【第8回】:補助金は「売上」で判断されるものなのか?
──支給要件をめぐる誤解と現場の混乱
これまでの連載では、私たちが中小企業基盤整備機構を相手取って提起している取消処分訴訟の経緯と背景をお伝えしてきました。
今回は、少し趣向を変え、補助金制度の現場で実際に起きている「誤解された運用」の事例を取り上げます。
テーマはずばり、
「補助金は売上が立たないと支給されないのか?」
という疑問です。
実際に現場であった、ある“指導”
私たちが支援している事業者に、以下のような事務局からの連絡がありました。
「現場の写真と、売上の数字が確認できないと補助金は出せません」
「通販でも何でも良いので、売上を立ててください」
「はじまりさん(=支援者)が手伝えば売上すぐ立ちますよね?」
一見もっともらしく聞こえますが、この“指導”には根本的な誤解があります。
補助金の支給=売上ではない
補助金は、未来への投資を後押しする公的制度です。
支給の判断基準は「売上の有無」ではなく、事業が適切に実施されたかどうか。
支給にあたって確認されるべきは:
交付決定に沿った設備導入・工事が実施されたか
補助対象経費が適正に支出されているか
証憑書類(納品書・請求書・写真など)が整っているか
このような**「行為」の証拠**であり、売上はあくまで将来的な「成果」です。
なぜ“売上主義”が誤解を生むのか
この誤った運用がまかり通ると、何が起きるでしょうか。
開業直後の事業者が「まだ売上がない」ことを理由に補助金を拒まれる
無理やり帳簿に売上を計上するよう“誘導”される
本来の趣旨から外れた“形式合わせ”が横行する
それはつまり、公的制度によって不正や無理を助長しかねない構図が生まれてしまうのです。
「実績報告」とは何のための手続きか?
実績報告は、事業が完了したことを証明するものであり、「今の売上」が目的ではありません。
実施の証明=写真、契約書、支払い記録、などの客観的資料。
「事業実施はしたが、売上はこれから」というのは、成長ステージにある企業では極めて自然なことです。
支援現場の実感として
我々はこれまで、多くの中小企業・小規模事業者の補助金活用を支援してきました。
その中で一貫して感じるのは、
**「現場と制度のあいだのギャップ」**です。
制度を知らない事務局担当者が形式的な対応をし、現場の事情に耳を傾けない。
その結果、
「正しく実施したのに補助金がもらえない」
という理不尽な状況が起こるのです。
いま求められる制度の“正常化”
このような混乱を生まないために、以下のような対策が求められます。
売上発生を補助金支給の条件としない明確なガイドラインの整備
実績報告の本来の趣旨を踏まえた運用の徹底
審査・支給プロセスへの第三者的監視体制の導入
私たちは、**「補助金制度の正常化」**を目指して訴訟に臨んでいますが、それは個別の事案だけでなく、こうした制度運用上の問題にも目を向けているからです。
補助金は、事業の“未来”を支えるもの
制度を扱う側が「売上がなければ意味がない」という思考になってしまえば、
それは制度の目的そのものを失わせることにつながります。
本来の目的に立ち返り、「事業が着実に歩み出すための後押し」という原点に立ち戻るべきです。
次回予告:支援者を追い詰める構造の正体
次回は、これまでの訴訟の背景にある「補助金制度をめぐる構造的な問題」について、支援者・事業者の声とともに掘り下げます。


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