アニメレビュー:「ユーリon ICE!!! 」はスポーツの舞台を借りた腐女子の妄想アニメだった!
中学生の頃、槇村さとるの「愛のアランフェス」というマンガに夢中だった。フィギュアスケートの世界で、まったく無名だった少女が、当時女子では成功したことのない3回転ジャンプを成功させ、一躍トップ選手に躍り出るが、そのトップの座を捨てて惹かれ会った男子のトップ選手とペアを組み・・・というストーリー。
当時はまったくのマイナースポーツで、世界との差も大きかった中、天才少女とうたわれた主人公の活躍と苦悩に、心躍らせたものだった。
あれから40年、日本はいつの間にかフュギュアスケート大国となり、男女ともにメダリストを輩出する国となった。トリプルアクセルを引っさげて浅田真央がリンクに躍り出たとき、まるで「愛のアランフェス」のあの主人公みたいだと、わくわくさせられた。国際大会が毎年のように開催され、テレビ中継もされる。日本のみならず海外選手の人気も高い。そんな中、男子フィギュアスケートの世界を描いたアニメがある、と知り、このフィギュア先進国となった今の日本で、どんな作品が生まれているのだろうと、Netflixで視聴したのが「ユーリon ICE!!! 」である。
主人公は23歳のフィギュアスケート選手、勝生勇利。その実力を認められ特別強化選手となっているものの、メンタルの弱さから、初出場を果たしたグランプリファイナルで6位に沈んだ。失意のうちに故郷へ戻った勇利は、ホームリンクで憧れの選手、ヴィクトルのプログラムを滑ったが、その動画が本人の知らないところで拡散され、それを見たヴィクトルがコーチになる、と申し出る。
一方ヴィクトルの母国ロシアでは、圧倒的な実力でジュニア金メダリストとなったユーリ・プリセツキーがシニアデビューを目前にしていた。しかし、憧れの選手ヴィクトルが引退し勇利のコーチになってしまったことで勇利をライバル視するようになり、ふたりの「ユーリ」は氷上で対決することになる。
最初のこうした展開は、なかなかに心惹かれるものだった。だが、いきなり勇利の実家(温泉旅館である)にやってきたヴィクトルの入浴シーンを長々見せられて「ん?」となり、プログラムのテーマで愛だのエロスだのと言い出したところで「むむむ?」となり、気を取り直して、その愛だのエロスだのを、氷上でどのように表現するのか、そのために、どのように技術的課題と向き合い乗り越えていくのか、といったテクニカルな展開を期待しつつ見続けたがそういうことはまったくなく、グランプリシリーズが始まると、各国イケメン選手とワチャワチャしながら話がふわふわと流れてゆき、気がつくと、グランプリファイナル前に勇利とヴィクトルがそろいの指輪をはめるなど、訳のわからないオチで終わっていった。
フィギュアスケート振付に、高橋大輔のプログラムを振り付けした宮本賢二氏を起用し、それぞれのキャラクターのプログラムの描き分け、そしてアニメでフィギュアスケートの複雑な動きを表現しているところは、素晴らしいと思った。だが、正直なところ、それも飽きてくるのである。なぜなら、ジャンプが成功するかどうか、という本物の競技のハラハラ感がないからだ。ドラマの中で、例えばこのジャンプ、このコンビネーションが苦手だとか、技術的な課題の克服ができないとか、表現力が未熟で悩むとか、故障があるとか、そういったアスリートの苦悩が描かれてこそ、本番の競技シーンが緊迫したものになると思うのだが、そういうことはふれられもせず、ヴィクトルとの絆、愛情?ですべてを片付けてしまう、そういう雑な話づくりに辟易してしまった。
もう一つは、やはりやたらと勇利とヴィクトルの親密さ、セクシャルな雰囲気を含んだ関係性や、競技シーンをセクシャルに見せようとする描き方に、いやーなものを感じたということがある。つまり、フィギュアスケートを見て楽しんでいる女性たちは、アスリートのそういうところを見て喜んでいるのでしょう?という、製作者らの下世話な決めつけである。もしこれが、女性の選手とコーチとの話だったら、スケートをする女性の姿にエロエロ言うのは完全にアウトではなかろうか。現実にも、女性アスリートを性的に見る観客の存在は問題になっているし、対象が男性のアスリートであれば、女性がそういう目で見てもゆるされるということが、あるはずもない。その意味で、純粋にスポーツもののアニメとして楽しみたかった人や、フィギュアスケート観戦を楽しむファンのことをバカにしているんじゃないかと不快に感じる。
もちろん、同性同士で愛し合う関係になる、そういうことはあるだろう。それがテーマであっても問題だとは思わない。そうだとしても、この作品にはプロセスがないのだ。だから、結局のところ、「山なし」「オチなし」「意味なし」の最初の文字をとって「やおい」と揶揄された、腐女子向け二次創作の域を出ない妄想レベルの作品だとしか評価でいない。
フィギュアスケート大国となった日本なのに、これは関係者の顔に泥を塗るような出来ではなかろうか。
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