【第6回】民事から行政事件へ──裁判所の判断が意味するものとは?
2024年12月、私たちは中小企業基盤整備機構による事業再構築補助金の交付取消処分の違法性を訴えて、東京地裁に提訴しました。当初は「債務不存在確認請求」という民事訴訟の形式を取っていましたが、裁判所の判断により、訴訟類型が行政事件へと切り替えられることとなりました。
この変更は、実は非常に大きな意味を持っています。今回は、なぜこのような切り替えが行われたのか? そして、それが私たちの訴訟、さらには補助金行政全体にどのような波紋を広げるのか? を、簡潔にお伝えします。
行政事件とは何か?
行政事件とは、「行政庁の行為(処分や裁決)が適法かどうか」を争う訴訟です。今回のような補助金の交付取消し処分がその対象に当たるかどうかは、常に議論のあるところですが、以下の3つの要件を満たすとき、処分性があるとされ、行政事件とみなされます。
【処分性の3要件】
行政庁の公権力行使による行為
国民の権利義務に直接影響を及ぼす
法的効果がある一方的な行為
この要件に照らせば、今回の交付取消しはまさに「処分」に該当するものといえます。中小機構は当初から「これはあくまで契約上の解除だ」と主張していましたが、裁判所はその見解を採らず、「これは行政処分だ」と明示的・暗示的に判断した可能性があります。
民事訴訟と行政事件の違い
民事訴訟では、主に私的契約の範囲での「義務があるかどうか」が争点となります。しかし、行政事件では、国家権力の行使が適正だったかどうかが問題となります。
この違いは、次のような影響を持ちます:
行政側(中小機構)は処分の理由を説明する法的義務を負う
適正手続き(聴聞・弁明の機会)があったかどうかが問われる
立証責任の所在が変わる(行政側が正当性を示さねばならない)
なぜ中小機構は答弁書を出せないのか?
提訴から2か月以上が経過した今もなお、中小機構からは正式な答弁書が提出されていません。3月末にはようやく弁護士の委任状だけが裁判所に提出されたとの連絡がありました。
なぜ、ここまで遅れるのでしょうか?
それは、行政事件としての「訴訟構造」に対応できないからに他なりません。
中小機構はこれまで、事業再構築補助金の返還や取消処分にあたって、その正当性を「内部規定」や「委託事務の範囲内」として処理してきました。しかし、行政事件となれば、その“理由”と“手続きの公正さ”が問われるのです。
加えて、今回の実地検査や返還指示においては、録音の拒否、軽微な変更に関わる部分での瑕疵の指摘や証拠なき処分など、著しい手続き上の瑕疵が指摘されています。これらが法廷で明らかになることを避けたいがために、時間を稼いでいるという見方も否定できません。
行政事件への切替は当社にとって追い風
私たちとしては、裁判所が「これは行政事件として審理すべき」と判断したことは非常に意味のあることだと考えています。
これは、「処分性がある」ことを裁判所自身が事実上認めたことにも等しく、今後の審理の土台を形成します。
つまり、裁判のルールが、「中小機構が自らの行為の正当性を証明する立場」に切り替わったのです。
次回予告:被害拡大の実態と制度上の課題
次回は、今回の訴訟における“根拠なき取消処分”の背景と、その背後にある事務局の構造的問題、さらに私たちのような支援者や事業者への実害について具体的に掘り下げます。
制度の見直しや、今後の補助金制度における「正常化」に向けた提案にも触れる予定です。


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