授かった愛娘 日本国籍持てず 同性婚「いつ認められるのか」
愛娘は日本で生まれたのに日本国籍を持てない。男女のカップルと同じように結婚できれば、当たり前に認められることだ。親になった二人は訴える。「同性婚が認められるのはいつなのか」
3月上旬。京都市の古民家で迎えてくれたのは、坂田麻智さん(46)と米国籍の坂田テレサさん(41)。2歳になった長女は愛犬と遊んだり、パズルを楽しんだりしている。「ママ、抱っこして」と話せるようになった。
二人は2008年に大阪で知り合い、すぐに交際が始まった。米国で同性婚が法制化された15年、テレサさんの出身地・オレゴン州で結婚式を挙げた。
米国で認められた結婚証明書を添え、京都市の区役所に婚姻届を提出した。ところが、パートナーとは認めてもらえない。「女性同士の婚姻届は不適法」という理由だった。19年、司法に救いを求めた。
同性カップルは法的な不利益が少なくない。法定相続人になることができず、配偶者が対象となる税制上の優遇措置は受けられない。
万が一、どちらかが事故に遭ったら、病院は連絡してくれるのだろうか。不安は数え切れない。そして、長女が生まれて目の当たりにした現実がある。
22年夏、友人から精子提供を受けてテレサさんが出産した。法律婚が認められていないことから、テレサさんがシングルマザーとして産んだことにされる。長女は米国籍で、日本国籍はない。
麻智さんは言う。「この子はきっと日本人として育つでしょう。けれど、住んだことのない米国の国籍を持ち、アイデンティティーが揺らぐかもしれない」。同性婚が認められていれば、そんな心配はしなくても済むはずなのに。
愛娘の出産を喜ぶ間もなく、ショックな現実があった。出生届の親の欄。麻智さんは自らの名前を書かせてもらえなかった。
長女の名前には、麻智さんの母の名を織り込んだ。心を込めて書いた出生届を区役所に持って行ったが、ローマ字で追記するように求められた。今でも行政から届く書類の名前は、ローマ字で書かれている。
今の制度は異性婚のみを想定しているとして「合憲」と判断した1審判決にがっかりした。判決は「将来、違憲となる可能性がある」とは述べたが、愛娘の成長を感じるにつれて焦りが募る。「それはいつなのか」
全国で起こされた訴訟では、四つの高裁が同性婚を認めないのは「違憲」としている。中でも、3月7日にあった名古屋高裁判決は「子の不利益」に踏み込んだ。「希望はある」と思えた。
大阪高裁で始まった2審の審理には、娘を抱いて臨んだ。家族が置かれた現実を法壇の裁判官に見てほしかったからだ。社会の中では少数かもしれない。それでも、この国で暮らしていく3人の家族なのだと訴えた裁判だった。【土田暁彦】