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スポンサービジネスからの脱却! 鹿島アントラーズが実践する新しいスポーツビジネスの形とは?―ad:tech tokyo 2024参加レポート(4)

皆さまこんにちは! Molocoです。突然ですが、皆さまはスポーツ観戦はお好きでしょうか。応援しているチームが勝ち進むとワクワクしますよね。
そんなスポーツビジネスは、企業の広告展開によって支えられています。スタジアムの看板やユニフォームにスポンサー企業名を入れる広告事業はチームにとって非常に大きな収益源。それに試合チケットやグッズ販売を加えて、スポーツチームは成り立っています。

この状況を大きく変革しようとしているのが、2019年に鹿島アントラーズの経営権を取得したのがメルカリです。目指しているのは、広告収益だけではなく、さまざまな企業と共に地域課題を解決しながら地域を盛り上げていく新しいスポーツビジネスの実現です。ad:tech tokyo 2024のMolocoブースに、メルカリ 会長であり、鹿島アントラーズ・エフ・シー代表取締役社長の小泉文明氏をお招きし、新しいスポーツビジネスの実践と未来について伺いました。

鹿島アントラーズが実践する新しいスポーツビジネスの形

1993年のJリーグ(日本プロサッカーリーグ)スタート時から1度も降格することなく、優勝回数8回、天皇杯優勝5回、ACL1回という輝かしい実績を誇る鹿島アントラーズ(以下、アントラーズ)。ホームタウンは、人口約6万5000人の鹿嶋市とその周辺の神栖市、潮来市、行方市、鉾田市のホームタウン5市で全人口は約27万6000人です。スポーツビジネスは一般に半径30kmが商圏と言われており、J1クラブではチームのコア商圏における人口は平均78万人とのこと。圧倒的な強さと実績を誇るアントラーズは、J1クラブ中で最小規模のコア商圏で活動しています。

スタジアムへのアクセス時間は、Jリーグ平均が52.2分と1時間未満なのに対し、ホームの茨城県立カシマサッカースタジアム(以下、カシマサッカースタジアム)へのアクセスは92.8分と1時間半超え。その一方で、スタジアム来場者の女性比率は40.5%(J1平均は37.1%)と高く、54%は県外からの来場者、東京を中心した首都圏のファンが多いという特徴があります。

そんなアントラーズの経営を2019年から担っているのが、メルカリの会長でもある小泉文明氏です。

サッカーファンでもある小泉氏は、アントラーズのこれまでのビジネスと買収の狙いについて「今までのスポーツビジネスはユニフォームや看板でお金をいただくスポンサーモデルでした。しかし私はそれだと長続きしないと考えていて、2019年にメルカリが買収した時に『スポンサーではなく、パートナー』という立ち位置を明確に示しました」と話し、「お客様の課題を解決したうえで対価をいただく」という新しい形のスポーツビジネスを推進しています。

アントラーズを支えているのは、約100万人超のSNSフォロワーのほか、ファンクラブの2万2000人、そして70社を超えるパートナー企業、そしてクラブと共に地方創生の実現を目指す地元の企業から成る「ビジネスクラブ」です。ビジネスクラブは100社を超えており、クラブのホームタウンで活躍する元気な企業が集まっていて、毎月地域の課題解決に向けたディスカッションや協業について語り合う“飲み会”が開催されています。

スタジアムビジネス

アントラーズの財産はこうしたソフトパワーと、2006年に指定管理件を取得しているスタジアムです。このスタジアムというハードを活用し、パートナー企業やビジネスクラブに所属している企業の技術力、ソリューションを組み合わせ、地域の課題解決に取り組んでいるそうです。小泉氏は、スタジアムを課題解決に向けた実証プラットフォームと捉え、スタジアムの「ラボ化」を謳っています。

テクノロジーを活用したクラブの新たな収益機会の創出

人口が少ないからこそできる、チームを中心した地域の課題解決型ビジネス

小泉氏は、スタジアムを活用したさまざまな取り組みを紹介していきました。NTTドコモと共同で5Gによる新しいエンタメの見せ方を検証したり、NECと組んでスタジアムの入退場における顔認証の実証実験を進めたり、「2週間に1回、2万人以上の方々を対象にPoCの場としてスタジアムを活用いただくソリューションを提案しています」(小泉氏)と言います。

「これだけの規模の検証を一般で行おうとすると莫大な調整コストがかかりますが、私たちはスタジアムの指定管理権を持っているので、圧倒的なスピードで実現できるのが強みです」(小泉氏)

このほかにもスポーツジムを運営し、オムロンの協力の下で市民の健康向上に向けた取り組みを展開、またクラブのスポーツドクターの地域医療貢献に向けたクリニックではシーメンス社が協力し、医療機器の提供を通じた地域ウェルネスの向上などの実証実験が進んでいます。

また人口が少なくて街の規模が小さいという点も、新しいスポーツビジネスに取り組むアントラーズにとってはメリットでした。地域課題解決ビジネスが進みやすいからです。

小泉氏が自身のネットワークを活かし、「街から募集した地域の課題やクラブの課題を解決してくれる企業」を募ってピッチイベントを企画したところ、大企業を含む80社が参加。また、パートナー企業であるグロービスと共同でスポーツMBAのクラスを作り、生徒をホームタウンに招いてフィールドワークをしながらビジネスプランを策定してローカルビジネスを活性化するなど、さまざまな取り組みが進められています。

「こうした取り組みを通じ、サッカーチームでありながら、地域のDXコンサルティングを手掛けるなどソリューションの幅が広がっています」と小泉氏は話します。今後もこうした課題解決ソリューションに注力するために、現在クラブでは人材を募集中とのこと。パートナーセールス部門はコンサルティングに近いので、コンサルタント基準に合わせて年収は1000万円以上に設定しているそうです。

パートナー企業にとってのメリットとは

こうした取り組みがパートナー企業にもたらすメリットは何でしょうか。小泉氏は次の2つを挙げています。

まず、PoCにかかるコストを抑えながら圧倒的なスピードで実証できること。リアル環境で新しいことを実証するには事前の調整が必須ですが、アントラーズのスタジアムを活用することでその工数とコストが大幅に削減できます。

またクラブが行政と近いこともメリットです。鹿嶋市現市長の田口伸一氏がサッカーファンで、スタジアムに頻繁に足を運んでおり、「新しいアイディアを実装することにも積極的」(小泉氏)といいます。

もう1つ、パブリック案件の実績を積めるという点です。スピーディーに実証できる場と、新しい取り組みに積極的な地域カルチャーがある鹿嶋市を活用し、新しい取り組みを実現することで、自社の実績をアピールできます。

2030年代前半を目標に新スタジアムをオープン、さらなる地域振興へ

今後、アントラーズはどのように進化していくのでしょうか。小泉氏はこれからの未来に関し、2つの取り組みを示します。

1つは新スタジアムの建設です。2030年代前半を目標に「365日利活用できる新しいスタジアム」をオープンしたいと考えており、スタジアムと地域の活性化につながるアイディアを持つ新しいパートナー企業を募集中とのこと。「建設費が高騰しているので、オープン時期について確約することは難しいのですが、建設時からパートナーとして入っていただければ、そのアイディアを組み込んで新たな実践の場として活用いただけます」と小泉氏は話し、従来からのウェルネス業界はもちろん、新しいアイディアを持つテクノロジー企業やエネルギー企業、アカデミアなどからの参加を待っています。

もう1つは地域振興です。小泉氏はこれまでの経験を踏まえ、「これからインターネットはデジタルの世界だけでなく、街というリアルなネットワークのなかに導入されて広がっていくと考えられます。その入口に地域に根ざしたクラブがあり、顔認証や新しい技術を実証しながら現実の街に広がっていくことで、地域のスマート化や課題解決が進むはずです」と力を込めて話します。

これと同時に進めているのが地域振興です。鹿嶋市にはカシマサッカースタジアムのほかに、2600年の歴史を持つ鹿島神宮がありますが、高齢化で参道に並んでいた店舗が次々に閉業してしまいました。小泉氏は「スタジアムがあって、スポーツがあって、街に熱狂があれば、地域の人々がさらに笑顔になるはず」との思いから、面白いアイディアがある若い起業家やスタートアップ、クラフトビールのブルワリーなどを参道に集め、勢いと活気をもたらしたいと考えています。

「地元企業が集まっているアントラーズのビジネスクラブには、面白いアイディアへの資金提供を惜しまない経営者がたくさんいます。そうした経営者と、面白いアイディアを持つ若い方々をマッチングし、鹿島神宮参道を中心にスタジアムまわりにコンテンツを作っていけば、この地域ならではの新しいまちの顔ができてくるはずです」(小泉氏)

新スタジアム建設に向けてのチャレンジ

そのために小泉氏は、まちづくり事業を担う個人会社を設立したとのこと。これからのアントラーズの進化と地域発展が楽しみです。

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