アパレルブランドを立ち上げた女性Ｋ様から「彼氏に金をごっそり持ち逃げされたから話を聞いて欲しい」とご連絡をいただいた。アパレル業界には無頓着だが、アバレル（暴れる）業界には精通している私の正しい使い方である。まずは一旦心を落ち着かせようということで、シーボルトの湯を目指した。椎葉山荘に行きたかったのだが、嬉野リバーの大氾濫により古湯温泉の露天は全面営業休止中になっていたため、仕方なくであった。

佐嘉平川屋の温泉湯豆腐や豆腐パフェが絶品だと聞いていたので、Ｋ様の悩みそっちのけで「風呂上がりには甘い物だろ」と市街地を目指した。Ｋ様も甘い物が大好きなので「それは間違いない」となり、結局ただの旅行になった。Ｋ様の彼氏は重度のギャンブル依存症で、やめるやめると言うけどやめず、どつぼに嵌って店の金を盗んだ。過去にも似たような事例があり、彼氏に対する信頼感はゼロに近いが、それでも私が救ってあげなくちゃ彼氏はダメになってしまうとＫ様は言った。

お酒が大好きなＫ様は「奢るので晩酌に付き合ってください」と言った。彼氏にお金を持ち逃げされて金銭的に大変的な人から奢ってもらってもいいものなのか尋ねたら「この期に及んで飲み代くらい屁でもないですよ」と、強気の答えが返って来た。極悪非道な彼氏の愚行を聞き、話を聞いているうちに彼氏も彼氏だが彼女も彼女だ的な気持ちになった私は、喧嘩両成敗、どちらが悪いとかない、男も女もお互い様だ的な気持ちになり、このままでは彼氏はダメになってしまうと嘆くＫ様に「ダメになってしまえばいいのに」と言った。

私がいなくちゃダメになる的な発言は、相手を下に見ている。最初からフェアじゃない。誰かを救いたがる人ほど、誰かを救うことで救われない自分を救おうとしている。愛は地球を救わない。地球はとっくに救われている。まずは自分を救え。善人は、これだけあなたを気遣ってあげたのにその態度はなんだ的な怒り方をする。金に困っている男を見つけて、自分ならこの人の力になれると思い、金を渡し、感謝されないからぶちギレて、あなたのその態度はなんだと怒る。そういった押し付けがましさが相手の男を追い詰めて、金を持ち逃げすると言う行為をさせたのかもしれない。

精神的な借金取りみたいな生き方は惨めだ。愛も金も投げっぱなしジャーマンが基本で、回収を考えると卑しくなる。そんなことを言ったら、Ｋ様は「坂爪さんと話してわかった。自分は悲劇の被害者をやっちまっていたのだ」と言った。生きていると様々なトラブルが起こるが、実際は、死ぬことも含めてギャーギャー騒ぐ必要はない。様々なトラブルは、むしろ「喜べ」と言っている。心が失くしたものを嘆いている時も、魂は手に入れたものを喜んでいる。喜べ。悲しむことはない。アパレルブランドがダメになったら、一緒にアバレルブランドを立ち上げよう。一緒に暴れよう。