本年度末で休園する九十九里町唯一の私立幼稚園「ときがね片貝幼稚園」で22日、園児や保護者、同園の出身者らが集まり、同園に別れを告げるイベントが開かれた。園児全10人が踊りなどを披露したほか、イベントの最後には自然素材の風船を一斉に大空へ。過疎化を象徴するように、町から姿を消す私立幼稚園。一同は70年の歴史をかみしめながら、思い思いに感謝を伝えた。
同園は学校法人みぎわ学園(小寺隆理事長)が運営。1955年に九十九里町から幼稚園設置の依頼を受けた「ときがね幼稚園」(東金市)の分園という形で歴史が始まった。2018年には新園舎が完成した。
九十九里浜近くの敷地でキリスト教に基づく幼児教育を行い、70年間で約1900人が巣立った。小寺理事長によると、園児が多い時期は1学年で30人近く在籍したこともあったという。ただ、町の少子化の影響で状況は変わり、定員100人に対し本年度の園児は10人。年長以外の園児5人は今後、町立こども園に移る予定だ。
手続きの都合で本年度に休園という形で幼稚園を閉じ、来年度で閉園となる。九十九里町の幼児教育施設は来年度から、共に町立のかたかいこども園と、とようみこども園のみになる。
九十九里町の少子化は喫緊の課題だ。町によると、昨年の町内出生数はわずか24人。県のデータによると、同町内の出生数は19年は50人、14年は72人で近年の減少ぶりは著しい。町全体の人口減少も顕著で、22年には国から「過疎地域」に指定された。
小寺理事長は、幼児教育の現場にも影響を与えた新型コロナウイルス感染拡大と、町の急激な少子化の時期が重なったことに触れ、「町全体が一気に勢いがなくなってしまった」と残念がる。セレモニーの式辞では聖書の一節「夕があり、朝がある」を引用し、「夜があって一日が始まる。そして朝が来る。幼稚園は終わるが、それぞれの歩みは日々続く」と述べた。
3人の子どもをときがね片貝幼稚園に育ててもらい、現在年長の長女が本年度で卒園する高橋裕子さん(43)は園に感謝を告げつつ、「思い出の場所がなくなってしまい、子どもたちには寂しい思いをさせてしまうかな」と話した。