【第7回】補助金取消処分の被害と制度の歪み──支援者と事業者に何が起きているのか?
2025年1月、私たち「はじまりビジネスパートナーズ」は、中小企業基盤整備機構による事業再構築補助金の交付取消処分の違法性を争う行政訴訟を提起しました。
この訴訟は一事業者の問題にとどまりません。むしろ、制度の運用に潜む構造的な歪みと、それによって広がる「見えにくい被害」の実態を浮き彫りにしています。
✅ 被害は当社だけではない
本件取消処分により、当社が認定支援機関として関与していた複数の中小企業にも、重大な影響が及びました。
採択されていた1億円規模の案件が、処分を理由に無期限審査凍結
支援先10数社に対し、不審なメールや不自然な資料要求が連続
曖昧な理由による差戻しや、問い合わせへの形式的回答のみ
特に問題なのは、これらの審査遅延や照会が、当社が中小企業庁へ制度運用の改善を申し入れた直後に集中して起きたことです。中立であるべき審査機関が、制度の不備を指摘する支援機関や事業者に対して、何らかの“対応”を行ったとすれば、これは制度の正当性を根本から揺るがす重大な問題です。
✅ 「補助金行政」の構造的問題
このような事態が起きる背景には、補助金行政が抱える構造的課題があります。
◉ 多重下請け構造の中で責任が曖昧に
補助金制度の主体は中小企業庁
業務実施は中小企業基盤整備機構
現場運用はその再委託先である民間企業(例:パソナ)
このような委託構造の中で、実際の審査・取消・実地検査などは「どこが責任を負っているのか不明確なまま」進められます。
当社のケースでも、取消処分の原因となった実地検査は、これら3者の合同で行われました。その上で、証拠の捏造や録音拒否、証言の捻じ曲げなど、手続的にも重大な違法性が疑われる内容がありました。
✅ 「処分性」の問題と社会的インパクト
今回の訴訟では、交付取消処分に対して行政事件訴訟法上の処分性があるかどうかが争点の一つです。
裁判所は当初の民事訴訟から行政訴訟への振替を命じており、処分性の可能性を前提に審理が進んでいます。
処分性が認められるには、以下の三要件を満たす必要があります。
法令に基づく行為であること(行政処分)
国民の権利義務を直接形成・変更すること
その行為によって法的地位に具体的な不利益が生じること
取消処分により、補助金の受給権が消滅し、債務(返還)が発生することから、明らかにこれらに該当すると考えられます。
✅ 制度の「正常化」に向けた提言
このような問題は一部の事業者だけに降りかかっているのではなく、今後補助金を申請する全ての中小企業に関係のある課題です。
私たちは、制度の正常化に向けて以下を求めていきます。
取消処分・返還処分における透明性と法的根拠の明確化
実地検査や審査の手続きにおける記録の義務化と説明責任
再委託事業者による過度な裁量行使の抑制
支援機関・事業者に対する不平等な対応や報復行為の是正
私たちは、これまで沈黙を余儀なくされてきた事業者の声を代弁し、今後の補助金制度が公正に運用される社会を目指して訴訟を継続していきます。
次回予告:「補助金支給要件に売上が発生していること」の異質さ
ここまでは、当社の裁判に関する記録や論点について説明してきましたが、制度全般の適法性を見るという点で、少し話題を変えて最近発生した事案で、「実績報告における、新規事業の売上の有無で支給要件とする」とした事業再構築補助金事務局の対応に関する問題について詳説したいと思います。


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