私が中卒→自衛隊→コンビニ・工場勤務を経て「東京大学史上初の経営学博士」になるまで

人生を変える「経営教育」

経営者、従業員、高齢者、若者……「みんな苦しい」のは一体なぜなのか? 

私たちを支配する「苦しさ」にはごくシンプルな原因があり、ちゃんと対処する方法がある。経営学の道具を使えば、人生が大きく変えられる。どういうことだろうか。

15万部ベストセラー『世界は経営でできている』で大きな話題を集めた気鋭の経営学者・経営者の岩尾俊兵氏による渾身の最新作『経営教育』(角川新書)では、「みんな苦しい」の謎をあざやかに解き明かす。

(※本記事は岩尾俊兵『経営教育』から抜粋・編集したものです)

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次の一手を打ち続ければ七転八倒が七転八起に変わる

筆者にとっては学生起業も同じでした。筆者は中学校卒業後に陸上自衛隊に入隊し、自衛隊を辞めた後はコンビニと工事現場で働きながら高等学校卒業程度認定試験(旧・大検)を受けて高卒資格を得ました。その後、慶應義塾大学・東京大学へと進学するわけです。このとき、大学での学問と生活費の両立が問題となりました。そこで筆者はまずは個人事業主として学生起業し、後に大学院で法人登記しました。

つまりは「大学・大学院でも、学費が払えないので働かざるを得ない」というどうにもできない現実です(図5‐5)。なお筆者は後に学部・院ともに学費の成績優秀者免除を得ましたので、ここでいう学費は生活費・書籍購入費を含む広義の学資だと思ってください。

筆者は大学進学を考えた時点ですでに博士課程進学を前提にしていました。しかし、当時から今まで「実家が太くないと博士課程はあきらめたほうがいい」という話をする研究者がSNS等にはたくさんいます。むしろ「お金がなくても博士課程に進もう」と言ってくれる研究者はほとんどいません。これには筆者も不安になりました。

お金がないと博士課程に進むこともできないのか、と、世の中を恨んだこともあります。なにくそ、とばかりに起業しても、周囲からは「起業と研究は絶対に両立できない」と言われました。「絶対に」です。研究者なら今でもそう言う方が大多数だと思います。実際に、実家から潤沢な支援があって研究だけに集中している人と、働きながら研究をする人が、同じプロとしてフェアに業績だけで評価されるのが研究の世界です。すべての時間を研究に使える人にそうでない人が勝てるほど甘い世界ではないでしょう。

それにしても「絶対に無理」などと言わなくてもいいじゃないか、と、何度も怒りがこみ上げました。もし心配してくれるのなら、「大変な道だから、こうしたらどうだろう?」と建設的な助言をくれればいいのにと思ったものです。あるいは「普通の人なら無理だけど、君ならきっとできる。その代わり、もしキツくなったらいつでも私に相談して」と言ってくれてもいいでしょう。実際に、筆者は博士課程進学希望者にそう言っています。

しかし、実際には、起業して学資を稼ぐ道にも必ずプラスの側面があります。「経営学を実践できる」「経営について理論だけでなくリアリティのある話をできるようになる」など。たとえば、「天才エンジニアをたくさん集めたら、意見が割れた際に天才同士一歩も引かずに喧嘩別れして組織が空中分解した」といったエピソードなどは、筆者のお気に入りの体験談です。

それではマイナスは何でしょうか。やはり「勉強時間・研究時間が確保できなくなる」というのが一番大きいでしょう。だとすれば「勉強時間・研究時間が確保できなくなる」という弱みを打ち消す次の一手を考えればいいわけです。「研究と関連する分野で学生起業する」「秘書を雇って事務仕事を任せる」「研究はチームでおこなう」などです。

実際にこうした手を次々と打っていきました。するとどうなったか。以後はほとんど自慢話のように聞こえてしまうかもしれません。しかし、一つの事例として少しだけ我慢してお付き合いください。

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