第28話:天才軍師
聖暦1015年6月30日、ライラック平原。
早朝から陣を敷くのは、クライン王国軍。
先行して放った
太陽が頂点に登らんとする頃――南方に
全体のフォルムとしては、ヒグマに近いだろうか。
空を
大空を泳ぐその
「「「……っ」」
王国の正規兵たちが緊張が走る中、
「会いたかったぞ、
最前線に立つダフネスは、
(ホロウ、ダフネス……みんな、無事でいてね……っ)
戦線の中ほどに位置するレイラが、不安気に瞳を揺らした。
「――行くぞ」
「うん」
「あぁ」
軍師ホロウ・フォン・ハイゼンベルクは、ニアとエリザを引き連れて、王国が保有する『黒龍』に乗った。
龍の背には簡易的な
そこは本来、指揮官たるダフネスの場所なのだが……。
彼は最前線で拳を振るうため、軍師であるホロウとその臣下が立つことになったのだ。
(しかし、原作と同じで本当にデカいな……)
飛来するは
「これより我等は、死地へ向かう。敵は『
王国軍が息を呑む。
「しかし、何も案ずることはない。此度の
ホロウの力強い
「「「「「おぉおおおおおおおおおおおお!」」」」」
兵の士気が大きく跳ね上がった。
それからほどなくして、天喰の巨体がデオン山を越え、ライラック平原に入ると同時、
「――作戦開始」
ホロウの静かな号令が響き、戦いの
次の瞬間、
「ぬぉおおおおおおおおおおおお!」
凄まじい魔力を解き放ち、先陣を駆け抜けるのは、指揮官ダフネスだ。
彼は驚異的な
「挨拶代わりだ! 受け取れぃ!」
<
その瞬間、
「グォオオオオオオオオオオオオ!?」
天喰の大きな瞳がギョロリと動き、
お返しとばかりに
「ブォオオオオオオオオオオオオ!」
『漆黒の重力波』を解き放つ。
『呪いの重力』を
呪いの対象は生物だけに留まらず、土地・樹木・大気など、あらゆる事物を犯し・腐らせ・殺す。
<
「
次の瞬間、
(うわぁ……。原作通り、
黒龍の背中に
<
その力に掛かれば、『燃える雪』・『柔らかい鋼鉄』・『正十八面体』などなど、
ダフネスと
「「「「「――<炎の槍>!」」」」」
側面に展開した魔法士部隊が、一般攻撃魔法を使い、ダメージを刻んで行く。
ダフネスの拳と魔法の攻撃を受けた天喰は、
「ズォオオオオオオオオ!」
尾から伸びる触手の一本を赤く光らせた。
(右から三本目、色は赤か)
ホロウはすかさず<
「――五番隊、上空に<
その直後、天喰は巨大な右腕を振るい、呪いの重力波を放った。
しかし、
「「「「「<
巨大な不可視の壁によって防がれる。
「――二番隊、がら空きの側面を撃て」
続けざまに指示が飛び、
「「「「「――<風の斬撃>!」」」」」
鋭い風の刃が、無防備な
「グォオオオオオオオオッ!」
地鳴りのような声が響き、天喰の頭部に浮かぶ
(反時計回り、回転数は三)
ホロウの観察眼が、『攻撃の前兆』を正確に見抜いた。
「――八番隊、
だが、
「「「「「<獄炎>!」」」」」
灼熱の
「――七番隊、頭上に<雷撃>だ」
「「「「「――<雷撃>!」」」」」
天空より降り注ぐ強烈な
王国軍の攻撃は急所に刺さり、天喰の反撃は適確にいなされる。
ホロウの指示は、文字通り『完璧』だった。
その
「す、
「あぁ、
「これがあのアイリ様を上回る、『王国最高の天才軍師』か……」
ホロウの指揮によって、戦の
(父と魔法士部隊の総攻撃で、天喰の外皮が剥がれてきたね。
黒龍の背中から戦場を
(おっ、来たね。
ホロウはすぐさま、全軍へ指示を飛ばす。
「――総員、
天喰のブレスを前にして、王国軍は無防備な体を晒した。
魔力強化はおろか、防御魔法さえ使わない。
こんな状態で攻撃を食らえば、壊滅的な被害を負うだろう。
「おいおい、マジでやんのかよ……っ」
「作戦として聞いちゃいたが、まさか本気で実行するとは……ッ」
「あぁくそ、まだ死にたくねぇなぁ……」
王国軍の兵たちが魔力を消すと同時、天喰の
地中に埋められた魔水晶が起動し、そこに内包する魔力が解き放たれたのだ。
すると次の瞬間、
「グォオオオオオオオオオオオオ!」
紅蓮の熱波が地層を貫き、強烈な衝撃波が吹き
(ふふっ、やっぱり原作と同じだね!
彼は自身の大魔力を魔水晶に込め、それを天喰の進行ルートに埋めておき、『囮』として使ったのだ。
「す、凄い……!」
「本当にお前の言う通りだな……っ」
両隣に控えるニアとエリザが感心する中、
「くくっ、驚くのはまだ早いぞ?」
「「えっ?」」
次の瞬間、灼熱のマグマが凄まじい勢いで
「ギィイイイイイイイイイイイイイイイ……ッ!?」
耳をつんざく壮絶な悲鳴が、地平線の彼方まで轟いた。
超高出力のブレスにより、休眠中のデオン山が刺激され、大噴火が起こったのだ。
無論、これは偶然ではない。
ホロウの仕掛けた、『ギミック攻撃』である。
(よしよし、地形を上手く利用できたね! デオン山の噴火は、『HP30%分の割合ダメージ』、これはかなり効いたはず!)
彼の『悪魔的な知略』を見せ付けられた王国軍の兵たちは、
「あの強烈なブレスをいとも容易く
「しかもこの大噴火、『防御』と『攻撃』を一手にこなしたぞ……ッ」
「これが『天才軍師』ホロウ・フォン・ハイゼンベルク、いったい何手先まで計算してんだ!?」
『純粋な尊敬』を超えて、『底知れぬ恐怖』を
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