ミャンマーでM7.7の地震、140人超死亡 タイで工場停止
【ネピドー=渡辺禎央、バンコク=井上航介】ミャンマー中部で28日、マグニチュード(M)7.7の地震が発生した。震源に近い中部マンダレー周辺で建物や橋が倒壊した。軍事政権トップのミンアウンフライン国軍総司令官は少なくとも144人が死亡し、732人が負傷したと発表した。
隣国タイの首都バンコクでも強い揺れがあり、国内の自動車工場などの稼働が一時停止した。
マンダレーはミャンマー第2の都市。地元からの情報によると、中心部にある観光名所の王宮やマンダレー大学の一部が倒壊した。同大は火災が発生し、複数の学生や職員が閉じ込められているとの情報がある。
三菱商事などの合弁会社が運営するマンダレー国際空港でも大きな揺れがあり、従業員や旅客がビルの外に駆け出し騒然となった。地元報道によると、ネピドー国際空港では管制塔が倒壊して運航を停止した。
最大都市でミャンマー南部に位置するヤンゴンとマンダレーを結ぶ幹線道路も亀裂が発生するなどの被害が伝わっている。
バンコクでは28日昼ごろに強い揺れが起きた直後、中心部の建物から多くの人が一斉に外へ避難した。バンコク都庁によると、建設中のビルが倒壊して8人が亡くなった。少なくとも80人が行方不明だという。
地震の影響は経済にも広がった。トヨタ自動車は中部サムットプラカン県の工場で稼働を一時停止した。安全が確認され次第再開する予定だという。ホンダも中部アユタヤ県の工場を、日産自動車もバンコク郊外の工場を一時停止した。
タイ証券取引所(SET)は午後から取引を終日停止した。タイのペートンタン首相は28日の記者会見で「バンコクの鉄道は終日サービスを停止する」と述べ、都内の公園を一時避難場所として活用する方針を明らかにした。
マンダレー在住の男性は日本経済新聞の取材に「自宅と日用品店のガラスが割れ、多くの商品が損害を受けた。電話やネットがかなり通じにくい」と話した。
マンダレーの南方約300キロにある首都ネピドー中心部のホテルでは、上下左右の揺れが数十秒にわたって感じられ、客室の天井や壁の建材がはがれ落ちた。ロビーではガラス製の電飾の一部が天井から落下し、床に破片が散らばった。
ミャンマー軍事政権の発表によると、最初の揺れのあと3度の余震が続いた。マンダレーやネピドーなど6つの州・地域を「緊急事態」の対象に指定した。
ネピドーは軍事政権の庁舎や2021年2月の軍事クーデターで拘束された民主化指導者アウンサンスーチー氏が収監されているとされる建物がある。国軍の重要行事である「国軍記念日」の軍事パレードが27日夜に開かれた。
ヤンゴンの日本大使館は地震発生を受けてミャンマー滞在中の邦人向けに、余震の可能性に触れ警戒を続けるよう呼びかけた。
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(更新)- 高橋徹日本経済新聞社 上級論説委員・編集委員ひとこと解説
バンコクに長年住んでいる知人は「いままで経験した中で一番すごい揺れだった」と驚いていました。タイは普段、地震がほとんどなく、小さな揺れでも人々はびっくりしてすぐ建物の外に逃げますが、建物倒壊は聞いたことがありません。生存者の救出を祈ります。震源地に近いミャンマー中・北部の被害はもっと大きいようです。軍事政権と反軍勢力の内戦が激しい地域だけに心配です。国際的な救助や人道支援を円滑に受け入れてほしいと願います。
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