そこにはこう書かれていた。 『ぜ・ん・ぶ♪』
 俺はそれを見て唖然とする。
「……え?こ、これ……なに……?」
 彼女達に尋ねようとして顔をあげると、そこにいた五人の表情は、先ほどのものとは全く異なっていた。
「和之君、それ選んじゃったわね」
「あ〜ぁ、カズちゃん、可哀想♪」
「よりによってそれとは、よっぽど運がねぇな和之w」
「和之くん……ごめんね………」
「カズくん、こりゃご愁傷様だね!」
 その五人が怖くなり、俺は近くにあったジュースをぐいっと飲み干した。
「み、みんな、なんなんだ……よ……?」
 どうしたことだろう。叫ぼうと思ったのに、一気に体から力が抜けていく。俺はそのままへなへなと床に崩れ落ちた。
「その中には痺れ薬が入っていたのよ」
 玲子が俺を見下ろすように立っている。他の四人も俺を囲むように集まってきた。
「でも安心してね。私たち、カズちゃんを拉致しようとかそんな気はさらさらないから♪」
「その痺れ薬の効果も30分くらいだしな」
「体が動かなくなるだけで、五感はしっかり保たれるし……」
「ま、嗅覚が残るのが命取りになるかもしれないけどね!」
 すると五人はするするとスカートを脱ぎ始めた。そして、パンツまでも……。俺は周りの光景に唖然とす る。どうして俺の周りでこんなストリップショーが始まっているのか、まったく見当もつかない。しかし、 この状況は俺にとって喜ぶべきものなのだろうなと思っていた。しかし、それをも大きな間違いだった。
 五人は次から次へと俺の顔にお尻を向けてきた。お尻の様子は五人五色とでも言うべきか、色、形等々、 それぞれが特徴的な形をしている。ともかく、五人の美女のお尻が五つ、目の前に並んでいる。大した迫力だ。体が動ければつかみかかるところだが、それができないのがもどかしい。
「みんな、始めの一発は挨拶代わりに軽くね」
「「「「はぁ〜い」」」」
 リーダーシップをとる玲子に四人が返事をする。そして玲子がもう一度、
「せーの……」 と言った次の瞬間、俺の興奮は苦痛、そして恐怖に変わった。

プウゥゥーーウ!!
ぶむおおおぉぉ!!
ビビビブビイィ!!
ふしゅううぅう……
ぶおおおおっっ!!

「ん、んんんんんーーー!!!」
 音、匂い共に五人五色ではあるものの、それが強烈すぎるものだということは、誰も変わらなかった。痺 れ薬のせいで呂律が回らない俺は必死で藻掻く。が、彼女たちはそれをも楽しんでいる様子だった。
 そこで俺はそれが起こる前の玲子の言葉を思い出す。これは「挨拶代わりの軽い一発」……。
 そんな馬鹿な!これが「軽い」だと!?だとしたら、軽くない一発は、いったい、どれほどに……
 逃げようとするが、体はまだ動かないままだ。そんな今も、彼女たちは楽しそうに顔の上で会話を続ける。
「すっご!みんな臭すぎだよ!」
「お前が言うなお前がw」
「これほどだとは思わなかったねぇ♪」
 そこで五人が一斉に俺の顔色をうかがうように下を見る。そして同じタイミングで、にんまりと微笑む。
「どう?私の野菜と、」
「私の卵と、」
「ウチの肉と、」
「わたしのニンニクと、」
「あたしの芋の香りは?」
 五つの全く異なる悪臭が集まった混沌とした状態。そう問われても俺は何も答えられない。答えられない のは痺れ薬のせいか、ただならぬ屁の臭気のせいか……。
「それじゃあみんな、そろそろ一週間の我慢の限界でしょう?次の一発で、お腹のガスを全部出し切っちゃ う気で行きましょうか」
「分かったよ〜、委員長♪」
「やっとこれを全部出し切れるのか」
「…ん……お腹痛い………」
「あたしとしてはスッキリだからいいけど、これ嗅がせられるカズくんは可哀想かも!」
 俺は最後まで逃げようと藻掻いた。この五人の「極悪の一発」を食らうのは御免だった。
 だが、それはついに叶わなかった。
「「「「「せ〜のっ!!」」」」」
 五人のそろった掛け声が、カラオケボックス全体に響いた――

プウオォォーーーーーッッ!!!!
ぶむおああああぁあぁああ!!!!
ブリビリリリリイイイッッ!!!!
ふむっしゅううぅぅぅうぅ!!!!
ぶうばっおおおおおおおお!!!!!

 生尻から放たれたその風圧は凄まじすぎて、俺の髪の毛をたなびかせた。そして匂いは俺の鼻穴に収まら ず、部屋中に広がった。
 野菜の甘ったるさが体を揺さぶり、
 卵の硫黄臭さが頭蓋骨を叩き、
 肉の腐敗臭が後頭部を打撃し、
 ニンニクの刺激臭が脳を突き刺し、
 芋の大量すぎるガスが部屋を揺らした。
 響き渡る彼女達の笑い声。一週間の我慢を打ち破ったその快感により秘部に浮かぶ愛液。それらが交錯する部屋の中で、俺の意識は徐々に薄れていった………。

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