韓国サムスン電子、韓CEOが死去 家電・スマホを統括
【ソウル=松浦奈美】韓国サムスン電子は25日、韓宗熙(ハン・ジョンヒ)最高経営責任者(CEO)兼副会長が死去したと発表した。家電やテレビ、スマートフォンなど消費者向け製品部門のトップとして2022年から現職を務めていた。技術力の強化を目的に共同CEOを置く「2トップ体制」を19日に始動させたばかりだった。
同社によると、業務時間外に心停止になり入院治療を受けたが25日に死去したという。63歳だった。社員らは一様に「突然の訃報で驚いている」と声を落とす。
韓氏はサムスン創業家の3代目である李在鎔(イ・ジェヨン)会長に次ぎ、社内では実質的にはナンバー2の立場にあった。19日には定時株主総会でメインスピーカーとして登壇したほか、26日にはソウルで家電新製品の発表会が予定されていた。
19日には不振が続く主力の半導体部門のテコ入れのため、CEO兼副会長を2人とする経営体制に移行していた。新任CEO兼副会長の全永鉉(ジョン・ヨンヒョン)氏が半導体関連の経営判断を担い、韓氏はスマホや家電などに集中する方針だった。
公開資料によると、25日時点で同社CEO兼副会長は全氏の1人となった。韓氏の死去に伴う後任人事などは未定という。
有進投資証券の李承禹(イ・スンウ)リサーチセンター長は、サムスンの業績立て直しには家電より半導体部門の重要性が高まっているとして、「全氏がCEOに就任したことで、(韓氏の死去による)短期的な影響は抑えられた」と話す。
韓氏は近年、人工知能(AI)の活用で電機製品の付加価値を上げる基盤づくりに注力した。台頭する中国メーカーへの対抗として高価格路線を重視し、24年にはライバルの米アップル社に先んじて、世界で初めてAIを搭載したスマホ機種を発売した。
1月に米ラスベガスで開かれたテクノロジー見本市「CES」では、AIを使って個人の生活習慣に適した機能を提供する家電をさらに増やすと話していた。社外でも韓国スマートホーム産業協会の会長を務めるなど、韓国の家電業界にも影響力を持った。
韓氏はサムスンのテレビ事業を世界首位に成長させた立役者として知られる。韓国の仁荷大電子工学科を卒業して1988年にサムスンに入社、映像ディスプレー畑を歩んだ。
サムスンによると、同社のテレビは売上高ベースで24年まで19年連続で世界1位の座にある。韓氏が技術やマーケティングで主導的な役割を果たして液晶や有機ELの製品ラインアップを増やし、1990〜2000年代にかけて強豪だった日本メーカーから市場を奪った。