今回は「花粉症」についてお伝えします。シーズンを前に「鼻アレルギー診療ガイドライン」が改訂され、花粉症について新たに分かってきたことが盛り込まれました。花粉症の最新情報について、山梨大学医学部教授の櫻井大樹さんに伺います。
(聞き手:山本未果ニュースデスク・結野亜希キャスター・野村優夫キャスター)
【出演者】
櫻井:櫻井大樹さん(山梨大学医学部教授・医師)
今回は「花粉症」についてお伝えします。シーズンを前に「鼻アレルギー診療ガイドライン」が改訂され、花粉症について新たに分かってきたことが盛り込まれました。花粉症の最新情報について、山梨大学医学部教授の櫻井大樹さんに伺います。
(聞き手:山本未果ニュースデスク・結野亜希キャスター・野村優夫キャスター)
【出演者】
櫻井:櫻井大樹さん(山梨大学医学部教授・医師)
――最初に花粉症の現状について教えてください。
櫻井:
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会という学会があります。その医師がほぼ10年ごとに行っている調査によりますと、直近は2019年になりますけれども、花粉症の有病率は増加を続けているということが報告されています。中でも特にスギ花粉症の割合が高くて、国民の3人に1人はスギ花粉症とされています。スギ花粉症とヒノキ花粉症を合わせ持つ人も増えておりまして、花粉症が長引いて重症化する傾向にあることも問題になっています。また小児の花粉症患者というのは最近急増しておりまして、特に5歳~9歳、この年代でこの10年でスギ花粉症患者が2倍以上にも増加しています。特に子どもの場合は鼻炎の症状を自ら訴えるのが難しいので、周囲の人が気づいてあげるということが非常に大事です。また現在、スギ花粉症患者の7割が重症もしくはそれ以上の最重症と言われていまして、速やかな治療が必要になっているということから、去年、4年ぶりに「鼻アレルギー診療ガイドライン」が改訂されております。
――今回のガイドラインの改訂で、どんなことが変わったんでしょうか。
櫻井:
コロナ禍の中で皆さんがマスクをつけたことで、花粉症の新規発症者が半減したということが報告されています。花粉飛散期のマスク着用が、実は発症の予防にもなるという可能性が分かってきています。そういうことで、今、花粉症でない人も、この時期は花粉症予防のためにマスクを着用するとよいと思います。
――マスクをしておくと、将来、花粉症になる確率は下がるということでしょうか。
櫻井:
そういうふうに考えています。花粉症の発症を遅らせたり、ならないようにしたりするという可能性があるのではないかというふうに考えています。
――2つめは?
櫻井:
「舌下免疫療法」という治療法がありまして、このデータがだいぶ出てきております。これは根本的な改善効果が期待されるんですけれども、非常にお勧めできる治療法になってきています。3年治療を行って終了した後の4年目・5年目でも症状が軽い状態を維持している方が7割~8割ぐらいで、症状が全く出ないという方も2割ほどいらっしゃいます。
――舌下免疫療法、スギ花粉から抽出したエキスを原料にした薬を舌の下に投与して、体を慣れさせる方法だということなんですけれども、これだけ効果が出てきている、エビデンスが出てきたということは先生方のほうも積極的に勧めるような治療法になってきたということなんでしょうか。
櫻井:
そうですね、これまでの注射法と変わって安全性も高くなってきていますので、非常にお勧めできる治療となっています。
――そのほかには?
櫻井:
そのほか、採血検査でスギやヒノキのアレルギーというのを調べていくんですけれども、その抗体が陰性、ゼロで花粉症の根拠がなくても、花粉症ではないと言いきれないということが分かってきました。鼻水の中にだけ抗体が見つかる「局所アレルギー性鼻炎」という、鼻だけに花粉症が存在するアレルギー性鼻炎が存在するということが分かってきています。ただ、まだ日本では診断できない状況という問題があります。鼻の中にアレルギーを起こすような物質を噴霧して反応が出れば「局所アレルギー性鼻炎」ということになるんですけれども、日本ではまだ今のところ検査キットがないというのが現状です。
――そうすると採血検査では花粉症の根拠がない、でも実は花粉症の可能性がある患者さんの場合、どのように診断されることになるんでしょうか。
櫻井:
毎年、同じ時期に症状が出ることですね。あとは典型的なアレルギー性鼻炎の症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまりがあるかですね。あと耳鼻咽喉科であれば鼻の粘膜の状態などを見て、採血をしなくてもアレルギー性鼻炎、花粉症と診断できれば、治療が開始されるということになる可能性があります。ただ基本的な対処は、基本的なところがアレルギー性鼻炎と同じですので、アレルゲン、原因となる花粉を避けることなど、予防的な対処が大事ですね。薬も花粉症の薬が効くと考えられています。
――治療に関してですけれども、新しい薬も出てきているということですね。
櫻井:
そうですね。花粉症の治療薬としては、飲み薬、点鼻薬、点眼薬、あと注射薬などもありますけれども、点眼薬に代わる新しい治療法として、去年、まぶたに塗るクリームタイプの花粉症治療薬が発売されています。まぶたに塗るタイプというのは世界初で、今年このシーズンから使われ始めています。1日1回まぶたに塗るだけでよくて、効果は24時間続くというものになります。効果については、点眼のアレルギー薬と同じぐらい効くと報告されています。点眼薬の使用回数が守れないということであれば、この1日1回の使用で済むクリームタイプのほうが、かゆみなどの症状を抑える効果が出やすいといえます。価格は3,000円ほどになりますけれども、3割負担の方は1,000円ほどになる計算です。
――何度も目薬をさす必要がなく、長時間の効果が期待できるということなんですね。
櫻井:
そうですね。
――改めて、花粉症の治療で大事なことはどんなことになりますか。
櫻井:
症状が出始めの時期からしっかり治療する「初期療法」が非常に大事で、それによって重症化を抑えることができます。症状の出始めというのは、時期は人それぞれ違いはありますけれども、まだ出始めという方は早めの対策をしていただいて、薬局で発売されている薬でもいいと思いますけれども、早めの対策が必要ということになります。もし花粉症が重症化してしまうと、薬が効きにくくなってしまって、場合によっては気管支ぜんそくを持っている方ではそれが悪化したり、そのほかのアレルギー疾患も悪化したりしやすくなるので、症状が軽い時期から治療を行っていくということが大切になります。
――花粉は、花粉症ではない人にも影響を与えると考えておいたほうがいいんでしょうか。
櫻井:
はい。花粉症でない方も皮膚の炎症やかゆみなどの症状が出てくる「花粉皮膚炎」にも注意が必要です。花粉症でかゆくて目をこすって皮膚炎になる場合とか、花粉によってアレルギー症状で皮膚炎になる場合もあるんですけれども、花粉自体に皮膚を荒れさせる成分というのもありますので、そういったことが要因だと考えられています。例えば化粧水、乳液などで保湿していただいて、肌のバリア機能を高めること、マスクや眼鏡などで肌に触れる花粉を減らしていくことが効果的だと思います。
エンドコーナーでリスナーからの質問や感想についてもお答えいただきました。
兵庫県60代の女性
1か月ほどアレルギー性ぜんそくの治療をしています。鼻水は出ません。気管のあたりがしんどく生活に支障が出ます。花粉でこのような症状になりますか。治療はどうしたらいいでしょうか。
――まず花粉でこのような症状になると考えていいんでしょうか。
櫻井:
そうですね、鼻のほうと気管がつながっているということもあるんですけれども、鼻のほうでアレルギー性鼻炎が出た場合というのは、気管のほうに影響するということもあります。また花粉そのものが、花粉の種類にもよるんですけれども、直接鼻だけアレルギーを起こすわけじゃなくて、気管の方にも入り込むと気管の方に炎症を起こす、アレルギーを起こすということもありえますね。
――では治療については、花粉の方を心配していったらいいのか、ぜんそくを心配していったらいいのか。治療はどうしたらいいんでしょうか。
櫻井:
気管支ぜんそくの方が非常に強いということであれば、基本的にはぜんそくの治療をするということになりますけれども、鼻のアレルギー症状が強い場合は、アレルギーが起こることでぜんそくの方も悪化するといわれていますので、やはりしっかりアレルギー性鼻炎の治療、花粉症の治療もしていただくことは必要だと思います。
東京都40代
花粉症の予防としてヨーグルトや甜茶などが効果があると言われていますが、実際には投薬と比べてどのぐらい効果があるのでしょうか。
櫻井:
ヨーグルトや甜茶と花粉症の薬を直接比較するという調査はあまりないと思うんですけれども、ヨーグルトや甜茶の成分と、プラセボという偽物のお薬との臨床試験での比較というところで調べた調査によりますと、ヨーグルトや甜茶の成分でも少し良くなるというような報告は見られています。ただ、一般的な実際に病院で使われるような薬に比べると、おそらく効果としては弱いんじゃないかと思います。
SNS
(まぶたに塗るタイプの治療薬について)まぶたに塗る? まぶたの上に? それともまぶたの裏に?
櫻井:
これは基本的には外側に塗るお薬でまぶたの上ですね。あとは涙袋のあたり、下にぐるっと1周塗るような形で使うお薬で、目の中に塗るお薬ではないです。
千葉県40代の女性
まだ花粉症になったことのない者です。そもそも花粉症にならない方法はありますか。毎年、周囲に花粉症の人が増えていっており、自分もいつ花粉症になるかおびえております。
櫻井:
なかなか決まったお薬でとかそういった方法はないんですけれども、最初の方にお話ししたように、コロナでマスクをつけていたことで、特に小学生の花粉症は減ったということがいわれてますので、花粉の多い日は、まだ花粉症になってない方もあんまり花粉を吸わないようにマスクをしていただくとか、あまり外に出ないというのは、症状を抑えたり遅らせたりする、発症を遅らせたりすることにつながる可能性があるかと思います。
――花粉症になっている人は、日ごろ予防を十分していると思うんですが、うっかり忘れがちなことって何かありますか。
櫻井:
そうですね、例えば花粉症シーズンでも、雨が降った日とか寒い日は花粉があまり飛ばなくなってきますので、そういったとき症状が軽くなるかもしれないんですけれども、またその後天気がよくなると花粉が飛ぶ可能性というのがありますので、やはりこの花粉のシーズンというのはしっかり薬を続けて、決められたように服用するということは大事だと思います。
――ありがとうございました。
【放送】
2025/03/05 「NHKジャーナル」
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