東大入試「オプションを増やしていく」 藤井輝夫学長が語る多様化論
東京大学は、学部生の女性比率が2割にとどまり、経済的に豊かな家庭の学生が多いなど多様性に欠けると指摘されています。学長の藤井輝夫さんはジャーナリスト・田原総一朗さんのインタビューで「さまざまなタイプの人たちに入ってきていただきたい」と強調し、入試方法を多様化させる考えを明らかにしました。学生から反対の声が上がる授業料値上げについても語りました。【構成・竹内良和】
全2回の後編です
前編・「失われた30年」 東大の藤井輝夫学長が考えるもう一つの理由
教育に競争はどこまで許されるのか?
田原 日本の教育は、他人と競争させることが多いように感じます。
藤井 必ずしも競争は悪いことではありませんが、すべての人を同じ枠組みの中で競わせているのはよくありません。
大学生の就職活動を見ても、学生の皆さんが2年ぐらい費やして「新卒一括採用」という一度しかないチャンスにかけているのは、いかがなものかと思います。
やはり社会は時間的な多様性をつくるべきです。それぞれの人がそれぞれのペースに従ってキャリアを進めていくような仕組みにしなくてはいけないと思います。
大学卒業と同時に、みんなが就職するというわけではなく、何か別のことをやってもいいわけです。
でも、日本ではそういう時間的余裕が受け入れられないので、採用試験でも履歴書の枠に穴が開かないよう、びっしり経歴を書いていかないと、企業に認めてもらえない、ということが起こります。
学部生の女性比率「2割」どうする?
田原 東大の学部生は女性が2割だそうですね。
藤井 学部での女性の少なさは一番大きな問題です。今、いろんな努力をしているのですが、そもそも志願者の女性が2割しかいないのです。
とりわけ少ない地方出身の女性の学部生に事情を聴くと、まずは両親を説得するのが大変だったというのです。
東京で暮らすことについての心理的、経済的なバリアーや、東大は女性に似つかわしくないといったイメージがあって、それをどう取り除くかが課題だと思っています。
多くの女性に志願してもらうためには、卒業後に社会で活躍できる場があるのだということを見せてあげなればなりません。
そのためには、やはり日本の雇用慣習を変えていくべきだと思います。
東大生は経済的に豊かな人が多い
田原 東大が2023年度に学部生に実施した調査では、世帯年収が950万円以上、私立中高一貫校出身者がいずれも4割を超えています。東大に合格するには学習塾に通わねばならず、多くの費用を負担できる家庭でないといけませんね。
藤井 多様性のない集団だと、斬新なアイデアが出てくる可能性が下がってしまうので、もっと多様な人たちが入ってくるように努力しなくてはいけないと思っています。
田原 どうすればいいですか?
藤井 入り口…
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