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あらゆる現場で話せるデバイスを作ろう——NTTの特許技術が詰まった「BONX Stick」開発秘話

業務現場で多発するコミュニケーション課題に挑むBONXは、2024年にNTTグループに参画。新たな体制で発表した「BONX Stick」は、技術とこだわりの詰まった胸元装着型の通話デバイスだ。新しい体制で挑んだBONX Stick開発の舞台裏を徹底取材した。(撮影:宮本七生)

インタビュー本編に入る前に、BONXが2024年にNTTソノリティの子会社になった経緯について触れておきたい。BONXはアウトドアスポーツ向けのグループ通話デバイスから事業を開始し、その後、法人向けコミュニケーションアプリや独自デバイスの開発/販売へと領域を拡大していた。

一方、NTT傘下のNTTソノリティは、騒音抑制など先進的な技術を生かした音響関連の事業を展開している。同社はBtoC分野とともに、BtoB分野のさらなる事業拡大を図っていた。

両社が協業を検討した結果、BtoB分野での製品開発の観点ではBONXが今まで培ってきた「ユーザーの声を迅速に製品へ反映する開発力」や「デザイン性へのこだわり」が、NTTソノリティの強みである「音響エンジニアリング」「ハードウェア設計/量産体制」と高い相乗効果を生むと判断。最終的にはNTTソノリティの子会社となることで、BONXは開発リソースや調達面での支援を得て、より規模の大きな製品開発が可能となり、NTTソノリティ側もBONXのコンシューマー/法人両面の実績とブランド力を取り込む形となった。こうして両社の技術力とユーザー志向が融合し、BONXがNTTソノリティの子会社として新たなかじを切ったのだった。

BONXのこれまでの経緯は過去のインタビューを参考にしてほしい。

NTTソノリティ傘下で新たに挑む開発プロジェクト

こうして新しい体制で新製品を開発することになったBONXは、胸元に装着する新製品BONX Stickの開発を2023年末に開始した。1年にわたる開発ストーリーをBONXのプロダクトデザイナー百崎彰紘氏と広報担当の設楽尚也氏、そしてNTTソノリティのプロダクト開発担当の中野達也氏に伺った。

左からBONX 百崎彰紘氏、設楽尚也氏、NTTソノリティ中野達也氏。 左からBONX 百崎彰紘氏、設楽尚也氏、NTTソノリティ中野達也氏。

——BONX Stickは、これまでBONXが手掛けてきた耳に付けるタイプのデバイスではなく胸元に装着するタイプですよね。開発のきっかけ、また新しいスタイルを採用した理由を教えてください。

中野氏:当社が持つ「耳をふさがない」オープンイヤー型イヤホンとの相性も鑑みて、今回は、「耳をふさがない」という方向性が最初にありました。さらには業務利用の場合、バッテリーが長く持つことも求められていました。イヤホン自体はユーザーの好きなものを使ってもらい、装着の負担を下げるといった自由度の高さもBONX Stickならではの狙いです。

BONX StickとNTTソノリティのマイク付きイヤホン「nwm MWE001」。nwm MWE001にはNTTが独自に開発した耳をふさがず耳元のみに音を閉じ込める技術「PSZ(Personalized Sound Zone)」が採用されている。 BONX StickとNTTソノリティのマイク付きイヤホン「nwm MWE001」。nwm MWE001にはNTTが独自に開発した耳をふさがず耳元のみに音を閉じ込める技術「PSZ(Personalized Sound Zone)」が採用されている。

百崎氏:イヤホンを耳に差し込み続ける形よりも、胸元にマイクレシーバーを設置する方がバッテリー容量も確保しやすいですからね。それから、多様な職種やシーンに応じて「胸元で使用する/手に持って使用する」など可変的に使っていただけるよう配慮した結果、このクリップ型に落ち着きました。

設楽氏:コロナ禍以降、業務用イヤホンを共有して使う際の衛生面や、長時間装着し続けるストレスに関してフィードバックを受ける機会も増えました。例えば数十台のデバイスを店舗スタッフや工場内の作業員全員で共有する場面ですね。

——別売りイヤホンとしてNTTソノリティの音響ブランド「nwm(ヌーム)」にオープンイヤー型の製品が複数ありますね。このイヤホンは骨伝導ではないのに、音漏れが全然しないんですね。

中野氏:オープンイヤー型というと音漏れしやすい印象を持たれるかもしれませんが、これらのイヤホンには再生している音声に対して逆位相の波形を重ねることで周囲への音漏れを抑える技術を採用しています。静かな環境でもレシーバーの音声による周囲への音漏れが気になりません。

BONX intro knot (右耳用)を装着した際の写真。耳を直接覆わないが、周囲への音漏れが抑えるのが特徴。 BONX intro knot (右耳用)を装着した際の写真。耳を直接覆わないが、周囲への音漏れが抑えるのが特徴。

ユーザーの課題を徹底分析——胸元装着型デバイスの要件定義

——要件定義をする段階で、具体的にどのような条件が決まっていったのでしょうか。

百崎氏:最初に挙がったのは「業務用途だから10時間以上は連続で使いたい」というバッテリー要件ですね。かといって筐体をむやみに大きくすると、見た目がゴツゴツし過ぎてしまう。法人のお客様からは「できればスタイリッシュな方がうれしい」という声が多かったので、容量とサイズのせめぎ合いは常にありました。

そこに対してNTTソノリティからは「業務機なのだから、もう少し余裕を持ったサイズでもいいのでは?」という意見をいただくこともありました。実際、バッテリーを大きくすれば稼働時間の目標は楽にクリアできます。ですがBONXとしては「カッコ良さやユーザビリティを損ないたくない」という気持ちが強く、外形寸法を許容できるギリギリまで詰めるやり取りを繰り返しました。

バッテリー容量と放熱対策は小型化する上で、最も設計が難しい要素だ。BONX Stickでは本体の表面と裏面のR(コーナーの丸み)に差をつけるなどして、デザイン性を担保しながら小型化を実現している。 バッテリー容量と放熱対策は小型化する上で、最も設計が難しい要素だ。BONX Stickでは本体の表面と裏面のR(コーナーの丸み)に差をつけるなどして、デザイン性を担保しながら小型化を実現している。

同様に、共有で使うケースを想定すると「ワンプッシュで誰でも操作できる」という、わかりやすさも重要でした。普通のBluetoothレシーバーでは通話ボタンが小さいことが多いのですが、BONX Stickでは大きめのPTT(Push To Talk)ボタンを搭載しています。このボタンの配置も上にするか横にするか、何度もモックを3Dプリンターで造形して議論しながら、仕様を固めました。

ボタン配置はさまざまなバージョンを3Dプリンターで造形して、開発メンバーを中心に議論しながら仕様を決めた。 ボタン配置はさまざまなバージョンを3Dプリンターで造形して、開発メンバーを中心に議論しながら仕様を決めた。

騒音下でもクリアに伝える——音響技術がもたらす強み

設楽氏:さらにNTTソノリティの技術として、騒音をしっかりカットして自分の声をクリアに届ける「Magic Focus Voice」を搭載する話も早い段階からありました。2021年に発売開始した「BONX BOOST」ではイヤホンにマイクがありましたが、口元まで若干遠いことで環境によっては使いにくいというデメリットがありました。

本体左下にあるPTTボタン。専用のアプリで、ボタンを押したときだけ話すモードと常時話すモードに切り替えが可能。 本体左下にあるPTTボタン。専用のアプリで、ボタンを押したときだけ話すモードと常時話すモードに切り替えが可能。

そうした経緯からBONX Stickは胸元にマイクを配置する構造に変えています。騒音が激しい建設現場などでは、どうしても周囲のノイズを拾ってしまいます。そこで周囲の音をカットして話者の声だけを届けるNTTの特許技術 Magic Focus Voiceを活用することになりました。

NTTコンピュータ&データサイエンス研究所が開発した技術(画像提供:BONX) NTTコンピュータ&データサイエンス研究所が開発した技術(画像提供:BONX)

——騒音抑制技術 Magic Focus Voiceを搭載するに当たっては、音響面の微調整もあったと思います。具体的にはどんな工夫をされたのでしょうか。

中野氏:胸元に置いたマイクが拾う音を選別し、「話者の声」を最大限クリアに送れるようにしているのがポイントです。ただし、騒音を無理に削ぎ落とすと声のナチュラルさも損なわれてしまうので、そのバランス調整に苦労しました。建設現場や介護施設、小売店のレジ裏など、実際の現場では騒音の種類もレベルもバラバラなので、複数社に試作品を持ち込んでテストを繰り返し、最終的には胸元モード(120度程度の指向性)、口元モード(極端に狭い指向性でノイズを強力に抑制)、広域収音モード(全指向性)の3種類をユーザーで設定できるようにしました。

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参加する通話ルームの選択やマイクのモード選択、ボタンの制御はアプリで設定が可能だ。 参加する通話ルームの選択やマイクのモード選択、ボタンの制御はアプリで設定が可能だ。

建設現場のようにとんでもなく騒音が大きい場所だと、「口元に近づけて一瞬だけ押しながら話す」という使い方がベストな場合もあります。逆にオフィスや介護施設など静かな場所では「胸元モード」にしておけばハンズフリー感覚で普通に会話ができる。そうやって利用シーンが増えるほど、マイクモードが切り替えられる利点が生きるんです。

地味だけど重要——マグネットクリップへのこだわり

90度回転可能なマグネットクリップ。90度回転できることを示すグラフィックやクリップをつまんで外せる取っ手がある。 90度回転可能なマグネットクリップ。90度回転できることを示すグラフィックやクリップをつまんで外せる取っ手がある。

——胸元に装着できるように、マグネットクリップを採用していますね。3Dプリンター製のモックを見ると、形状もバージョンによってかなり変化しています。

百崎氏:やはり「どんな衣類にもガッチリ装着できて、かつ角度を調節しやすい」ことがテーマでした。最初は固定式のクリップ案もありましたが、それだと服の厚みによってはぐらついたり、ボタンが押しにくくなったりします。そこで強力なマグネットを内蔵した脱着式を採用しました。ただ、マグネットの磁力が強過ぎると取り外しにくく、弱過ぎると勝手に外れてしまう。服が分厚い場合や、逆に薄い場合など、ありとあらゆる環境に対応するために試作品を何十パターンも作ってテストしました。それこそ、あらゆる寸法の磁石をオンラインで取り寄せて、ひたすら検証していた時期もありました。強度も計算ではシミュレーションできますが、服を挟んだときの実用性は試さないとわかりません。結果的に試作品をたくさん作って検証していましたね。

一方でクリップの角度も悩みどころでした。例えば胸の真ん中に装着する方もいれば、襟元の端やポケット近辺に斜めに付ける方もいます。マイクが口の方に向いていないと、クリアに音声が拾えません。

ユーザー自身も、何が最適か必ずしもわかっていないケースがあるので、「とりあえず気軽に装着しても、ちゃんとマイクが口元の方向を向いている」ことを目指した結果、クリップ自体が回転できる仕組みにしました。

設楽氏:このマグネットクリップを分離式にしておくと、クリップを万一破損した場合でも本体ごと買い替えなくて済むメリットがあるんですよね。業務現場だと物理的な破損も起きやすいので、ヘビーユースする法人ユーザーからはパーツ交換で済んだ方が喜ばれます。

中野氏:すごく地味な話かもしれませんが、意識しなくても縦向きになる工夫を随所に入れています。

例えば、表面には当初BONXのロゴを横向きに入れていたのですが、そうするとロゴの向きに合わせて無意識に横向きに装着してしまうケースがありました。そこでシンプルなアイコンに変えています。裏面のクリップにも90度回転することを伝えるグラフィックを入れたり、クリップが外せることを示す取っ手を付けたりすることで、何も知らない人が初めて手にした時にでも正しく使えるような工夫を施しています。

当初は右のデザインだったが、ユーザーテストでロゴに合わせて横向きに取り付けるケースが散見されたことから、左側のデザインが採用された。 当初は右のデザインだったが、ユーザーテストでロゴに合わせて横向きに取り付けるケースが散見されたことから、左側のデザインが採用された。

大企業×スタートアップ——協業体制が生んだ相乗効果

体制が充実したことで、デザインに集中できたと語る百崎氏。BONX Stickはアクションカメラのオプションパーツや骨伝導イヤホンなど、近年のガジェットのトレンドを反映した作りになっている。 体制が充実したことで、デザインに集中できたと語る百崎氏。BONX Stickはアクションカメラのオプションパーツや骨伝導イヤホンなど、近年のガジェットのトレンドを反映した作りになっている。

——BONXとNTTソノリティによる開発体制になったことで、どういった変化がありましたか。

百崎氏:BONX単独で開発をしていたときは、デザイン担当の私と構造設計担当のもう1人がハードウェアの開発から製造までをカバーしてました。国内外のパートナー企業とやり取りしながら、部品調達も含めて全部コントロールするのは相当大変でした。

NTTソノリティグループになってからは、調達専任の方や構造設計、電気設計、ソフトウェア設計、品質保証の担当者がそれぞれアサインされるようになりました。結果的に倍以上の開発規模になって、ものづくりの進め方はだいぶ変わりましたね。

もちろんスピードだけでいえば、少人数で「とにかく動いてどんどん改修する」というやり方にもメリットはあります。ただし品質を担保しながら量産に耐えられる製品を作るには、検証工程や認証対応をしっかりやり込む必要があります。そこは大企業の基準やノウハウが有効に機能しています。

中野氏:一方、BONXの「デザインやユーザビリティを最優先する」という思いは、今回の開発にあたって意識した部分です。業務機の場合、耐久性やコストなどを優先することが多いのですが、「見た目や操作感にも諦めずにこだわりましょう」という姿勢で取り組めた、面白いコラボレーションだと思っています。

中野氏は大手補聴器メーカーから2社を経て、NTTソノリティに入社。同社には、中野氏のようにコミュニケーションデバイスやオーディオ開発のエキスパートが在籍している。 中野氏は大手補聴器メーカーから2社を経て、NTTソノリティに入社。同社には、中野氏のようにコミュニケーションデバイスやオーディオ開発のエキスパートが在籍している。

——開発から量産まで、おおよそ1年ほどで製品化されたとのことですが、実際には工場での生産管理など、最後まで乗り越えるべきハードルもあったのではないでしょうか。

中野氏:まさにそうですね。製造工場は海外にあるんですが、試作段階で使っていた治具と量産ラインで使われていた治具がなぜか違っていた、などのアクシデントがありました。結局、現地に行って実際の作業フローを確認しないとわからないことが多く、メンバーが複数回足を運んで修正していきました。

ただ、BONX Stickは筐体の構造も比較的シンプルで、そうしたトラブルが解消されると、後は割とスムーズに立ち上がりましたね。

百崎氏:スタートアップ単独の時代だと、海外工場とのコミュニケーションだけで途方に暮れる瞬間が多々ありました。今回NTTソノリティの各担当者の方が間に入ってくれたり、一緒に現地に行ってくれたりするので、その負担は非常に軽くなりました。私自身は、プロダクトデザインやユーザビリティ面に集中できるようになったことが大きな変化です。

製品リリース後も進化し続ける——ハード改修文化の背景

——BONXの製品は、製品リリース後もハード面のバージョンアップを積み重ねるケースが多いと聞きました。従来の製品でも、大きくモデルチェンジするより、小刻みな改修を重ねていく文化があるのでしょうか。

「顧客からの意見をつぶさに拾い上げ、プロダクト開発に生かせることがBONXの強み」と広報担当の設楽氏は語る。 「顧客からの意見をつぶさに拾い上げ、プロダクト開発に生かせることがBONXの強み」と広報担当の設楽氏は語る。

設楽氏:そうですね。当社は「使ったお客様のリアルなフィードバックをもとに製品のマイナーチェンジを繰り返していく」というスタンスを重視しています。実際、BONX BOOSTも現在まで何度も改修を続けてきて、パッケージや部品を少しずつ調整しつつ、最終的に大きく仕様が変わっていきました。

BONX BOOSTはリリース当初、装着時に耳から落ちないよう左右に突起状のパーツを用意していた(左)が、ユーザーからのフィードバックを受け、パーツの形状をアップデートしている(右)。 BONX BOOSTはリリース当初、装着時に耳から落ちないよう左右に突起状のパーツを用意していた(左)が、ユーザーからのフィードバックを受け、パーツの形状をアップデートしている(右)。

百崎氏:例えば、このBONX Stickでも「クリップ部分が壊れたときは、そこだけ交換したい」という要望に応えるために、クリップを簡単に外せる構造にしました。BONX BOOSTもパッケージのサイズを見直すことで、ゴミの削減や倉庫スペースの効率化につながりました。大がかりなモデルチェンジが難しい法人向けだからこそ、パーツ単位の改修というのは非常に重要なんです。

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本体背面のクリップは着脱可能な仕様。クリップと本体で服を挟むようにして装着することもできるので、クリップを挟むことによる服装のシワやヨレも起きにくい。 本体背面のクリップは着脱可能な仕様。クリップと本体で服を挟むようにして装着することもできるので、クリップを挟むことによる服装のシワやヨレも起きにくい。

——主要パーツや金型に影響する部分の更新は費用もかかるので開発側としては避けたい部分ですよね。そこは量産前に何度も試作と検証を繰り返すことでアップデートしないようにしつつ、細かな部分の改修は積み重ねてきたということでしょうか。

百崎氏:まさにそういうことですね。一般的なメーカーからすれば1つの製品に対して、ここまで仕様変更するケースはまれだと思います。ある程度割り切って、次のモデルで改善点を反映すれば良いという落としどころもあると思います。ただ、頻繁に新しいモデルを出していくというのは非現実的なので、少ない投資でお客様の不満を解消できるやり方を積み重ねてきたというのが実態です。

中野氏:この辺りはコンシューマー向け製品と、業務用製品で受け止め方が全然違うと思います。コンシューマー向け製品は新しいモデルを短いサイクルで出した方が喜ばれる一方で、業務用製品はずっと変わらない方が喜ばれる傾向があります。何かが変わると、イチからまた使い方を勉強する手間がかかるので、さじ加減が難しいところではあります。

百崎氏:NTTソノリティと一緒に開発することで、ヒアリングや検証にたくさん時間がかけられるようになり、1つ1つの開発プロセスにもリソースを割けるようになったので、大規模な修正を施すことは減っていくと思います。

未来に向けて——AI連携やさらなる市場拡大の可能性

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——最後に、今後BONXがNTTソノリティの子会社としてどのようなビジネスを展開していくのか、簡単に教えてください。

設楽氏:法人向けという観点では、まだまだ「イヤホンを共有するのは気が進まない」とか「胸元にケーブルが垂れるのが嫌だ」といった課題がたくさん出てきます。現場によって本当にニーズが多様で、例えば建設なら職種ごとに使いたい機能が違う。いまだに重たいレシーバーを腰に下げて走ったり、現場を走って声で直接伝えたりといった現場も多い状況です。

BONXの製品は建築、小売、介護、ホテル業界を中心に導入が進んでいますが、この4つの業界だけでも、まだまだ伸びしろがある状況なので、自分たちの製品を導入する意義を伝え続けていきたいと思っています。

百崎氏:私としては「いかに装着する人の身体的ストレスを減らして、自然にコミュニケーションできるか」という設計思想をもっと追求したいですね。今回のマグネットクリップや強力な騒音抑制は、その第一歩だと思っています。今後は完全ワイヤレスに近い形状や、もっと別の装着スタイルも視野に入れたい。そこにNTTソノリティの音響技術がどんどん統合されれば、さらに面白い製品が作れるはずです。

中野氏:AI連携もこれから大きなテーマになります。既にBONX Stickには、トークボタンとは別のボタン(BONX Trigger)を設けて、音声アシスタントにワンアクションでアクセスできる仕組みを仕込んでいます。今はまだ実験段階の機能ですが、将来的には「介護現場で声による記録をリアルタイムで入力する」「多言語対応を自動翻訳で支援する」といった用途が考えられます。

写真の親指の位置にあるBONX Trigger 写真の親指の位置にあるBONX Trigger

BONXが持つユーザーフィードバックの収集力と、我々の持つ技術シーズを掛け合わせて、業務現場ならではの課題を解決する製品を今後もどんどん出していきたいですね。

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