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ERC3643徹底解説マニュアル

当社は協会に加盟し、T-REX 標準をサポートすることで、Hedera Council における金融機関との連携における豊富な経験を通じて、この標準の成長と発展をサポートしていきます。 HBAR FoundationのFintech & Paymentsの責任者であるSabrina Tachdjianは、「HBAR FoundationがERC3643 Associationに加わることに興奮しています。これにより、Hederaネットワークとオンチェーンファイナンス全体の制度的採用を加速するという使命を果たすことができます。「協会に参加することで、私たちはメンバーと協力して、将来のRWAコラボレーションの機会を探りながら、標準の未来を形作るのに役立ちます。」 「HBAR財団をERC3643協会に迎えることは、オンチェーンファイナンスの相互運用可能な未来を構築するという私たちの使命の重要なマイルストーンです。ERC-3643「T-REX」規格の採用により、Hederaエコシステム内で高品質のRWAプロジェクトの新しい波が加速することを期待しています。ERC3643協会のデニス・オコンネル会長は、他の主要機関とともに、今年はトークン化の黄金年になるためのすべての要素を持っています。

https://www.hbarfoundation.org/blog-post/scaling-institutional-rwas-the-hbar-foundation-joins-the-erc3643-association


最近HBAR財団がRWAやトークン化資産に舵を切りました。
そこで私の中で、考察があるので共有します。

上記の記事の引用から、HederaはかなりRWAやトークン化資産に振り切っていることがわかり、しかも少し急いでいる気がします。 ISO20022がさまざまな役割がある中でETHの上位互換としての包括的な役割ではなく、トークン化に絞った動きは逆に決済そのものは他のPJTで補う流れにも感じます。

HBAR FoundationがERC3643協会に加わった背景には、Hederaを“許可型オンチェーンファイナンスのインフラ”にする意図が強く見て取れます。特に下記のような点がポイントです:


1. HBARの戦略的な焦点:RWAとトークン化

  • Hederaは元々エンタープライズ・ユースを意識して設計されており、KYCやガバナンス機構の整備に強みがあります。

  • ERC-3643(TREX)と組むことで、「機関投資家向けに完全準拠されたトークン化市場」の構築が現実的になりつつある。

  • 特にArchaxやFidelity国際との連携に見られるように、RWA(特にMMFや証券)への接続性に注力。


2. ISO 20022とHederaの立ち位置

  • ISO 20022の標準を活かしてHedera自体をグローバル決済インフラにするよりも、RWA側にフォーカスして「橋」となるポジションを取っているように見えます。

  • つまり「決済レイヤー=他チェーンや伝統金融が担い、Hederaは資産の存在証明・管理・監査性の基盤」という役割分担。


3. スピード感のある動き

  • ERC-3643協会への加盟、即座のパートナー発表、そしてファンドへの投資(例:Fidelity国際のUSD MMF)など、連続的かつ加速的に動いています。

  • これは「2025年までの制度化・トークン化バブル」に乗る意志が強く、“年内にトークン化の標準を押さえる”つもりで動いているとも取れます。


今後の展開予測(仮説)

  • Hederaは、ChainlinkやAvalancheなどとのクロスチェーン統合を深めながら、ERC-3643ベースのトークン流通レイヤーを形成する。

  • ISO 20022やCBDCには直接入らず、トークン化RWAの「認証・格納」役に徹する。

  • トークン化された資産は、Chainlink CCIPやLayerZeroなどのクロスチェーンメッセージングプロトコルを通じてETH/AVAX/Polygonなどで流通。

  • つまり、Hedera=RWAのコンプライアンス・アカウンタビリティの“ルートレイヤーとして世界市場にポジショニングしていく。



そこで、ERC-3643 × Hedera 連携戦略ドキュメントを作成しました。


1. トークン化市場の現状

  • 市場規模:2023年時点で30兆円超のRWA市場

  • 主要資産:MMF、国債、不動産、コモディティ

  • トレンド:規制対応、相互運用性の重要性が増加


2. ERC-3643とは

  • 特徴:KYC/AMLを内包した許可型トークン規格

  • 技術構成:オンチェーンID(ONCHAINID) + 投資家制御 + Compliance Layer

  • 主な支援企業:Fireblocks, Tokeny, Capgemini など


3. Hederaのポジショニング

  • 技術基盤:高速・低コストのHashgraph(DAG)型DLT

  • 特徴:エンタープライズ向け設計、ISO20022準拠、分散型ガバナンス

  • 活用領域:証券・RWAのトークン発行と記録のレイヤー


4. HBAR Foundationの最新動向

  • ERC3643協会に加盟(2024)

  • Fidelity USD MMF(ERC-3643対応)へ出資

  • Archax・Tokenyと連携し、規制準拠型RWA流通基盤へ本格進出


5. 戦略的意図と役割分担

5-1. なぜ今連携するのか?

  • MiCA規制・SEC強化に対応したエンタープライズ基盤が求められる

  • Hedera:ガバナンス & インフラ提供

  • ERC-3643:コンプライアンス制御の標準化

5-2. 役割分担マトリクス

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規制対応型としてのhederaのポジションを再確認できます。

6.RWAトークン化 勢力マップ(2025年版)

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7. 将来展望と結論

  • 2025年はトークン化・RWA市場の実装フェーズ元年

  • Hedera × ERC-3643がその中核基盤となる可能性

  • 決済は他レイヤーに任せ、Hederaは発行・保存・信頼性の役割へ

  • Emakimono等のプロジェクトもこのエコシステムへの参加を検討可能


では、上記のマクロの結論を確かめるために、ERC3643とは何かを深めましょう。


1. ERC3643とは何か、その起源と進化の背景

ERC-3643は、イーサリアムをはじめとするブロックチェーン上でリアルワールド資産(RWA)のトークン化に特化したパーミッションド(許可型)トークンの標準規格です。
従来のERC-20トークンが誰でも自由に取引可能であるのに対し、ERC-3643ではスマートコントラクトレベルでKYC(顧客確認)/AML(マネロン対策)等のコンプライアンス要件を組み込み、あらかじめ定義された条件を満たすユーザーだけがトークンを保有・移転できるよう設計されています 。


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参照
ERC-3643 Permissioned Tokens | ERC3643) (ERC-3643 Permissioned
Tokens | ERC3643
 

この標準はオープンソースで公開されており、あらゆる開発者・企業が無料で利用可能です (▶︎Industry Leaders Form ERC3643 Association to Propel Standardization of Tokenization) (Industry Leaders Form ERC3643 Association to Propel Standardization of Tokenization)。

ERC-3643の起源は2018年にさかのぼります。ヨーロッパのトークナイゼーション企業Tokeny社が、証券など規制資産のブロックチェーントークン化に必要なコンプライアンス制御を実現するため、「T-REXプロトコル」(Token for Regulated EXchange)という名称でこの標準の基礎を開発しました。

T-REXはデジタルIDと検証可能な資格情報(クレデンシャル)によって許可されたユーザーのみがトークンを扱える仕組みを導入し、ERC-20のような既存アプリケーションとの互換性も確保したものです。

その後2021年にEthereum Improvement Proposal(EIP)としてイーサリアムコミュニティに提案され 、関係者の取り組みを経て2024年にERC-3643はEIPにおける「Final(最終)」ステータスを取得し正式なEthereum標準規格となりました。※つまり、つい最近なのです。

規格化の過程では、2023年に有力企業が集まり「ERC3643協会(Association)」を設立しており、業界全体で標準採用を促進する体制が整えられています (参照:History of ERC-3643)。

現在ではERC-3643はトークン化の業界標準として位置付けられ、既に数十億ドル規模(累計300億ドル超)の資産がこのプロトコルでトークン化されていると報告されています。また、欧州証券市場監督局(ESMA)のDLTパイロット報告書でコンプライアンス実現の標準例として言及されるなど、規制当局や大手金融機関からも注目を集めています 。
ISO20022と合わせて考慮したい事項です。

2. 技術仕様: ERC3643のスマートコントラクト標準とKYC/AML対応機構

ERC-3643の技術仕様は、基本的にERC-20標準を拡張する形で構築されています。すなわち通常のERC-20トークンと同様に振る舞いながら、トークン移転時に追加の許可条件チェックを行う仕組みを備えています 。

その中心にあるのがデジタルIDと許可ルールの組み合わせです。ERC-3643トークンの転送(送受信)は、送信者・受信者ともに**「投資家ルール」と「オファリング(発行体側)ルール」の双方を満たしている場合にのみブロックチェーン上で実行されます。この投資家ルールの検証に用いられるのがONCHAINIDと呼ばれる分散型IDフレームワークで、オフチェーンで行われたユーザーのKYC/AML確認結果をブロックチェーン上に紐付ける役割を果たします。具体的には、信頼できる認証機関(例:KYCプロバイダ)がユーザーに対して身元確認や資格審査を実施し、その証明となる検証可能な証明書(Verifiable Credential)をユーザーのオンチェーンIDに発行します。

つまり、KYC・DID・SBTあたりの定義づけに関連します。


スマートコントラクト上では、ユーザーアドレスに紐づくONCHAINIDに必要な認証情報(例えば「KYC済」「認定投資家資格あり」等)のクレデンシャルが登録されているかをチェックし、条件を満たす場合のみトークンの保有・送受を許可します。
この仕組みによりトークン保有者の本人確認や資格確認がオンチェーンで行われるため、常に規制要件を充足した取引のみが実行される設計になっています。

ここが難点です。
大きいマスを抱えるHederaへのアクセスがKYC関連で制御された際にどう転じるかを短期〜中期で確認する必要があります。

ERC-3643のスマートコントラクト群は複数のモジュールで構成され、柔軟かつ拡張可能なアーキテクチャを実現しています (参照:T-REX Unleashed: How ERC-3643 is Transforming Security Tokens and Real World Assets | HackerNoon) 。


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主要なコンポーネントは以下のとおりです。

  • オンチェーンID管理(Identity Contract): 各ユーザー(投資家)ごとに固有のオンチェーンIDコントラクトを生成し、ユーザーに関する認証済み属性(クレーム)を保持します。これはERC-725規格に準拠した「分散ID」コントラクトであり、ユーザーの識別情報や資格データを格納する鍵となります

  • クレームトピック・レジストリ: 認証情報(クレーム)の種類を定義・管理するコントラクトです。例えば「KYC完了」「AMLスクリーニング通過」「認定投資家」等、トークンの取引許可に必要な属性カテゴリ(トピック)を一覧管理します

  • 信頼できる発行者レジストリ(Claim Issuers Registry): オンチェーンIDにクレームを発行する権限を持つ機関(認証局やKYCプロバイダなど)のリストを管理するコントラクトです 。これにより、あらかじめ承認された信頼できる第三者(個人的には結局このレジストリでだいぶhederaのアクセス域が日本でも制限されると予想)のみがユーザーのオンチェーンIDに資格情報を付与・更新できるようになります

  • コンプライアンス検証コントラクト: トークンの譲渡を実行する前に、当事者のオンチェーンIDが必要なクレームを保持しているか、発行体が定めた制限に抵触しないかをチェックするためのコントラクトです。この「コンプライアンス層」での自動検証により、違反取引の事前ブロックが実現されています

※⬆️関連しそうなNFTが利権として機能する可能性も全然あり。

  • アイデンティティ・レジストリ: 発行体やプラットフォームが管理する投資家名簿のようなコントラクトで、全オンチェーンIDの有効性(ブラックリストや資格喪失者の除外など)を統括管理します。いわばブロックチェーン上の「ホルダー台帳」に相当し、必要に応じ特定IDの無効化(資産凍結)なども可能です。

このように複数のスマートコントラクトが連携することで、オフチェーンの身元確認プロセスとオンチェーンの資産移転とを橋渡しし、常に規制に沿った状態でトークンの発行・管理・取引を行えるようになっています 。なお、ERC-3643の実装はプロキシ(代理)コントラクトによるアップグレードが可能な設計となっており、将来的な規制変更や機能追加にも柔軟に対応できるよう工夫されています 。また、ERC-20との後方互換性が保たれているため、既存のウォレットや取引所、DeFiアプリケーションでも基本的なトークン取扱いはそのまま可能です 。例えばERC-3643トークンはERC-20と同じtransfer関数等を備えているため、ユニスワップ等のプラットフォームで技術的には扱えます(実際には許可条件を満たさないアドレスへの転送は失敗します)。このように既存エコシステムと互換性を維持しつつ、必要な制限だけを追加している点がERC-3643の大きな特徴です。

つまりnomad的には元の想定通り、伝統金融からのお金の流れは維持したまま、参加できるマスは残念ながらhederaでは制限される展開が本筋。

3. ユースケース: リアルワールドアセットのトークン化活用事例

ERC-3643は主に証券など現実世界資産のトークン化(RWAトークン化)に利用されており、その応用範囲は多岐にわたります 。代表的なユースケースをいくつか見てみましょう。

  • 証券・ファンドのデジタル証券化: 株式、社債、ファンド持分などのセキュリティトークン発行はERC-3643の最も典型的な用途です。ERC-3643によって発行されたデジタル証券は、購入時から二次取引に至るまで常に投資家資格や保有上限などのルール遵守が自動で担保されます。実例として、ルクセンブルクのFundsgatewayや英国のArchaxなどのプラットフォームで、投資ファンド持分をERC-3643ベースのトークンとして発行し、適格投資家間で直接取引する試みが進んでいます。またAvalancheブロックチェーン上のダイアモンドファンドでは、ダイヤモンドを裏付け資産とする投資ファンドのシェアをERC-3643トークンで発行し、年金基金など機関投資家がアクセス可能にしています 。このファンドは米国の年金口座(IRA)でも保有可能な仕組みで設計されており、ERC-3643標準の採用によってブロックチェーン上での透明性と従来型ファンドの法的枠組みを両立させたケースです。さらに2024年には、欧州資産運用会社Fasanara CapitalがERC-3643を用いたトークン化マネーマーケットファンド(MMF)「Fasanara FAST」を発表しました。このプロジェクトでは、Polygonチェーン上でMMFのシェアをトークン発行し、ピアツーピアの即時決済(T+0)やリアルタイムの基準価額(NAV)追跡を実現しています

    • FASTトークンはERC-3643によりオンチェーン上で常時適格性チェックが行われ、許可された投資家のみが保有できるため、規制要求を満たした形で資産運用トークンをDeFiに持ち込む例として注目されています 。


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https://www.coindesk.com/business/2024/03/27/diamonds-arrive-on-a-blockchain-with-new-tokenized-fund-on-avalanche-network
  • コモディティ・不動産のトークン化: 不動産やコモディティ(商品)といった現物資産の持分をトークン化する際にも、ERC-3643の出番があります。例えば不動産ファンド持分をブロックチェーン上で発行する場合、各投資家について適格確認(例:特定地域の居住者のみ許可、特定上限口数まで等)を行い、その結果に基づいてトークンの譲渡可否を制御する必要があります。ERC-3643なら不動産ファンドの各持分トークンに対し投資家の国籍や投資上限額などのルールを組み込むことが可能です。実例では、欧州で商業不動産ポートフォリオをERC-3643トークン化して私募販売し、二次取引は許可投資家間でのみ流通させる試みや、金地金・貴金属などコモディティ連動証券をERC-3643で発行するプロジェクトも報告されています(※具体的な企業名は非公開事例が多いものの、Tokeny社の実績によれば120以上のユースケースが既に世界各地で実行されています。

  • 安定価値コイン(ステーブルコイン)の発行: 法定通貨担保型ステーブルコインにもERC-3643の技術が応用されています。特に銀行や金融機関が発行するステーブルコインでは「許可されたユーザー(自社の口座保有者など)のみ利用可能」「ホワイトリスト外アドレスへの送金禁止」といった要件がありますが、ERC-20ではこうした制御が困難でした。ERC-3643は発行体が指定したKYC済ユーザーだけに保有を限定するステーブルコインを実現できます。
    ⬆️おそらく一番重要、KYC済みのユーザーのみのステーブルは大きな利権とアクセス制限を作れます。わざわざウォレットにKYCNFTやSBTを別途の概念として持ち込まなくても良いからす。

    実際、フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルはユーロ連動型ステーブルコインを発行しましたが、そのアクセスは発行体のKYC/AML手続きを通過した投資家に限定されました 。これはまさにERC-3643が可能にする「許可型電子マネー」のコンセプトと一致しています。また、前述のFasanara FASTのケースでは、オンチェーンMMFトークンをステーブルコイン発行体の裏付け資産として活用することが想定されています 。
    現在ステーブルコイン市場規模が20兆円を超える中 、その裏付け資産として国債やMMFをトークン化して直接組み入れる動きが出ており、ERC-3643による「許可型ステーブルコイン+許可型国債トークン」という組み合わせが新たな金融インフラを形作りつつあります。※後述

  • その他ユースケース(ロイヤリティ・社内通貨等): ERC-3643は上記のような伝統的金融資産以外にも応用可能です。例えば企業のロイヤリティポイントゲーム内資産など、「発行主体が管理権限を保持しつつユーザー間で自由に取引させたいデジタル資産」に適しています。NFTより柔軟な機能を持ち、かつ発行体が必要に応じてトークンを回収・無効化できるため、長期的なロイヤリティプログラムにも向いています 。もっとも、本マニュアルの対象である機関投資家の文脈では、やはり証券・金融商品のトークン化とデジタルマネー(ステーブルコイン)が中心的なユースケースとなるでしょう。

最後に、こうしたユースケースを支える業界プレイヤーについて触れます。ERC-3643は多数の金融機関・企業が参加するエコシステムによって支えられており、例えばアメリカのCiti銀行はウェリントン投信、ABN AMRO銀行、ウィズダムツリー、Ava Labs社(Avalanche開発元)、米国DTCC(証券決済機関)およびTokeny社らと共に、ERC-3643を活用した非公開市場取引の革新に関する概念実証(PoC)を行っています。また米国の証券保管振替機関であるDTCCはERC-3643に強い関心を示し、自社の次世代プラットフォームへの統合を計画しています 。このようにERC-3643は金融インフラ層への組み込みも視野に入れ、RWAトークン化の実用段階へ向けた取り組みが世界中で進められています。

4. 導入方法: ERC3643導入に必要な要素(技術ツール、プラットフォーム、法的準拠事項など)

機関投資家がERC-3643を活用して資産のトークン化を導入するには、技術面制度面の両準備が必要です。以下、導入にあたって押さえておくべき主要要素をまとめます。


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  • 技術ツールとプラットフォーム: ERC-3643はオープンソースのスマートコントラクト実装(通称T-REXプロトコル)として提供されており、GitHub上でソースコードや契約テンプレートが公開されています 。自社でスマートコントラクトをデプロイ・管理する能力がある場合、このコードベースを利用して独自にトークン発行インフラを構築できます。また、そうした開発リソースがない場合でも、Tokeny社などERC-3643に準拠したトークナイゼーションプラットフォームを利用することで、ホワイトラベル型の発行・管理システムを迅速に立ち上げることが可能です。さらに、Fireblocksのようなカストディ(保管)ソリューション提供企業は、TokenyのERC-3643基盤を統合したターンキーソリューションを提供しています。Fireblocksを利用すれば、セキュアなカストディ環境下でボタンひとつでERC-3643トークンを発行・管理でき、セキュリティとコンプライアンスを確保しつつ技術的ハードルを大きく下げることができます。実際、FireblocksとTokenyの連携により、1300社以上の機関投資家がERC-3643トークンの発行管理を自社ワークスペースから直接行えるようになったとの報告もあります。このように、市場には既にERC-3643導入を支援する各種ツール・サービスが存在しますので、自社の技術戦略に応じて適切なプラットフォームを選定すると良いでしょう。

  • オンボーディングとKYC/AMLプロセス: ERC-3643を用いるには、投資家の身元・資格情報を事前に確認し、オンチェーンIDにクレデンシャルを登録するプロセスが不可欠です。そのためにはKYC/AMLプロバイダ認証機関との連携が必要となります。具体的には、投資家の本人確認書類や適格投資家ステータスの確認をオフチェーンで実施し、その結果(例:「この投資家は米国SECのReg Dに基づく適格機関投資家」等)をVerifiable Credentialとして発行、ブロックチェーン上のIdentityコントラクトに書き込みます 。ERC-3643は特定のKYCプロバイダにロックインされた仕様ではなく、SynapsやSecurely.IDといった既存サービスとも連携可能なオープンな仕組みです 。実導入では、ユーザーオンボーディングの段階でこれらプロバイダを活用し、必要なデータを取得・保管(注意:個人情報自体はオフチェーンで厳重管理し、オンチェーンにはハッシュ等証明だけを記録)する体制を構築することになります。結果として、トークン発行者は各投資家に対し「オンチェーン上の身分証明書」を発行するイメージで運用し、スマートコントラクトが常に最新のKYC/AML状況を参照できるようにします。



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  • ブロックチェーンネットワークの選定: ERC-3643はEVM互換であればEthereumメインネットから各種パブリック/プライベートチェーンまでデプロイ可能です。つまりnomad的には大衆互換を残しているためKYCによる縛りは強めに設定されると予想。
    用途に応じてネットワークを選ぶことも導入戦略上重要です。例えば、グローバルな流動性確保を重視する場合はEthereumメインネット上で発行しDeFiとも接続可能にする選択があり得ます。一方、手数料コストや取引速度を重視するならPolygonAvalancheといった安価で高速なL2/サイドチェーンを選ぶことも適切でしょう。実際、Polygon LabsはERC-3643の普及に積極的で、FasanaraのMMF事例でもPolygonチェーンが使われています。さらに、ERC-3643協会にはHBAR Foundation(Hederaネットワーク)も参加しており、将来的にはHederaなど非EVMチェーンでの実装(このEVMとは関係ない範囲というのが独立した利権の確保となるイメージ)やクロスチェーン展開も視野に入っています 。ネットワーク選択によっては、チェーン固有のウォレットやツールとの統合も検討が必要です。例えばPolygonを利用するならPolygon対応ウォレットやブリッジの準備、独自チェーンならノードインフラの構築などが伴います。総じて、自社のユースケースに適したブロックチェーン基盤を選び、ERC-3643コントラクト群をデプロイすることが導入の一環となります。

  • ウォレット・カストディとセキュリティ: 機関投資家向けソリューションでは、トークンの保管とキー管理も重要です。ERC-3643自体はトークン仕様なのでウォレットは問いませんが、ファンドの管理者や投資家が使いやすい保管ソリューションを用意する必要があります。前述のFireblocksのようにエンタープライズ向けカストディにERC-3643対応が進んでいるため、これらを活用すれば安全に鍵を管理しつつ許可型トークンを運用できます 。一方、自社で管理する場合はマルチシグウォレットの採用やハードウェアセキュリティモジュール(HSM)の利用など、十分なセキュリティ対策が求められます。また、ユーザー(投資家)側には専用の投資家ポータルやウォレットアプリを提供し、KYC連携したアドレスのみトークン残高を表示・取引できるUIを整えることが望まれます。ERC-3643協会はDeFiアプリ向けにコンプライアンスチェック用プラグインも公開しており、既存のウォレットやdAppに組み込むことでERC-3643トークンを扱う際に自動で許可条件を確認できるようになります。このようなエンドツールの整備も併せて計画すると良いでしょう。

  • 法的準拠事項: 技術基盤が整っても、法規制への準拠がおろそかになっては本末転倒です。ERC-3643は技術的にコンプライアンスを支援しますが、実際の証券発行・販売行為そのものが各国の証券法等に従って適切に行われることが前提です。したがって導入に際しては、各司法管轄で必要な発行体登録、私募適格確認、投資家告知などを行い、必要に応じて当局への報告や免許取得を済ませる必要があります。幸いERC-3643はそうした法的要件を技術で担保するための標準なので、規制対応は比較的スムーズです。例えば米国SECのReg Dに基づく私募証券をERC-3643で発行する場合、事前に投資家が適格投資家(accredited investor)であることを検証し、その証明クレデンシャルを付与することで、トークンが誤って一般投資家に渡らないようブロックします。またEUのMiFID IIやプロスペクトス規則に則り、各投資家の居住国や投資上限に応じた制限を課すことも可能です。スマートコントラクトが常に法的条件をエンコードした状態になるため、違反取引の発生リスクを大幅に低減できます。もっとも、法律そのものの解釈や適用範囲は管轄当局や弁護士の確認が不可欠ですので、ERC-3643導入にあたってはリーガルアドバイザリ(法律顧問)とも密に連携してください。特に海外投資家を含む場合、国際的な証券法・金融規制への対応(米国SEC規則、EUのMiCA規則や各国AML/KYC法など)を整理し、それに沿ったトークン許可ルールの設計が必要です。

以上が主な導入上のポイントです。
要約すると、ERC-3643導入には
(1)信頼できる技術パートナーまたはプラットフォーム選定
(2)厳格なKYC/AMLオフチェーン体制
(3)用途に合ったブロックチェーンネットワークとウォレット環境
(4)法務面の確認・整備


の四本柱が重要となります。

ERC-3643協会もこうした導入者向けのリソース整備に努めており、開発者向けドキュメントやコミュニティサポートが提供されています。適切な準備を行えば、機関投資家にとっても比較的短期間でERC-3643を用いたトークン発行・運用を開始できるでしょう。

5. パートナー企業一覧: ERC3643に関連・協力する主要企業

ERC-3643のエコシステムには、ブロックチェーン業界の技術企業から伝統的金融機関まで多様なプレイヤーが参画しています。以下に主要な関連企業とその役割をまとめます。

  • Fireblocks(ファイヤーブロックス) – デジタル資産カストディおよびトランザクション管理プラットフォームの大手です。ERC-3643の初期から協業しており、Tokenyとのパートナーシップを通じてエンタープライズ向けトークン発行ソリューションを提供しています 。Fireblocks利用企業は、自社の保管環境から直接ERC-3643準拠のセキュリティトークンやステーブルコインを発行・管理でき、コンプライアンスとセキュリティを担保したままトークン化業務をシームレス化できます。

    ⬆️Stellarでもお馴染み

  • Tokeny(トークニー) – ルクセンブルク拠点のトークナイゼーションプラットフォーム企業で、ERC-3643規格の創始者かつ主要開発元です。オープンソースのT-REXプロトコルを開発し、現在もERC-3643標準の維持・拡張に貢献しています。Tokeny社自体は金融機関向けのトークン発行管理ソフトウェア(「Onchain Finance OS」)を提供しており、世界5大陸で120以上のトークン化事例を支援した実績があります 。ERC-3643協会の事務局も務めており、まさにこの分野のリーディングカンパニーと言えます。


今後チェックおすすめです。

  • Capgemini(キャップジェミニ) – グローバルなITコンサルティング・SI企業です。伝統的金融機関との繋がりも深く、ERC-3643協会の創設メンバーとして標準普及と企業導入支援に関与しています。特に同社の金融部門はクライアント向けにデジタル資産戦略を提供しており、ニューヨークで開催されたイノベーションサミットなどでERC-3643を活用したトークン化市場の現状について議論するなど、業界啓発にも積極的です。

  • Polygon(ポリゴン) – イーサリアムのレイヤー2スケーリングプラットフォームおよびブロックチェーンプロジェクトです。ERC-3643の主要ユースケースであるRWAトークン化においてスケーラビリティと低コスト取引を提供するチェーンとして重要な役割を果たしています。Polygon LabsはERC3643協会にも参加し、前述のFasanaraのMMFトークン「FAST」をはじめ複数の案件で実証実験の技術基盤を提供しました。Polygon上でERC-3643トークンを発行すれば、低ガス代で高速な取引が可能になるため、今後も多くの証券トークン案件がPolygonに展開すると見られます。

  • Bitstamp(ビットスタンプ) – 欧州に拠点を置く老舗暗号資産取引所です。ERC3643協会の創設メンバー企業であり、従来型クリプト取引所として培ったセキュリティや流動性提供のノウハウをRWAトークンの世界にも活かそうとしています。現時点でBitstampは証券型トークンの上場は行っていませんが、将来的に許可型セキュリティトークンの取扱いやカストディサービスを提供する可能性があります。同社の参加は、暗号資産市場と伝統金融市場の架け橋としてERC-3643への期待の大きさを示しています。

  • Invesco(インベスコ) – 世界規模の資産運用会社です。トークン化分野にも関心を寄せており、ERC-3643関連ではCitiやDTCCと行ったプライベートマーケットのトークン化PoCに参加しました 。このPoCではERC-3643標準を用いて未上場ファンド持分のデジタル発行・取引をテストしており、Invescoは伝統資産運用の知見からトークン化の可能性を評価しました。さらにInvescoは暗号資産関連ETFの提供なども行っており、伝統資産とデジタル資産双方で積極的な戦略を展開しています。

  • CMS(シーエムエス) – 欧州を中心に展開する国際的な法律事務所グループです。証券・ファイナンス法務に強く、ERC3643協会の設立メンバーとしてリーガル面の枠組み策定に貢献しています。例えばルクセンブルク金融当局のトークン化ガイドライン策定に協力したり、ERC-3643標準に準拠したトークン発行スキームのリーガルオピニオンを提供するなど、法規制と技術標準の橋渡し的役割を担っています。MiCA規則施行に際してもTokeny社と共同で解説記事を発表するなど、法規制動向に沿った標準活用を推進しています。

  • Rethink Ledgers(リシンク・レジャーズ) – アメリカ・ノースカロライナ州発のブロックチェーンコンサルティング企業です。2019年創業以来、金融サービス分野のクライアントに対し台帳技術やトークン化の導入支援を行ってきました。ERC-3643協会メンバーとしても活動しており、EthereumやDAML等様々なプラットフォームに精通したチームが、クライアント企業の要件に応じてERC-3643ベースのソリューション設計を手掛けています。北米市場におけるエンタープライズブロックチェーン導入の実績を背景に、実務的なトークン化戦略策定で存在感を示しています。

  • Archax(アーカックス) – 英国初のFCA(金融行為規制機構)認可を受けたデジタル証券取引所です。ロンドンに拠点を置き、機関投資家向けにデジタル証券の取引プラットフォームを提供しています。ArchaxはERC3643協会の創設メンバーであり、Tokeny社ともパートナー関係にあります 。同社はリアルワールド資産のトークンを上場・流通させる「伝統市場とブロックチェーンの橋渡し」となることを使命として掲げておりり、最近ではフィデリティ国際のUSDマネーマーケットファンドをERC-3643でトークン化し上場するといった取り組みも発表されました(重要:HBAR Foundationがこのファンドに出資)。Archax自体も証券型トークンのカストディやブローカレッジサービスを展開しており、今後ERC-3643準拠トークンの主要な取引所の一つとして台頭することが期待されています。

上記以外にも、ERC-3643協会にはアペックス・グループ(金融管理サービス)、ABNアムロ銀行、アステック・グループ(ヨーロッパのファンド管理)、DLAパイパー(国際法律事務所)、Avalanche開発企業のAva Labs、米国のデジタル証券市場Oasis Pro、スイスのデジタル資産プラットフォームTaurus、スタンダードチャータード銀行系のカストディZodia Custodyなど、伝統金融とブロックチェーン双方の主要プレイヤーが数多く参加していますす。この広範な企業ネットワークがERC-3643のエコシステムを支えています。

6. 深掘りテーマ

最後に、ERC-3643に関連して特に重要なトピックをいくつか掘り下げます。

規制対応: SECやMiCAとの整合性、KYC/AMLレイヤー

ERC-3643は規制対応を前提に設計された標準であり、各国の証券規制や暗号資産規制との親和性が高くなっています。まず米国SECとの関係では、ERC-3643は証券法に基づく投資家制限や取引制限を技術的に実装できる点が評価されています。例えばSEC規則D(Reg D)の下で行われる私募証券では、原則として認定投資家以外への販売は禁止されますが、ERC-3643トークンならスマートコントラクトで認定投資家クレデンシャルを持つウォレットにのみ譲渡可能とする制限を実装できます (参照:ERC-3643 is looking for ways to bring compliance to RWA tokenization - Blockworks)。


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またReg Sトークン(米国外のみ販売)であれば、米国居住者のONCHAINIDにはトークン受領を拒否するルールを適用することで、地理的制限も自動執行できます。同様にSECの規則144(一定期間の転売禁止)に従い、新発行証券トークンを発行日から1年間は転売ロックする、といった時間的拘束もスマートコントラクトに織り込むことが可能です。さらにERC-3643では、あらゆるトークン保有者がKYC/AMLを完了していることが保証されるため、証券の受渡時にありがちな顧客属性不明リスクも低減できます。これらの特徴から、米国ではERC-3643は「証券法遵守型トークン」の実現手段として注目されており、規制当局との対話においても投資家保護や不公正防止の観点でメリットが説明されています。

一方、EUの暗号資産規則MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)との関係では、ERC-3643はMiCA要件を満たすための有力な技術オプションとなっています。MiCAは2024年中に施行が開始され、特に電子マネー型トークン(ステーブルコイン)や資産参照型トークンに対して発行者の許可制や保有者識別など厳格な義務を課す見通しです 。従来これらの多くはERC-20で発行され匿名で流通していましたが、MiCA施行後はオーナーの識別や移転制限機能を持つトークンでなければ規制遵守が困難になると予想されています。欧州においてTokeny社は「MiCA時代にはERC-3643標準への移行が必要になる」と指摘しており、実際MiCAでは証券に当たらない安定コイン等についてもホルダーKYCや不正送金防止の仕組みが求められるため、ERC-20からERC-3643への置き換えが推奨されています。またMiCAは証券型トークン自体には適用されず既存のMiFID II規制下に留まるため 、むしろ規制が明確な証券トークンの方が発行しやすくなるとも言われます。この文脈でERC-3643は、MiFID IIや各国証券法を技術で充足する役割を果たし、結果としてMiCA下で厳しくなるステーブルコイン発行より証券トークン発行の方が容易になる逆転現象も指摘されています。さらに、MiCAのもとで銀行など大手機関が**許可型のデジタルマネー(パーミッションドキャッシュコイン)**を発行する動きも期待されており、その際にもERC-3643によるコンプライアンス実装が鍵になるでしょう 。

要約すると、ERC-3643は各種規制要件をスマートコントラクトに「埋め込み」できる(Compliance by Code)点で、SEC規制やEU規制との親和性が極めて高い標準です。
特にKYC/AMLレイヤーが組み込まれていることでFATFのトラベルルール等にも対応しやすく、許可された主体のみが取引に参加するクローズドなネットワークを構築できます。こうした特性から、ERC-3643はグローバルに「規制準拠トークン」を実現する鍵として位置付けられており、欧州ESMAの報告書やBCGの産業レポートでも標準的な実装例
として引用されています。今後各国でデジタル証券に関する法整備が進んだ際も、ERC-3643が技術的なデファクト標準としてその受け皿になる可能性が高いでしょう。

▶︎今後見逃せません。

技術アーキテクチャ: ERC-3643スマートコントラクト構成と相互運用性

前述の技術仕様セクションでERC-3643の主要コンポーネントについて説明しましたが、ここではそのアーキテクチャ全体像他規格との関係について補足します。

ERC-3643は実質的にERC-20インターフェースを拡張した規格です。したがって、balanceOfやtransferといった基本的関数はERC-20と同一シグネチャを持ち、標準的ERC-20トークンと同様に動作します。これに加え、ERC-3643独自の関数やイベントが定義され、許可型トークン特有の機能を提供します。例えば、isValidInvestor(address)のような関数で特定アドレスが保有許可を持つかを照会できたり、transferWithData関数で追加データ(例:規制根拠やコメント)付きの転送を行えたりします。また、オーナー(発行体)による強制的なトークン回収(redeem)やアドレス凍結など、セキュリティトークン運用に不可欠な管理機能もサポートしています。これらはERC-20には無い機能ですが、ERC-3643のアップグレード可能な実装(T-REXコントラクト)によって柔軟に組み込まれています。

ERC-3643のIdentityやComplianceモジュールは、標準化された他のEthereumコントラクト規格とも連携します。特にERC-725(Identity標準)やERC-735/734(Claim発行・管理標準)との親和性が挙げられます。ERC-3643の開発元は、著名なEthereum開発者Fabian Vogelsteller氏らによるERC-725 Identity規格を参考にONCHAINIDを設計しており、各ユーザーのIdentityコントラクトはERC-725準拠インターフェースを備えています。これにより、他のDAppがERC-725フォーマットでIdentity情報を読み書きでき、将来的な自己主権型アイデンティティ(SSI)エコシステムとの互換性も確保されます。クレーム(資格情報)についてもERC-735で規定されたキー/値構造を活用しており、例えばあるIdentityに「KYC=済」「ACCREDITED=YES」といったトピックIDでクレームを付与する形になっています。これらのトピックはClaim Topics Registryで一元管理され、他プロジェクトとも共有可能です。実際、グローバル法人IDシステムのGLEIF(Legal Entity Identifier管理財団)もERC-3643協会に参加しており、LEIを用いたトークン保有者識別の標準化を進めています 。こうした取り組みにより、ERC-3643は既存のデジタルID標準や金融識別子とも連携しうる拡張性を持っています。

相互運用性の観点では、ERC-3643トークンはDeFiや他のスマートコントラクトとも一定の互換性を維持しています。例えばERC-3643トークンをUniswapのプールに追加しようとした場合、許可条件を満たしたウォレット同士であればプール流動性供給やスワップも技術的には可能です(実際に一般開放するにはさらなる工夫が必要ですが)。ERC-3643協会ではDeFiプロトコル側で投資家資格チェックを行うプラグインUIを公開し始めており、CompoundやAaveといったレンディングプロトコルがERC-3643トークンを担保資産として扱う際にも自動でホワイトリスト確認できるようになります。これにより、許可型トークンとPermissionless DeFiとの融合が促進され、将来的にはKYC済み流動性プール許可制レンディングマーケットといった新たな金融サービスが実現すると期待されています。

最後に、ERC-3643の技術スタックはアップグレード可能性モジュール構成により将来拡張にも備えています。例えば、新たな規制要件が出ればComplianceコントラクトを差し替えたり、他チェーンとブリッジするためのGatewayモジュールを追加したりすることも可能です。実装の監査についてもHacken等第三者によるセキュリティ審査で満点評価を得ており、安全性と信頼性も確認されています。総じてERC-3643のアーキテクチャは、セキュリティトークンに求められる機能を包括的にカバーしつつ、オープンな標準技術との互換・拡張を意識した設計となっていると言えるでしょう。

エコシステム統合: 他プロジェクトとの連携(Chainlink、HBAR Foundationなど)

ERC-3643が真に価値を発揮するためには、周辺エコシステムとの統合が重要です。現在、この標準は様々なブロックチェーンプロジェクトや伝統金融インフラとの連携を深めつつあります。

まず注目すべきはChainlinkとの協調です。Chainlink Labsは2024年5月、ERC3643協会に加盟しリアルワールド資産のトークン化標準推進にコミットすることを発表しました


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Chainlink Joins ERC3643 Association for RWA Tokenization

Chainlinkはオラクルネットワークとして外部データをブロックチェーンに取り込む技術を提供していますが、ERC-3643との組み合わせでは価格フィードや評価額データの自動反映、あるいはスマートコントラクトの自律的制御が期待されます。例えば前述のFasanara FASTでは、ChainlinkがMMFのリアルタイム価格データ(NAV)をオンチェーン提供することで投資家が常に正確なファンド評価額を確認できるようになっています。またChainlinkの新プロトコルであるCCIP(Cross-Chain Interoperability Protocol)を用いれば、ERC-3643トークンを複数ブロックチェーン間でやり取りするクロスチェーントランスファーにも道が開けます(以前述べたようにこのオラクルの監視性は高い)。さらに、Chainlinkのスマートコントラクト自動化サービス(Automation)と組み合わせて、特定の期限が来たら自動的にトークンを凍結解除する、といった条件付きイベント駆動も考えられています(実際に有志開発者がChainlink AutomationでERC-3643のコンプライアンス条件チェックを自動化する提案を行っています。このようにChainlinkはデータと相互運用のレイヤーでERC-3643を補完し、許可型トークンをより高度な金融商品へと進化させるパーツとなっています。

次にHBAR Foundation(Hedera Hashgraph財団)の動きにも触れます。HBAR Foundationは2025年3月にERC3643協会へ参加するとともに、自らERC-3643関連の実需案件に投資を行いました。具体的には、前述のArchaxが提供するフィデリティ国際のUSDマネーマーケットファンド(ERC-3643トークン化されたもの)に対し、HBAR Foundationが出資しています 。これは、HederaエコシステムとしてもRWAトークン化に本腰を入れていることを示す出来事です。将来的には、Hedera上でERC-3643と同等の許可型トークンを発行したり、Ethereum上のERC-3643トークンとHederaトークンをブリッジ接続するといったシナリオも考えられます。HBAR Foundationの参加はERC-3643に非EVM圏の支持が広がった象徴であり、「オンチェーン金融の相互運用的未来を築く上での重要な節目」と評されています。今後、HederaだけでなくAlgorandや他のエンタープライズDLTにもERC-3643の概念が波及し、異なる分散台帳間で統一されたコンプライアンスフレームワークが共有されていく可能性があります。(引き続きチェック)

また、ERC-3643協会には金融市場インフラ系の企業も多く参加しています。例えば前述のDTCCは、自社の機関投資家向けプラットフォームComposerXにERC-3643標準を組み込む計画を公表しました。これにより、証券決済インフラとブロックチェーン上のトークンが直接接続され、清算・決済プロセスの自動化や即時化が期待できます。同じく参加メンバーであるTaurus(トーラス、スイス発のデジタル証券プラットフォーム)やZodia Custody(ゾディア・カストディ、スタンダードチャータード系の機関向けカストディアン)なども、自社サービスにERC-3643互換機能を取り入れています。こうした従来インフラとの統合により、ERC-3643トークンは単なるブロックチェーン上の資産に留まらず、銀行の勘定系や証券決済網とシームレスに連携するハイブリッドな金融商品となりつつあります。

最後にコミュニティ面について触れると、ERC-3643は**Enterprise Ethereum Alliance(EEA)**など業界団体とも協調しています 。EEAのビジネス対応レポートでもERC-3643が取り上げられ、イーサリアムを企業利用する上で重要な標準の一つと位置付けられました。さらにCiti・BCG・Luxembourg金融当局など複数組織が共同執筆した大手レポートにもERC-3643が登場し、業界に与えるインパクトが分析されています。Twitter(X)上でもERC3643 Org公式アカウントや参加企業が積極的に情報発信を行っており、特にDennis O’Connell氏(ERC3643協会会長)やLuc Falempin氏(Tokeny CEO)らが「標準化こそ流動性と相互運用性への道」と強調しています。コミュニティイベントやハッカソンも開催され、標準の採用促進と新規ユースケース発掘が進められている状況です。

以上のように、ERC-3643は単体の規格というだけでなく**周囲のエコシステムと有機的に結びついた「標準プラットフォーム」**として機能し始めています。Chainlinkによるデータと接続性、HBAR Foundationによる異種ネットワーク連携、DTCCやTaurusによる伝統インフラ統合など、各分野のリーダー企業が協調することで、ERC-3643を核とした次世代金融ネットワークが形成されつつあります。この潮流により、従来はサイロ化されていた証券市場がブロックチェーン上で相互接続され、流動性と透明性に富むグローバル資本市場が実現する未来が見え始めています 。ERC-3643はまさにその鍵となる標準であり、機関投資家にとって今後無視できない存在となるでしょう。

ERC-3643の主要コンポーネント

  1. ONCHAINID(オンチェーンID)

    • 各ユーザーに対してデプロイされるスマートコントラクトで、ユーザーの識別情報や関連するクレーム(証明)を格納します。​これにより、オンチェーンでのアイデンティティ管理が可能となります。​

  2. トラステッドイシュアーズレジストリ(Trusted Issuers Registry)

    • 信頼できるクレーム発行者のアドレスを管理するコントラクトです。​これにより、どのエンティティがユーザーの識別情報を検証できるかを定義します。​

  3. クレームトピックスレジストリ(Claim Topics Registry)

    • セキュリティトークンに関連するクレームのトピック(種類)を管理します。​これにより、どの種類のクレームが必要かを定義できます。

  4. アイデンティティレジストリ(Identity Registry)

    • トークンの保有が許可されたユーザーのアイデンティティコントラクトアドレスを保持し、クレームの検証を行います。​これにより、適格な投資家のみがトークンを保有・取引できるようになります。

  5. コンプライアンススマートコントラクト

    • トークンの転送が事前に定義された規則に準拠しているかをチェックします。​これにより、各取引が規制要件を満たしていることを保証します。​

  6. セキュリティトークンコントラクト

    • アイデンティティレジストリと連携し、投資家の適格性を確認することで、トークンの保有と取引を可能にします。​


コード例:セキュリティトークンコントラクトの一部

以下は、ERC-3643に基づくセキュリティトークンコントラクトの一部を示すSolidityコードの例です。


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このコードでは、トークンの転送前に以下のチェックを行っています:

  • 受取人の検証:​_identityRegistry.isVerified(to) を使用して、受取人が検証済みであることを確認します。

  • コンプライアンスの確認:​_compliance.canTransfer(from, to, amount) を使用して、転送が事前に定義されたコンプライアンスルールに準拠していることを確認します。


では、結論に入りましょう。

✅ HederaがRWA・トークン化資産に振り切っているという見立て → 正しい

  • HBAR FoundationがERC3643 Associationに参加し、Archax+FidelityのMMFトークンに出資しているのは、明確に「機関投資家×RWA市場」に照準を合わせている動きです。

  • Hederaは既にABN AMRODLA Piperの社債・不動産トークン案件に使われており、HTS(Hedera Token Service*は許可型トークンとの親和性が高い。

  • これらはERC-3643と直接のEVM的互換性はないが、概念的に“許可型”と“コンプライアンス重視”という価値観は完全一致しており、HBAR側で“EVM圏との橋渡し役”を自認しているとも言えます。


✅ Hederaが「急いでいる」という感覚 → かなり妥当

  • 2024年後半〜2025年初頭はMiCAやSEC規制が施行フェーズに入るため、各国の金融機関が動き出す「タイミング」。

  • それに合わせる形で、ERC-3643の標準化「Final」取得 → 協会加盟 → RWAトークン化投資(Fidelity MMF)といった動きがわずか半年で連続しているのは明確に「先行者利益」を狙っている証拠。

  • また、HBAR財団は他の分野(NFT、メタバース等)よりも明らかにRWAと証券トークンにマーケと資金を集中し始めており、これは“急いでいる”ではなく、nomad的にはここに賭けているとも言えます。


✅ ISO 20022対応との関係 → 私の当初の見立てはほぼ正しいが、もう少し補足します。

以前の見立て:

「HederaはISO20022に準拠しているが、Ethereumのように“すべてを担う”ような上位互換プラットフォームではなく、トークン化に絞っており、決済は他プロジェクトで補う方向に見える」

これは正しいが、ただし誤解がないように:

  • Hederaは“決済そのもの”を自前で広く担うプラットフォームにはなっていません(例:USDCなどの決済にはEthereum/L2やStellarなどが多用される)。▶︎そのため通貨利権要素は依然Stellar優先かも

  • しかし、ISO20022に準拠した設計とHashgraphの特性(高スループット・確定性)を活かし、銀行・証券会社との“信頼レイヤー”に入り込もうとしています。

    • 例えば、銀行内のRTGS(リアルタイムグロス決済)インフラとの実証規制対応型デジタル証券の発行などです〜

  • つまり、Hederaの狙いは:自らがグローバル決済網の「中核(SWIFTの代替)」になるわけではないが、その周辺で「デジタル証券の証明・管理・監査・準拠性チェック」の基盤になる。かなと(大結論)

よってemakimonoをしている身でこう言うのもなんですが、当初よりはhederaの役割の範囲は縮小し、一方で質が良くなった印象。

最後に表化しました。

ERC-3643を用いた許可型ステーブルコイン/国債トークンの実例まとめ



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こう見るとhederaがKYCかつ許可制のような狭めな領域に移動している感が強い



では、またadiosss


参考文献(出典):

本マニュアルで引用・参照した情報源を以下に示します。


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コメント

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ERC3643徹底解説マニュアル|nomad
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