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Jack Moyer による性的虐待に関する
Ropes & Gray 調査報告書
警告:この報告書には、個人的な情報や
写実的な描写が多く記載されております
ので、取り扱いには十分ご注意ください。
また子供にはふさわしくない情報も含ま
れております。閲覧の際には、保護者に
よるご判断をお勧めいたします。
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アメリカン
スクール・
イン・ジャパン
理事会への
報告書
2015 年 5 月 18 日
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ROPES & GRAY LLP
目次
I. はじめに ............................................................................................................................................... 1
A.調査の範囲と方法 .............................................................................................................................. 1
B. エグゼクティブ・サマリー ..................................................................................................................... 1
II. Jack Moyer ......................................................................................................................................... 2
A. Moyer と ASIJ との関係、1962 年~2000 年 ..................................................................................... 2
B. 生徒、教員および運営者の間での Moyer の評判 .......................................................................... 3
C.Moyer の不適切行為の申立............................................................................................................. 3
1. 1960 年代 .................................................... 4
2. 1970 年代 .................................................... 4
3. 1980 年代 .................................................... 8
III. Moyer の不適切行為の申立に対する ASIJ 運営者の対応 ............................................................. 9
A.1960 年代 .......................................................................................................................................... 10
B. 1970 年代 .......................................................................................................................................... 10
C.1980 年代 .......................................................................................................................................... 14
D.1990 年代 .......................................................................................................................................... 16
E. 2000 年から現在まで ........................................................................................................................ 18
IV. 他の ASIJ の教職員に関する申立 ................................................................................................... 22
V. ASIJ の方針と手続 ............................................................................................................................ 23
A.過去の方針 ....................................................................................................................................... 23
B. 現在の生徒保護に関する方針 ........................................................................................................ 24
VI. 結論 ................................................................................................................................................... 25
A.Jack Moyer ....................................................................................................................................... 25
B. 方針、手続および提言 ..................................................................................................................... 26
付録 A. - 書類の検討方法 ................................................................................................................ 27
付録 B. - 生徒の保護に関するハンドブック(英語のみ) ......................................................... 28
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I. はじめに
A. 調査の範囲と方法
2014年 6月 4日、アメリカンスクール・イン・ジャパン理事会は、1962年頃~2000年頃の期間ア
メリカンスクール・イン・ジャパン(ASIJ)と関係があった元教員兼コンサルタントの Jack Moyer による性
的虐待被害の申立に関する独立調査を、Ropes & Gray LLP に依頼したと発表した。Ropes & Gray
はまた、以下の調査の依頼を受けた。
• ASIJ の教員、職員および運営者は、これまでこういった申立にどの様に対応してきたか
• ASIJ に関係する個人による、他の性的な不適切行為の申立、および
• 性的虐待の検知および予防のための方針および手続を含め、生徒の安全を守るため
に ASIJ が実施している過去および現在の方針と手続
Ropes & Gray は数ヶ月にわたり、以下の方法による調査・検討を行った。
• ASIJ のコミュニティや関連する情報を持つ人物に情報提供を求めるために、専用のメ
ールアドレスおよび電話でのホットラインを米国および日本の両国に設置し、これを
ASIJ のウェブサイトおよび ASIJ の保護者、評議員、卒業生、教員および ASIJ コミュニ
ティのメンバー宛のメールで公表した。メールアドレスと電話のホットラインは、ジャパン
タイムズの紙面でも公表された。
• 110 名を超える現在および以前の ASIJ 理事会のメンバー、教員、職員、運営者および
卒業生とのインタビューや、彼らから提出された書面の検討を実施した。インタビューは
東京および米国で対面式で、あるいは電話やテレビ電話で行われた。
• 1960年代~2015年までの日付のおよそ2万6,000の文書の収集および検討を行った。
対象となった文書には人事ファイル、卒業生のファイル、理事会議事録、通信文、電子
メール、証人の陳述、ハンドブックやマニュアル、年報、および三宅プログラムに関連し
たファイルが含まれる。Ropes & Gray による文書の収集および検討に関するより詳細
な考察は、付録 A に記載されている。
今回の調査は、理事会、運営者および教員の全面的な協力の下に行われた。。
B. エグゼクティブ・サマリー
ASIJ は活気ある多数の生徒、熱心なスタッフ、教員、理事会、運営者、そして愛校心の強い卒
業生が集まる特別な場所である。当方がインタビューを行った多くの元 ASIJ 教員や卒業生は、自分の
ASIJ 在籍時代や ASIJ コミュニティの強さを実に懐かしそうに語った。Jack Moyer の不適切行為の申
立と学校側の対応に関連して、強力な反発が起こったのは、ASIJ コミュニティの、学校とその生徒に対
する強い愛情に少なからず帰するものだということは明らかであった。
当方が実施した調査に基づき、当方は、1970 年代および 1980 年代に未成年で ASIJ の生徒
だった女性で、Moyer が性的な不適切行為を行ったとされる人物を少なくとも 19 名特定した。この不
適切行為の内容は、望まれない接触(脚を触ったり、背中をマッサージしたりする)、胸や性器を愛撫
するといったことから、継続的なレイプまで様々である。以下のセクション II では、年代別に Moyer の
性的不適切行為に関する申立を採り上げ、またセクション III では、かかる不適切行為の申立に対する
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学校側の対応を採り上げている。セクション IV では、Moyer 以外の ASIJ 教職員に関して調査中に提
起された申立について採り上げている。セクション V では、過去および現在の学校側の方針および手
続と、現在の方針や手続の実施方法について採り上げている。セクション VI では、調査についての当
方の結論、並びに、学校側が生徒に安全な環境を提供するために現在実施している取り組みをさらに
改善するべく、ASIJ の生徒保護方針をより強化するための提言を行っている。
本報告書では、申立を行った被害者および本調査の他の参加者のプライバシーと秘密保護
に配慮して、個人の名前は伏せている。
II. Jack Moyer
A. Moyer と ASIJ との関係、1962 年~2000 年
Jack Moyer は、1962 年 9 月から 1984 年春まで、ASIJ に教科教員として勤務した。Moyer は、
教員であった間、7年生の科学と、日本の国土と人々(JLAP)と呼ばれる 7年生の日本文化・社会科目
を教えていた。Moyer は 7 年生向けに、日本の伊豆諸島にある活火山島である三宅島(「三宅」)での
1 週間にわたる校外学習旅行(以下「三宅プログラム」という)の企画および運営を行っていた。Moyer
はまた、女子中等部のバレーボールおよびバスケットボールのコーチを務め、また ASIJ でスキューバ
ダイビングの課外クラスも受け持っていた。授業を受け持つ教員としての勤務を終了した後、Moyer は
1984 年~2000 年までの間コンサルタントして ASIJ に勤務した。Moyer はコンサルタントとして、引き続
き三宅プログラムの企画を行うと共に、ASIJ のアドバンスメント・オフィスが企画する、学校主宰の日本
各地への家族向け週末旅行の引率も行っていた。
ASIJ で教鞭を執っていた当時、Moyer は 2 箇所の住居を保有していた。1 つは ASIJ の調布
キャンパスから徒歩圏内にある小さな家、もう 1 つは三宅にある農場で、ここには居住区域と Moyer の
海洋科学調査研究室があった。Moyer は ASIJ で教鞭を執る一方で、夏の期間を三宅で過ごし、また
週末や学期中の休暇にもしばしば島を訪れていた。Moyer は 1984 年に教科教員としての勤務を辞し
た後、三宅に移住した。
Moyer は 1969 年~2000 年まで学校の三宅プログラムを運営していたが、後半の数年はこの
プログラムには余り関与していなかった。三宅プログラムの期間中、生徒と引率の教員は船中泊のフェ
リーで移動し、1 週間を野外活動(ハイキングやダイビング)や科学調査に費やすと共に、三宅の文化
や環境について学んだ。生徒の半数(男女とも)は引率の教員と共に地元の宿に宿泊し、残りの半分
は Moyer の家に Moyer や他の引率の教員と共に滞在した。この 2 つグループは、週の後半に宿泊
場所を入れ替えた。Moyer の家には 3 つの畳敷きの部屋があり、生徒は三宅プログラムの期間中そこ
で就寝した。男子生徒が1室で女子生徒が1室、そして引率の教員が真ん中の部屋であった。時に高
校生が三宅プログラムの期間中 Moyer の家に滞在し、引率の教員の手伝いをした。1970 年代後半ま
では、引率の教員が Moyer の家に滞在し生徒の監督を行っていたとみられる。三宅プログラムは、そ
の夏の三宅の火山噴火により、2000 年に終了した。以下のセクション III に詳細を記載したとおり、
ASIJ はこの秋に Moyer とのコンサルタント契約を終了した。
当方が受領した虐待申立報告の大半が、この学校公認の三宅プログラムの期間中または学校
の施設内で発生したものではなく、むしろ Moyer が調布キャンパス付近や三宅の自宅に生徒を招くな
ど私的に計画した他の機会で発生しているように思えることに当方は注目する。
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B. 生徒、教員および運営者の間での Moyer の評判
元教員、元運営者および卒業生の多くは一様に、Moyer は世に知られた海洋生物学者で、こ
の分野の同僚の中でも尊敬を集めていたと述べている。証言者達は、Moyer の環境学者としての業
績、流暢な日本語、そして日本の文化や社会に対する深い知見について語った。何人かの元教員お
よび卒業生は、Moyer の教員としてのカリスマ性や、生徒に科学、とりわけ海洋生物学への興味を呼
び起こす能力について指摘した。また元教員や卒業生の多くは、三宅プログラムの教育の質や三宅の
自然が持つ独特の美しさについて語った。
Moyer が ASIJ で働いている間、不適切と見なされるようなことはなにも見なかったと話す者が
いる一方で、Moyer が行き過ぎた行動(手を握る、脚に触る、背中をマッサージする)をしているのを目
撃したり、Moyer がかなりの時間を特定の女子生徒と学校の内外で過ごしていたのに気づいたりした
と語る者もあった。元教員も卒業生も、Moyer には、「カルトのように」従う生徒がいて、そのほとんどは
女子であり、こういった生徒はきまってMoyerの教室で時間を過ごしていたと述べている。Moyerの評
判が保護者、教員そして運営者からの信頼を生み、また Moyer は自分の評判、研究そして三宅の魅
力を使って、学校の目の届かない週末や夏季休暇に、生徒が三宅を訪問するよう仕向けていたと語る
者も多くいた。
C. Moyer の不適切行為の申立
当方の調査では、未成年で ASIJ の生徒だった女性で、Moyer が当該女性に対して性的な不
適切行為を行ったとされる人物を少なくとも 19 名特定した。この 19 名の女性うち 18 名は、当方の調査
の一環としてのインタビューに応じるか、当方に書面による陳述を提出した。これらの女性のうち 12 名
と当方とのインタビューは、女性側の弁護士である O'Donnell Clark & Crew LLP (「OC&C」)1の調整
により行われた。Moyer の虐待を申し立て、OC&C が代理人となっている残りの少なくとも 1 名の女性
は、現時点では弁護士を通じてインタビューを拒否している。当方は、OC&C が代理するこの 13 名の
女性に加えて、Moyer による性的不適切行為を申し立てている他の 6 名の女性についてもインタビュ
ーを行い、あるいは陳述を受領した。これらの女性それぞれの Moyer との経験については、以下に記
載されている。
また、当方には原メールは提供されなかったが、2003 年の ASIJ の卒業生へのメール(「Moyer
の 2003 年のメール」)において、Moyer が、12 名の女性を挙げて彼女らが ASIJ に生徒として在籍中
に性的虐待を行ったことを認めていたことは、特筆すべきことである。これら 12 名の女性のうち 7 名は、
当方の調査の一環として、当該女性を代理する OC&C の弁護士を通じて設けられた席で当方のイン
タビューに応じた。当方は他の 5 名の女性は特定することができず、また Moyer の 2003 年のメールを
受領した卒業生を代理するOC&Cの弁護士は、プライバシーに対する懸念、個人を特定することがで
きないこと、および(または)女性本人または家族による今回の Ropes & Gray の調査に参加しないと
の決断を理由として、これら 5 名の女性の氏名および身元を当方に公開することを拒否した。Moyer
の 2003 年のメールでは、Moyer は、自分が「魅力を感じていた」が虐待はしていなかったとする他の
ASIJ の生徒を少なくとも 4 名、最高で 7 名挙げている。本調査期間中、当方はこれらの女性のうち、1
名を除き特定することができなかった。なお特定した 1 名については、当方はインタビューを行い、
Moyer との経験について以下に記載している。
1 これら 12 名の女性の陳述内容は、彼女らを代理する OC&C の弁護士の許可の下、理事会に報告されている。