あの日以降、エースとは仲がグッと近くなった気がした。また、エースも鹵獲した海賊船を仮の船として改造して自分の船に仕上げた。
それは、デュースの後にエースの仲間になった情報屋のスカルや元教師のミハールに教えた航海術と操船術の訓練に使う為だった。
ネースが海兵を退職した時に貰った遊覧船に偽装した中型のバトルシップでも、エース達と共に教えてはいたので今でもそれなりに出来る方ではあった。
それでも、まだエース達はネースの助言に従い海賊を名乗っていない。それは、自分達でもまだまだ力不足を感じていたからだ。
だが、メラメラの実の能力の覚醒や覇気の習得もまだまだ未完成ではあるが着実に力を付けていた。
集まった仲間達もネースの覇王色耐久訓練によって、常に極限状態となり自身に眠る覇気が感じやすくなっている状態だ。彼等も力がつき始めていた。
今はグランドラインに入りウォーターセブンに向かう途中にお金と仲間を増やしている最中だ。
そろそろ、彼等ともお別れかなって思うこの頃。何だか別れが寂しく思ってしまう。いっそ海賊にって割り切れたらどれだけ楽だったとネースはため息を溢した。
ウォーターセブンに向かう途中に集まった仲間達もネースの扱きという戦闘訓練によって着実に力を付けていた。
グランドラインの後半の海と言う新世界では、覇気が使えるのと使えないとでは大きな差がある。
覇気について誰よりも考えてきたネースの覇気習得方法は彼等に変化を齎せていた。
まずは先にこの訓練をしているデュースは見聞色の覇気に覚醒して、エースに至っては武装色も目覚めつつある。
まだまだ覇気使いとしては未熟極まりない事であるが、覇気が使える様になって彼等の強さはグッと高まった。
更に古参メンバーになりつつあるミハールやスカル達みたいな所謂元非戦闘員達も、覇気の習得前段階としてそれぞれに見合った攻撃手段の確立に成功はしている。
その為に、基礎能力の向上は既に済ませている。後はこの後の訓練と戦闘経験と共にどれだけ仕上げられるかが、ネースの腕の見せ所と言った感じだ。
だが、それも心配はない。何故ならネースは約5年以上の間に教導艦長ゼファー先生の元で新人海兵の教育に関わっていた。
だから、どうすれば良い効率的に訓練が向上するのか十分過ぎるノウハウがあったので、後はそれを実戦形式にして行っていた。だからこその急成長とも言えるだろう。
「ここがウォーターセブンかっ……!?」
「ここで俺達の船を作って貰うぞー!」
「でもエース船長、お金は?」
「エースに預けておくと散財するからネースに預かっていて貰っているんだ。ネース、貯金は幾らだ?」
ネースはデュースからの質問を受けて、紙に保管していた貯金を数え出して全員に見せた。
「ゲイン」
懐から取り出した紙にキーワードを言うと紙に描かれていた大金が、ポンッと言う音と共にその封印が解かれて姿を現したのだった。
彼の頭の中ではやはりHunter × Hunterに毒されているのか、シールでカードに封印した物を解除する時のキーワードはこれしか無いと思ったのだった。
「これが、お前達が稼いだ1億4000万ベリーだ」
「1億4000万ベリーっ……!? 結構行ったな!!」
たった半年にも満たない数ヶ月でここまで貯金できた事にエースは純粋に喜んでいた。
「後半の海を渡ろうと思ったらそれだけじゃ足りないな。だから、これは俺からのお祝い金だ。
追加で3億ベリーある。これを使って次代の海賊王に相応しい良い船を作って貰いな」
「っ!? 良いのかっ!?」
突然降って湧いた様な大金にエースのみならずデュース達も動揺を隠しきれず、それでいて嬉しそうにソワソワしていた。
「良いとも。どうせ使わない金だ。それなら、友人の為に使った方が稼いだ意味もあるもんさ」
ネースの貯金はまだまだ全然ある。これは彼が海軍を辞めた後に稼いだ多分一生使わないお金だった。
前世であれば恵まれない国や地域に寄付する手もあったが、そんな事をすれば大金の情報を聞いた海賊共に荒らされる事間違いない為、ずっと保管していたお金だった。
「っ!? ありがとう! 色々、良くしてくれてありがとうな!」
「よせよ。俺とお前達の仲だろう? だが、船が出来るまでの少しの間、ミッチリ扱いてやる。全員、覚悟しておけよ?」
そして、ウォーターセブンでも腕利なガレーラカンパニーに4億で造船を頼み込んだエース達一向は、1ヶ月間ネースにミッチリ扱かれてから別れたのだった。
エースとの別れは簡単に済ませた。そうじゃ無いとお互いに辛いと思ったからだ。
ただ、エースや他の仲間達からは、いつでも歓迎していると熱い言葉を受けて少しだけうるっとした事は内緒にした。
それからと言うものニュース・クーの新聞では破竹の勢いでエースが率いるスペード海賊団が有名になっていた。
寂しい気持ちもあれど、覇気の基礎を学んだ彼等の腕前ならそう簡単には死なないだろうと誇らしさも感じていた。
そんなネースはと言うととある島に観光で来ていた。何でもとても綺麗な国を謳い数年に一度しか咲かない花が咲いたらしい。
しかし、来てみて分かったがこの国は海軍と海賊が凄く悪い意味で仲が良い程に腐った国だった様だ。
本当なら関わる気がなかったネースでさえ吐き気を催す程に腐っており、久しぶりにプライベート用の電伝虫を使いゼファー先生へ状況の説明をして海兵時代の様に応援要請をしたくらいだった。
だけど、気が付けばあまりの無法っぷりを体現した様な海兵が、自分達の国を変えようと立ち上がった親子を撃ち殺そうとしていたのだ。
それは、嘗て守ることさえ叶わなかった故郷ヴァランスと自分の家族を想起させる光景で、気が付けば海兵や海賊と手を組む国と対峙する形になっていた。
「キ、貴様ッ! 貴族である私と海兵に楯突く事がどう言う意味か分かっているのかっ……!?」
ネースの目の前には海軍と海賊、それに国軍を指揮しているであろう貴族様が居て、当の本人は敵対しているネースに激怒していた。
「んなの、知っているに決まってんだろうが……! それを加味しなくても俺の正義がこの光景を許せないんだよっ……!!
お前等海兵こそ、絶対正義はどうした!? その制服やコートには先人達の血と汗と涙が滲んでいるんだぞ!
それを理解した上でこの行動か!? これがお前達が掲げる正義か!? どうなんだ! 答えろ!!」
ネースは許せなかった。これでも1人の海兵として、海軍本部の少将として海兵の制服やコートの重さについて理解していた。
海兵の制服やコートはただの衣服ではない。絶対正義を掲げて民が安心して暮らせる様に多くの先人達が築き上げたモノの上に成り立っている。
それに袖を通すと言う事は散って逝った先人達の想いを背負い込むと言う事に他ならない。だからこそ、民を傷付ける目の前の海兵達をネースは許す事が出来なかった。
「……そんなもの、何の金にもなり得ないゴミクズだ。唾棄すべき古い考えだ。
これはビジネスだ。お前は我々海軍、引いては世界政府に楯突いた無法者だ。覚悟しろよ、犯罪者が。ヒッヒッヒ……」
「ここまで腐っていたとはな……」
「オジちゃん……」
「俺は大丈夫さ。お父さんの元へ行っていなさい」
親を殺されそうになった子供が擦り寄って来て心配そうな表情を見せたのでネースは笑って頭を撫でた。
「うん、分かった」
ネースの気持ちが伝わったのか子供は地面に伏した父親の元に駆け寄り、2人は物陰に隠れる様に逃げ出した。それと入れ替わる様に金髪の青年がネースに駆け寄った。
「加勢するよ」
「……今は君達を問いはしない。だけど、助かる。出来れば戦えない人達を守ってやってくれ。俺は良い」
金髪の青年の他にも武器を持った一般人には見えない者達が居たが、ネースは彼等に向けて笑って答えた。
「1人でだと!? 舐めやがってっ!? 我等海軍の恐ろしさを教えてやれ!!」
「海軍だと? お前達がそれを口にするんじゃねぇ!!」
怒りに任せた覇王色の覇気がネースを襲う海兵と海賊達へ放たれる。気の弱い海兵や国軍、海賊達は軒並み気を失い倒れていった。
「な、何がっ……!?」
「お、お前っ……!? 一体、何者だっ……!!」
「そう言えば名乗って無かったな。俺は元海軍本部少将を務めていたガリヴァード・ネースだ!
お前達に覚えて貰えなくて結構だが、海軍の名を使って本来守るべき民を虐げるお前達をぶっ飛ばしに来た者だ!!」
ネースは笑みを深めてから天鬼雨に武装色を纏わせた一撃を放った。それだけで海軍と海賊、国軍の連合は一気に崩れて、そのままネースは王の元まで足を運んだのだった。
ご愛読ありがとうございました。
いつだったかの活動報告でも宣言したと思いますが…
4月に入った所でお気に入りユーザーの方のみ閲覧可能な限定公開に戻します。
一応、高評価してくれた方や普通にお気に入りだけへ登録してくれた方など所謂アンチではない方は、基本こちらでも確認次第お気に入りユーザー登録をしているつもりではあります。
しかし、見逃していたり読んでいる途中だった時に限定になってしまったみたいな事が起きていたりしているかも知れません。
そう言うお互いにミスがない様にする為、ちょっと早いですが3月の投稿を今日にした次第です。
なるべく4/1の0時丁度に限定公開に変更したいのですが、当日の予定次第では変更が遅れる可能性もあるので余裕を持つ意味も込めて今日にした感じです。
直近の活動報告は確認していますが、過去のモノまで全ては見ていないのでお気に入りユーザーの登録依頼などがありましたら、直近の活動報告によろしくお願い致します。
あと、本当に後書きになってしまうのですが、今読み返すと意図していないけどまるで打ち切り漫画のラストみたいな終わり方になってしまった…。
一応、まだまだ4月からも続きますのでご安心下さい。