75%の米科学者が国外移住を検討〜「トランプ・カオス」を日本は活かせるか? #エキスパートトピ
トランプ政権下で予算削減や人員削減にあえぐアメリカの科学界。英ネイチャー誌の調査によれば、75%の科学者が国外に活躍の場を求めようとしているといいます。こうした状況をチャンスと捉え、フランスを中心とするヨーロッパの国々やカナダなどがアメリカの科学者を勧誘し、自国の研究力アップにつなげようとしています。しかし、日本ではそのような動きはみられません。なぜでしょうか?
ココがポイント
トランプ政権発足以降、NIH助成金は明らかに減少しており、その額は30億ドル(約4500億円)以上
出典:GIGAZINE 2025/3/29(土)
研究資金の大幅な削減や研究環境の混乱を受けて、科学者のうち約75%が退職して国外への移住を検討している
出典:GIGAZINE 2025/3/28(金)
予算が削減されるなどして研究を続けることが難しくなった科学者に対し、フランスの複数の大学などが相次いで受け入れを表明
出典:NHKオンライン 2025/3/27(木)
エクス=マルセイユ大学は、3人のアメリカ人科学者を3年間受け入れるために、すでに1,600万ドル(24億円)の予算を確保
出典:ギズモード・ジャパン 2025/3/24(月)
エキスパートの補足・見解
1月にトランプ大統領が就任して以降、アメリカの科学者は困難に直面しています。政府機関の解体は大学にも影響を与えており、研究が維持できなくなったり、大学院生の採用計画が中止されたりするなど、壊滅的とも言われる影響が出ています。これでは国外移住を検討する動きが出るのは当然です。
こうしたなかフランスなど一部の国はすばやく動き、アメリカの科学者を勧誘しようとしています。優れた科学者が獲得できれば、国や大学等のレベルアップにつながるからです。
ところが、日本からはそうした声は聞かれません。なぜでしょうか。
日本の大学や研究機関は現在予算不足に苦しんでおり、急に人材を獲得できるような状況にありません。もしやろうとしたら、非正規雇用の研究者を雇い止めしないといけないかもしれません。また、外国人より日本人にお金を使ってほしいという声も大きく、経済安全保障の観点からも、大学などに外国人をに受け入れることに消極的な意見もあります。
しかし優秀な科学者を獲得できるチャンスをみすみす逃すのはあまりにもったいない。まずはアメリカで研究する日本人科学者の勧誘を検討してもよいのではないかと思います。