京都新聞社が優生保護法(1948~96年)下の強制不妊手術を巡る公文書の開示を滋賀県に求めた訴訟で、約8割の開示を命じた判決が確定したことを受け、県は28日、開示が命じられた箇所の黒塗りを外した文書を同社へ手渡した。強制不妊手術の関連文書の黒塗りが裁判によって外れたのは全国で初めて。
手術の適否を決めた県優生保護審査会に提出された文書(審査会文書)で、開示箇所は、手術を実施する根拠になった生活歴や病歴、手術に関与した医療機関名など計286カ所。最初の情報公開請求から7年3カ月を経て1次資料の大半が開示されたことで、県内で行われた手術の一端が明らかになった。
滋賀県では少なくとも387人が障害や病気を理由に不妊手術を強いられた。県庁には審査会文書など10人分の記録が現存する。2017年12月、京都新聞社は審査会文書の情報公開を請求したが、県は大半を黒塗りにした。第三者機関の審査を経て同社が20年に提訴。最高裁まで争い、先月、黒塗りの347カ所中、225カ所の開示と61カ所の部分開示を命じた大阪高裁判決が確定した。
黒塗りが外れた箇所からは、県が主に精神科病院に対して手術申請を依頼していたことや、手術が必要と見なした本人や家族に7回も手術を勧奨するなど、県が執拗(しつよう)に働きかけていた実態が分かった。
「生活、教育の扶助を受けていて貧困家庭」など、手術の要件とは関係がない経済状況を強調する記載も複数箇所に見られた。
京都新聞社の調査では3月現在、審査会文書などが残る34都道府県のうち、約7割の24都道県が情報公開や閲覧請求に対して生活歴や病歴を公開していない。8割開示の判決が確定したことで公開を求める動きが広がれば、各地で1次資料に基づく検証が可能になる。
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京都新聞社は今後、開示が命じられた黒塗り箇所を詳報するとともに、公文書などを基に「戦後最大の人権侵害」といわれる強制不妊手術の実相に迫る企画に取り組みます。