バレーボール部の生徒自殺 再発防止策「岩手モデル」公表

2018年に県立高校のバレーボール部員の男子生徒が顧問の教諭から厳しく叱責されたことをうかがわせる遺書を残して自殺し、県教育委員会は不適切な指導に対応する新たな部署を設けて子どもなどからの相談窓口とするなどとした再発防止策「岩手モデル」をまとめ、28日、公表しました。

2018年7月、県立不来方高校のバレーボール部に所属していた当時17歳の新谷翼さんが顧問の男性教諭から厳しく叱責されたことをうかがわせる遺書を残して自殺しました。

県教育委員会は、顧問の叱責や発言が翼さんの自殺の要因の1つになったとして、教員の暴言や暴力などの不適切な指導や、児童・生徒の自殺を防ごうと、専門家を交えた委員会で「岩手モデル」と呼ばれる再発防止策の検討を重ね、28日、公表しました。

表題には、「岩手モデル」に続いて「TSUBASAモデル」とも名づけられていて、中には翼さんの写真も掲載されています。

いずれも遺族の要望を反映させたということです。

岩手モデルの中で「不適切な指導」については判断基準や具体例を示した上で、県立学校の全教職員を対象に不適切な指導をしないことを約束する宣言書の提出、さらに、対応する部署を新設して子どもや保護者、それに教職員の相談窓口とすることなどが盛り込まれました。

そして、外部専門家による指導や助言などを踏まえて、このモデルを必要に応じて改正していくとしています。

県教育委員会教職員課の大森健一総括課長は「自死事案は2度と起こしてはならないということを決意し、教職員への意識改革を行っていく」と話していました。

また、28日午後には盛岡市内で県立学校の校長およそ80人が集まる臨時の会議が開かれ、県教育委員会から岩手モデルが共有されました。

会議の冒頭で県教育委員会の佐藤一男教育長は「本県教育の充実、よりよい教育の実現に向けて、県立学校と県教育委員会の充分な連携のもと、一体となって取り組んでいきたい」と述べ、不適切な指導の根絶に向けた岩手モデルの適切な運用を呼びかけました。

全国の学校では今も教職員による不適切な指導が後を絶たないため、「岩手モデル」はその実効性が問われています。

【「岩手モデル」 一連の経緯】
6年前の2018年7月3日、矢巾町にある岩手県立不来方高校のバレーボール部に所属していた3年生の新谷翼さん(当時17歳)が顧問の40代の男性教諭から厳しく叱責されたことをうかがわせる遺書を残して自宅で自殺しました。

岩手県教育委員会は遺族の求めを受けて顧問の指導と自殺の因果関係などを調べる大学教授や医師、それに弁護士など6人からなる第三者委員会を設置し、2019年1月に初会合を開きました。

第三者委員会はバレーボール部員や校長、顧問などに聞き取り調査を行うなどして、2020年7月に報告書をまとめました。

報告書では、顧問の新谷さんへの発言は、いたずらに威圧し、人格を否定するもので、「指導としての域を超えるものであり、教員としての裁量を逸脱したもの」と認定しています。

その上で、「顧問の叱責や発言が、絶望感や孤立感をより一層深めることになった可能性も否定できない」とまとめています。

県教育委員会は、不適切な言動を繰り返したとして2022年に教諭を懲戒免職にしました。

さらに、この教諭は不来方高校に赴任する前に勤めていた県立盛岡第一高校でバレーボール部の顧問をしていた際にも暴言や暴力などを行ったとして、被害にあった元部員から2015年にPTSDになったなどとして県とともに訴えられました。

控訴審にまで持ち込まれた裁判は、PTSDとの因果関係は否定しましたが、「教諭が暴力や暴言で精神的苦痛を与えたのは事実だ」などとして、県に対して賠償金40万円の支払いを命じた判決が確定しました。

県教育委員会は、裁判の過程で暴力行為を把握したにもかかわらず、異動先の不来方高校に詳しくは伝えず、顧問に対しての具体的な指導や人事管理が行われることなく部活動指導が続いていた中で、新谷さんが亡くなりました。

県教育委員会は教諭の発言などが新谷さんの自殺の要因の1つだとしています。

そして、2021年1月に自殺予防やスポーツの指導に詳しい専門家などによる再発防止のための委員会の初会合を開いて、再発防止策の策定作業を進めてきました。

会合には新谷さんの両親が出席し、教員の指導方法に問題があった場合の対応のあり方などについて要望したこともありました。

再発防止策は「岩手モデル」とも呼ばれ、3年あまりの月日をかけて議論を続け、ことし3月に最終案が示され、28日、公表されました。

岩手のニュース