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追伸:常春

さて。どこからどう話そうか。

前提として、この記事は一方的に誰の許可もなく書いている。なので削除の要求があれば直ちに削除する。そして、明日にはこの記事は非公開になっているだろう。

まず、あなたが消費者側の人間であるならば、彼について覚えておくべきことは二つである。彼の仕事はすごいこと。そして、彼はあらゆるものをすごく見せるのに長けていること。この二つだ。

彼の手にかかれば、面白さが1しかないものでさえ100にも1000にも見えるし、実際にそう感じられる。実際の面白さが100や1000にもなれば、指数関数的に見かけ上の面白さが増えていく。見かけ上の面白さという言い方をするとハリボテのような無意味なものに見えるかもしれないが、実際は非常に大切である。見かけ上面白そうなものでなければ消費者の食指は動かない。すごく見せるというのは、面白さを広める上で重要なのだ。難しい仕事だし、できる人は限られている。

注意が必要なのは、彼の得意分野があくまですごく「見せる」ことである、ということ。実際にすごいものを作る部分については、何枚も上手の人間がいる。もし彼が見せる凄さに共感できるなら、彼の見せ物の土台や基礎工事を担ったクリエイターにも少しだけ拍手してやってほしい。もちろん、彼への拍手も忘れずに。

次に、あなたが生産者側の人間であるならば、上記の二つに加えてもう一つ覚えておくべきことがある。彼を使えるようになれ、ということ。

彼は、良くも悪くもあなたの作るものを利用する。少なくとも、僕の知っている彼は。

価値のあるものを広めたいという純粋な善意から、その価値を使って荒稼ぎをしつつ自分自身の名声を高めたいという下劣な下心まで、ありとあらゆるものが混ざった動機を胸に、彼はあなたの作るものを利用する。あなたが有名であれば、虎の威を借る狐のごとく、あなたの知名度に乗っかって自分の存在を世に知らしめる。一緒に遊びに行ったとか、一緒に仕事をしただとか、そういったことをくどい程にアピールして、あたかも一緒に行動している自分もすごいかのような空気を纏う。逆にあなたが無名であれば、無名なあなたが作り上げた作品の完成に自分が多大なる貢献をしたかのような発言をする。人を自分の手下以下の存在に矮小化し、自分の野望のために倒れるまで使い倒す。その上で、報酬の分け前を交渉しようものなら、平然と自分の「多大なる貢献」分の分け前を要求する。

重要なので繰り返すが、彼はすごい人である。彼の仕事には価値がある。そして彼が長けているのは、すごくないものをすごく見せること。価値を生み出すこと以上に、価値を増幅させることが得意分野である。

そんな彼なので、自分を実力以上に見せることは彼にとって朝飯前のことである。もしかしたら読者の中には彼の実力、というより真の得意分野を勘違いしている人がいるかもしれない。もし勘違いしているのであれば、こんな言い方はしたくないが、あなたは格好のカモである。運が悪ければ骨の髄まで出汁を取られて調理される。それも、悪意なく。

彼に利用されるなら、せめて自覚しながら利用されると良いだろう。利用されすぎないように注意が払えると良いし、できることなら彼を利用できるようになるとなお良い。彼の仕事はすごい。彼に完全に取り込まれることなく、彼の力を借りられるのであれば、それ以上理想的なことはないだろう。

最後に、彼と今後接することがある人がいれば、難しいかもしれないが、愛を持って接してほしい。

あくまで印象でしかないが、彼は『オペラ座の怪人』の怪人のように、作品への貢献によってしか愛を語れないのではないか、あるいは、面白さに貢献していない自分が許せないのではないか、と僕は思っている。普段接している分には普通の人である。しかしごくまれに、愛を十分に受け取っていないからこそ人を愛せないような、そのような雰囲気を感じることがある。例えば、彼が誰かの貢献を褒めちぎっている時、それは9割方純粋な善意なのだろうが、1割程度は褒めちぎることによって他者を自分の配下に置こうとする支配欲が混ざっているように見える。もし実際にそうなのだとしたら、それは愛を知らないが故の言動かもしれない。

クリスティーヌの最後のキスは、その後の怪人の善意ある行動を招く。彼を愛する人が少し増えれば、彼自身にとっても、世界にとっても、少し良いことがあるのではなかろうか、と希望的観測を持っている。僕にしては珍しいほどポジティブな、ささやかな希望である。


僕は後輩と同期を二度使い潰された。
使い潰されたので、最後に彼を愛した。僕は彼ではないから。


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追伸:常春|えっふぃ
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