【パリ=三井美奈】極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン前党首は3月31日、公金流用で5年間の被選挙権停止を命じた判決について、民放テレビで「政治的判決」と抗議し、控訴する構えを示した。ルペン氏の2027年の大統領選への出馬を阻む判決に対し、トランプ米大統領に近い実業家、イーロン・マスク氏や欧州の右派政治家が相次いで批判した。
ルペン氏はテレビで、裁判は結審まで推定無罪が原則なのに、判事は「仮執行」と呼ばれる判決の即時執行手続きを命じて「私が(大統領選で)選ばれないようにした」となじった。2年後の大統領選までに、控訴審で判決を覆すのは難しいことを認める一方、政界引退は否定した。29歳のジョルダン・バルデラ党首を大統領候補として擁立する可能性については、明言を避けた。
フランスではこれまで、ジュペ元首相やフィヨン元首相が公金流用で有罪となり、被選挙権を停止された。執行はいずれも上級審で判決が確定してからのことだった。ルペン氏は判決確定を待たず、判事が再犯防止を理由に即時執行を命じる異例のケースとなった。
判決にはルペン氏の「政敵」からも批判が出た。22年の大統領選でルペン氏と争った急進左派のメランション元下院議員は「政治家の排除は有権者が決めるべき」と主張した。中道右派「共和党」幹部、ベラミ欧州議員も「支持率で首位に立つ候補の出馬を司法が阻んでよいのか」と訴え、判決は民主主義に陰を落としたと論じた。
一方、世論調査では57%が「罪状からみて、ルペン氏への判決は当然」と答えた。マクロン政権は沈黙を保っている。
国際的にも波紋は広がり、マスク氏は「急進左派は選挙で勝てないと、司法を操って政敵を収監しようとする」とSNSで判決を批判。ハンガリーのオルバン首相、イタリアのサルビーニ副首相はルペン氏への支持を表明した。ロシアのペスコフ大統領報道官は「民主主義の規範を踏みにじる道をたどっている」と記者団に述べた。
ルペン氏は被選挙権停止に加え、10万ユーロ(約1600万円)の罰金、執行猶予付き禁錮4年の判決を受けた。欧州連合(EU)の欧州議員だった2004~16年の間、秘書給与の名目で党活動に公金を流用したとして有罪になった。