【第9回】民間委託が“処分”を行う?――ブラックボックス化する補助金行政の深層
2024年、私たちが提起した「事業再構築補助金取消処分に関する行政訴訟」は、単なる1社の不服申立てではありません。
それは、中小企業支援制度の根幹を揺るがす、行政の“構造的問題”に切り込む挑戦です。
中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」)は、補助金事務の大半を大手民間企業パソナに委託しています。
そのこと自体は珍しいことではありませんが、私たちが情報開示請求によって入手した契約書を精査した結果、見過ごせない問題が浮き彫りになりました。
「行政処分的業務」を委託?契約との乖離
以下が開示請求で得た契約書のPDFです。
「本業務において行う検査等は、あくまで“事務的・形式的”な確認にとどめるものとし、法的判断や行政処分に関わる内容は、発注者(中小機構)が担う」
つまり、パソナに委託できる業務は、形式的な確認や書類の整合性チェックなどに限定されているのです。
これは、公的制度の運用においては当然の規定です。なぜなら、「行政処分」は、私人に対して法的効果を及ぼす重大な判断であり、民間事業者が担うべきではないからです。
ところが――。
私たちが受けた「交付取消通知」や、それに至るまでの調査報告、さらには実地検査後に送られてきた「不適切な報告があった」とする文書、
これらの作成と主導が、パソナ(補助金事務局)によって実質的に行われていたのです。
これは明らかに契約の趣旨から逸脱しており、事務的・形式的にとどめるはずだった民間委託が、法的効力を伴う処分の根拠を作り出していたという重大な問題です。
「処分性」の観点で考えると
行政事件訴訟法上、処分性を有するには、以下の3要件が求められます。
外部性:行政行為が国民の権利義務に直接的影響を与える
法的効果:法令に基づいて一定の法律効果を生じさせる
公権力性:行政が一方的に優越的地位で行う行為
交付取消通知は、まさにこれに該当します。
しかし、その「証拠」や「報告書」が民間委託事業者によって作成・提出されているとすれば、処分の正当性は大きく揺らぎます。
しかも、処分理由が後になって変わったり、当時未入社だった社員の“証言”が根拠とされるなど、杜撰な調査・不正確な検査の疑いも生じています。
責任の所在が不明確なまま、「不利益処分」だけが先行する
契約書の中では、委託者と受託者の「責任分担」についての明確な規定が見当たりません。
つまり、万が一誤処分や瑕疵による損害があった場合でも、どこが責任を取るのか明示されていないのです。
「責任は中小機構」「実務はパソナ」「判断の実態は不明」
この“ねじれ構造”によって、補助事業者が不利益を被っても、誰に異議を申し立てればよいのか、どこに責任を問えばよいのか、完全にブラックボックス化しています。
私たちの立場と提案
補助金制度は「支援」のための制度であるはずです。
しかし、今や声を上げる支援機関や事業者が狙い撃ちにされるような事態が起きています。
私たちは、制度の健全化のために以下を強く提言します。
審査・検査マニュアルの原則公開
法的効果を伴う処分に民間が関与することの禁止
責任所在の明確化(委託・受託双方)
中立的な異議申立機関の創設


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