「売買」か「あっせん」か
しかし、逮捕容疑は「臓器売買」ではなく「臓器あっせん」だった。臓器の移植に関する法律(以後、臓器移植法と表記) はその11条で臓器売買を禁止している。それは海外のことであっても、提供者が外国人であっても違法とされる。
12条は「業として行う臓器のあっせんをしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」と定めている。
菊池の容疑は臓器移植法12条違反で、しかも3人が告発したキルギスでの移植ではなかった。死亡したベラルーシ人のドナーから摘出された腎臓と肝臓の移植で、国立病院と州立病院で行われた。ベラルーシは外国人への移植を認め、いずれも合法的に行われた移植だった。
しかし、厚労省の許可を受けて臓器斡旋を行っているのは、公益社団法人日本臓器移植ネットワークだけで、菊池は無資格で臓器あっせんを行ったとして罪に問われた。
読売は「臓器売買」から「臓器あっせん」という報道に変わった。
「臓器あっせん逮捕 NPO理事長 無許可容疑 ベラルーシで移植仲介 警視庁」「臓器あっせん 『移植費用の行方 解明して』 患者 徹底捜査求める」(読売新聞、2023年2月9日付)
NHKは「クローズアップ現代 内部音入手 追跡! 臓器移植と事件(2023年5月23日放送)」、「NHKスペシャル ルポ海外臓器移植の闇 ウクライナ人の臓器を違法売買 死亡事故も 海外に望をつなぐ患者 いのちを巡る葛藤(9月9日放送)」、「BSスペシャル 友の臓器で命をつなぐ 渡航移植にかける男達(2024年2月15日)」と3本の番組を放映した。
「文春オンライン」特集班も「臓器移植斡旋逮捕」(2023年2月26日)で事件について報道した。
だが、「取り調べは最初から臓器売買容疑でした」と、警視庁の本命は「臓器売買」による逮捕だったことを、保釈中の菊池が私に明かした。