ただ前へ、ひたすらに


メニュー

お気に入り

しおり
作:生まれてきてくれてありがとう
▼ページ最下部へ


10/11 

第10話 : 邂逅


 

 

 

『さくらんぼ×7 を獲得しました』

『あなたの成長速度が114%上昇します』

 

 

 

 =====

 

 

 

 闇に沈んだ森には、人の気配なんて──最初からなかった。

 

 あるのは、静寂。

 そして、断続的に響く“それ”だけ。

 

『──キィィィィィィィッッ!!』

 

 耳を裂くような咆哮。まるで空間ごと引き裂かれるような不協和音が、鼓膜を無造作に蹂躙してくる。

 

 姿を現したのは──人の背丈ほどもある、巨大な蝙蝠。

 

 だが、『バットバット』なんて間抜けな名前で片付けられる代物じゃねぇ。

 

 翼は濁った粘膜のようにぐずぐずと溶けかけ、半透明の皮膜が脈を打つたび、不気味な光を反射する。

 牙は獣のものじゃない。鋭利な金属を削り出したような、冷たく光る針。

 そして──眼だ。

 

 両目の奥に灯る深紅の光は、液体のようにどろりと揺れていた。

 そこには怒りも憎しみもない。ただ破壊と捕食のためだけに存在する、空っぽの衝動。

 

 ……あれはもう、生き物じゃねぇ。

 

 “化け物”だ。

 

 この森は、そういう奴らが棲む場所──いや、違うな。

 これですら、まだ序章にすぎねぇ……って感じだ。

 

 剣を抜く。

 斬る。

 貫く。

 

 思考なんざ挟む暇もなく、身体が先に動いていた。

 振り抜かれた刃が、ぬめった肉を断ち、軋んだ骨を砕き、深奥の心臓を貫通する。

 

 ──手応えはあった。

 

 だが……

 

「……『魔石』、ねぇのかよ……」

 

 呟いた声が、乾いた空気に溶けて消える。

 

 倒れた怪物の死骸は、灰にもならずにそのまま転がっていた。

 まるで──ただ殺しただけって感触。

 ダンジョン産のモンスターなら、倒せば魔石が残る。死体は塵になって消える。

 それが“常識”だったはずだ。

 

 でも、ここにはそれがない。

 

 代わりに残ったのは、鼻を突くような腐臭と、地面を濡らすぬるりとした体液。

 人間の死体と、大差ない……そんな現実味だけが、そこに転がっていた。

 

 ──やっぱり、ここはオラリオじゃねぇ。

 

 似て非なる世界。外でもない、迷宮でもない。

 空気の重さ、景色の色味、風の湿り気すら、全部が微妙に違ってやがる。

 見覚えがあるようで、根っこから歪んでる。

 まるで、既視感の皮を被った“異界”だ。

 

 もちろん、地上で繁殖を繰り返してる迷宮産の怪物にも魔石なんざ存在しねぇし、死体だって消えたりしねぇ。

 ──でもな。

 それすらも違ぇって、どこかで確信してた。

 

 この違和感は、そんな生ぬるいもんじゃねぇ。

 

 そんな感覚を胸の底で噛みしめた、そのとき──

 

『さくらんぼを獲得しました』

『あなたの成長速度が115%上昇します』

 

 ……また、だ。

 

 唐突に、頭の奥へ流れ込んでくる『声』。

 音じゃねぇ。言葉でもねぇ。

 まるで意識の奥に直接流し込まれる、強制入力された情報。

 

 こっちの都合なんてお構いなしに、勝手に宣言して、勝手に終わりやがる。

 

「……いい加減、何を言ってるのか教えてくれよ……」

 

 苛立ちとも嘆きともつかない声が、冷えた空気に吸われるように消えていく。

 けど、もちろん返事はねぇ。

 あるのは一方的な“通告”だけ。俺の意思なんて、最初から勘定に入ってねぇ。

 

 ──でも、分かる。

 

 確実に、“何か”が変わり始めてる。

 

 筋繊維の奥がじわりと熱を帯び、

 血が全身を駆け巡るたびに、内側から火花が散るみたいな錯覚。

 神経は刃物のように研ぎ澄まされて、目に映る景色の輪郭がやけにくっきりしてやがる。

 

 ……力が、積もってる。

 

 異物のようで、けど拒絶できねぇ。

 むしろ、それは渇ききったこの身体に染みわたる、初めて飲んだ温いスープのような──

 

「……はぁ」

 

 乾いたため息が、血の匂いと一緒に喉奥から漏れる。

 剣についた返り血を軽く振り払い、鞘へと収め。

 ガチャリ──鉄と革の擦れる音が、妙に耳に残った。

 

 そして俺は、また一歩、森の奥へと足を踏み出す。

 

 蔓を踏み、枝を裂き、鬱蒼とした緑の壁をかき分けていく。

 どこまで続くかもわからないこの獣道。

 同じような景色、同じような空気。

 正直、いい加減うんざりしていた。

 

(……この先に何があるってんだよ)

 

 苛立ちと疲労を押し殺して進んでいく──その時だった。

 

 視界が、急に開けた。

 

 それは、まるで世界が息を呑むような、唐突さ。

 

 木々が裂け、鬱蒼とした緑の帳が消え──その先に、ぽっかりと口を開ける空白。

 

 そこに、朽ちかけた何かが姿を現した。

 

 いや──正確には、“かつて城だった何か”。

 

 石造りの高い外壁は、ところどころが崩れ落ち、黒ずんだ苔に侵食されていた。

 割れた壁面。朽ちた塔。斑に崩れた階層。

 かつての威容は影も形も残っておらず、今そこにあるのは──ただの“終末の廃墟”。

 

 開きかけた鉄の門は、まるで口を開けた死体のように歪んでいて。

 無防備で、無惨で、そして……なぜか、妙に静かだった。

 

 まるでこの世界そのものが、ひっそりと息を引き取ろうとしている。

 そんな瞬間を、そのまま切り取ってきたような──不気味な、静寂。

 

(……なんだよ、これ……)

 

 言葉は出なかった。

 

 それでも──おかしな話だが。

 

 目の前に広がるその景色は、どうしようもなく“終わってる”のに、どこかで──“始まろう”としていた。

 

 不気味な静寂。漂う死の気配。

 

 ……それでも、妙に馴染む。

 

 知らねぇはずだ。来たことも、見たこともねぇ。

 それでも、胸の奥が、じわじわと疼いていた。

 まるでここが、“何かの答え”に繋がってる──そう囁かれてるみたいに。

 

(バカか、俺は……)

 

 自嘲するように息を吐いて、それでも足は止まらなかった。

 

 懐かしいようで、思い出せない。

 知ってるようで、まるで知らない。

 

 そんな矛盾に突き動かされるまま、俺は崩れた城門へと歩を進めた。

 

 そして──見えた。

 

 ひび割れた石畳の先。鉄の門の、そのすぐ手前。

 

 立っていた。

 

 二人の少女が。

 

 一人は、光をまとうような銀の長髪をたゆたわせ。

 腰まで届くその髪は、絹糸を編んだかのように繊細で、白と黒の髪飾りが片側に添えられている。

 身に纏うのは、白を基調に黒と金の意匠を施した軍服──まるで聖職者と軍人の境界を曖昧にしたような、静謐と気品を兼ね備えた装いだった。

 

 整った顔立ち。けれど、ただの美形ではない。

 その美しい紫紺色の瞳の奥には──奇妙な“慣れ”があった。

 戦場を何度も潜り抜けた者にしか持ち得ない、諦観にも似た静けさ。

 

 ……そして、もう一人。

 

 黒。

 

 全身を、夜そのものが具現化したような“黒”で染め上げた少女。

 

 飾り気のない、流れる黒髪。腰下まで届くその髪は、まるで空気そのものを拒むように──それでいて、重力すら逆らえない何かの象徴のように、静かに揺れていた。

 

 肩から垂れる黒きマント。淡い輝きを放つ白銀の鎧。そして、腰の一本の長剣。

 

 何も無駄がない。

 戦うためだけに選ばれたような装備。

 それなのに、そこには一分の隙もない美しさすらあった。

 

 ──だが、それ以上に目を奪われたのは。

 

 その、瞳。

 

 無機質。無表情。

 感情の色は、欠片ひとつ浮かばない。

 それなのに、そこには確かに意志があった。

 

 凪いだ水面のように揺るがず、冷たい鋼のように硬質で、静かに──ただ、もう一人の少女を見据えている。

 

 語らない。訴えない。威圧も、拒絶もない。

 それでも、その黒の双眸には、抗えない“重さ”が宿っていた。

 

「…………」

 

 いつの間にか、足が止まっていた。

 

 理由なんて分からない。ただ、そうするしかなかった。

 

 呼吸が浅くなり、鼓動が一拍跳ねる。

 視線を外そうとしたが──無理だった。

 

 胸の奥が、ざわざわと軋みはじめる。

 不安でも、恐怖でもない。

 けれど、それは確かに、何かを思い出しそうになる感覚だった。

 

 ──記憶の底に、針を落とされたような。

 

 性別も違う。年齢も違う。顔立ちも、装いも、まったく似ていない。

 

 それでも。

 

 あの“無”の佇まいが。

 その目の奥に沈んだ、果てしなく静かな闇が──どうしようもなく、あの男を思い出させた。

 

 赤き影。

 俺の中に、未だ爪痕のように焼きついた──剣士の姿を。

 

 気づけば──言葉が漏れていた。

 

「……ユー、か……?」

 

 問いじゃない。確信でもない。

 ただ、魂の奥底が軋みを上げたまま、勝手に零れ落ちた言葉だった。

 

 その一言で、時間が──動いた。

 

 まるで止まっていた歯車が、ゆっくりと音を立てて回り出すように。

 二人の視線が、同時にこちらを向いた。

 

 銀の髪の少女が、ぱちりと瞬きをして──

 次の瞬間、ふわりと花が咲くような笑みを浮かべる。

 

「……あれ、君は新しい兵士の方? ごめんなさいっ、気づいてあげられなくて」

 

 その声は、澄んでいて、穏やかで──

 けれど、ただ優しいだけじゃなかった。

 

 奥に宿していたのは、透き通った光じゃない。

 使命に焼かれた者だけが持つ、淡く揺らめく焔の色。

 

「今ね、ちょうど討伐隊の指揮官さんと、軽く打ち合わせをしてたところなの。……あっ、自己紹介がまだだったね」

 

 そう言って、彼女はスカートの裾をつまみ、舞踏会の貴族令嬢みたいに軽やかに、優雅に一礼してみせる。

 

「私はエリー。討伐隊の支援役を務めています。これから貴方たちの後方支援にも入る予定だから──どうぞ、よろしくね」

 

 どこまでも柔らかく、親しげなその仕草に、思わず身構えそうになった。

 ……けれど、不思議と緊張感はなく。

 

 その笑顔のまま、エリーは横に立つ少女へと視線を向ける。

 

「そして、こちらが討伐隊の指揮官さん。私と同じくらいの年だけど……とっっても強くて、頼りになるんだよ? ちょっぴり無口だけどね」

 

 からかうような口ぶりでそう言いながらも、目元にはどこか誇らしげな色が差していた。

 

 ──だが。

 

 その紹介を受けた当の本人は、一言も発さなかった。

 その黒の少女は、無表情のまま、ただじっと俺を見つめていた。

 

 何も語らず、何も答えず、ただ──そこに在るだけ。

 

 なのに。

 その静寂な視線に、俺は妙なざわつきを覚えていた。

 

 否応なく、胸の奥がざわついていた。

 奥歯が軋む。呼吸が、浅くなる。

 

 ──ああ、やっぱり、似てる。

 

 性別も、年齢も、顔立ちも、装いも、何ひとつ一致しない。

 それでも……重なって見えてしまう。

 

 あの時──あの、赤き剣士を。

 

 初めて目にしたとき、無言で、圧倒的で、圧し殺すような存在感で。

 言葉を使わずに、語っていた男。

 

 いま目の前に立つ、この黒の少女から、あの影の気配が漏れていた。

 

(……いや、違う。違うはずだろ、こんな……)

 

 打ち消すように頭を振る。けれど、霞のような既視感は消えない。

 それは胸の奥に巣くい、じわじわと染み出すように、静かに、けれど確かに──

 

 俺の中に居座り続けていた。

 

 

 


 

 

 

 初期Youは黒髪に黒マントだったよなァ、おい! 

 性別違うのはユルシテユルシテ……

 

 茶髪赤マントに変わったのってエインヘリアル実装時? それとも、それよりも前かな? 

 誰か教えて有識者!!! 

 

 

 

【モルド:戦士タイプ】

 体力 100

 攻撃力 100

 移動速度 0.001

 攻撃速度 0.001

 スタミナ 10

 成長速度 115% (さくらんぼ×15)

 

 

【ユー:戦士タイプ】

『守護者の剣 Lv.48 』(攻撃力+480%)

『グラム Lv.4 』(攻撃力+200%)

『守護者の鎧 Lv.63 』(最大HP+630%)

『キュイラス Lv.11 』(最大HP+1100%)

『ファントムブレード Lv.3 』(攻撃速度+9%)

『セブンリーグブーツ Lv.3 』(移動速度+9%)

『ククルカンの宝玉 Lv.1 』(メテオ威力+10%)

『肉×18』

『魚×18』

『野草×25』

『澄んだ水×13』

『野キノコ×10』

『イチゴ×9』

『ブドウ×11』

『空のボトル×18』

『キャベツ×12』

『トマト×12』

 

『ローグウィズデッド』略して『ログウィズ』。貴方は知っていますか?

  • 知ってるよ!
  • 知らないよ……
  • 絶賛周回中だよアホンダラ
10/11 



メニュー

お気に入り

しおり

▲ページ最上部へ
Xで読了報告
この作品に感想を書く
この作品を評価する