安が届いた。だが、チームはこの日、案を一部修正しただけで了承し、実効性に問題を残したまま規制委の会合に近く報告することを決めた。(山下葉月、荒井六貴)

◆30キロ圏の43自治体から意見が寄せられたが

 チームが2月5日に示した案について、30キロ圏の43自治体から計約250件の意見が寄せられた。
 自治体の意見を踏まえて、この日まとめた最終報告書によると、「屋内退避の目安は3日間」としていたのを「退避開始から3日後に継続できるか判断する」と変更。3日経過後に避難に切り替わると誤解されないようにした。インフラや物資供給が整っていれば、屋内退避は継続されるとした。

屋内退避の最終報告書案を了承した原子力規制委員会の検討チームの会合=28日、東京都港区で(山下葉月撮影)

 その上で「必要な支援がなければ住民の負担が増え、生命・身体へのリスクが発生する恐れがある。物資の供給や備蓄、人的な支援が重要」と強調した。
 ただ、自治体による物資供給には「屋内退避中の全住民への食料配布は不可能」(水戸市)「国として、いかに住民に物資を供給するか考えて」(松江市)と限界が指摘された。地震で自宅が倒壊し、とどまれない場合の避難先への物資供給についても、「備蓄確保が大きな課題」(青森県むつ市)「自治体の備蓄を前提としているが、国が支援を」(東通村)などの声があったが、報告書で解決策は示されなかった。
 報告書では、食料がなくなれば住民が一時外出でスーパーやコンビニなどの小売店に買い物に行くことは可能と示した。また、屋内退避中の民間事業者による必要な活動は、物資輸送やライフラインの復旧、緊急性の高い医療・介護を挙げた。小売業も「活動継続が期待される」と規定した。
 だが、原発事故が起きている最中に、民間事業者の善意の活動に期待することに自治体から不安の声が続出。「屋内退避の指示地域で、民間が従業員に服務を命じるのをためらうことが容易に想像される」(滋賀県)「民間に対し誰がどのようにして営業を要請するのか検討を」(新潟県)と指摘。これらに対し、報告書は「引き続き検討が求められる」と問題解決を先送りした。
 ほかに、自宅が倒壊した際に向かう近隣の避難所の耐震化、災害に強い避難経路の整備なども必要事項に挙げながら、いず...

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