「うーん、ここは…」
目が覚めると地面が冷たかった。洞窟のような薄暗い場所で寝た覚えはない。そもそもワタシは昨日、ゲームをしながら机に突っ伏して寝てしまったはず。ならここはどこなんだろう?
洞窟であることは確かだ。だとしてもこの光る石は?夜光石というやつなのだろうか?洞窟であるはずなのにこれらのおかげでとても見やすい。こんな明るさじゃ自分の毛穴まで見えちゃいそうだ。なんて思いながら自分の腕を見ると、それは自分の知っている腕ではなかった。
まず色が違う。緑だ。それも鮮やかな。
そして腕が短い。いや、体が小さくなっていると言った方が正しいのが知れない。
さっきから当たっている後尾の感覚は気のせいではなく、本当に尻尾があった。力を入れると少しは動かせる。力を抜くと勝手に巻いてくれるので狭い道でも問題なさそうだ。
ここまで来れば流石に何が起こっているのか理解できた。
とりあえずワタシは転生したのだろう。しかも人外にだ。あまりにも人とは思えないパーツが多すぎる。そもそも尻尾がある時点で人間じゃない。
そして何に転生したのかも予想がつく。特にヒントとなったのはお腹の腹巻きのような赤い模様だ。これを見た瞬間ピンときた。
その正体はなにか。たぶんきっとメイビーだけどカクレオンなのだろう。
カクレオン。ポケットモンスター略してポケモンに登場する。本編ではあまり目立つことはない。ルビーで見えない壁になっていたことぐらいだ。
おそらくみんなに残ってるカクレオンの記憶は不思議のダンジョンのカクレオン商店のカクレオンだろう。
街中では商人NPCとして色々なものの販売や買い取りをしてくれる。ただの善良なNPCだ。本当に怖いのはダンジョンの中にいる時のカクレオン。決して野生湧きはしない。ダンジョン内で商店を開いている時が1番怖いのだ。
普通に買い物できるが、お金がない状態でアイテムを拾って、商店を出ようとすると目の前に現れる。そこで金があろうと無かろうといいえを選択すると「だいじなしなものがぁ~! はやくつかまえてぇ~!」と言いながらカンストを超えたステータスで殴ってくるのだ。
ぱっと見数に有利があるように思えるが、カクレオンは増える。無限に増え続けてラスボスよりも強い大軍が襲ってくる光景は全プレイヤーにトラウマを植え付けたほど。
そんなカクレオンにワタシは転生してしまったらしい。
ここがどちらの世界なのかはわからない。どの地方に生まれたかも謎だ。
少しでも情報を集めるために歩いていると人を見つける。金属製の装備を来て、金属製の武器を持っている姿はポケットモンスターよりもモンスターハンターとかその辺に近しいように感じた。
可能性としてはモンスターボールが開発される前。ヒスイ地方のようにポケモンは怖い生き物として思われている時代だろうか?それなら彼らが剣を持っているのにも納得だ。ワタシだって素手でグラエナに襲われたらと考えると怖すぎて昼しか眠れない。
「今日はそこそこ稼げたし、ダンジョン出たら何か食いに行くか」
「そうだな。神様連れてかないとうるさそうだけど」
「連れてってもうるさいだろ」
「違いねえ」
そこそこ距離が離れているというのに会話内容が鮮明に聞こえた。これがカクレオンの聴力なのだろう。人間よりも数倍上だ。
それにしても彼らの言葉が気になる。知らないはずなのに何故か意味がわかるし喋ろうと思えば喋れるだろう。これが転生パワーというご都合主義。便利なので使わせてもらいます。
男たちは階段を登っていく。
ダンジョンと言っていたからには階層があって、帰ると言っていたし上に入り口がある洞窟タイプのダンジョンなのだろう。そしてダンジョンと言うからにはワタシの役割というか使命は定まった。
これは商店をするしかない。
さっそく……レベル上げだ。たぶん今のワタシはレベル1。吹けば飛ばされるチリみたいなものだ。それにポケダンのカクレオンはイかれたステータスで相手を殴ることと、分身か分裂か仲間呼びかは知らないが増えること以外には出来ることはない。
その日からワタシの修行は始まった。
ここはポケモンのような優しい世界?ではなかった。人とモンスターが殺し合うのが当たり前の世界だ。ワタシの場合は
そんな日が続いているとある日、自分の影がモンスターの背後を取り、隙を作った。
その隙を見逃さなかったワタシは見事そのドラクエに出てきそうな影のモンスターを倒した。
ワタシはこの攻撃に見覚えがあった。ポケモン本編でもポケダンでもだ。
これは『かげうち』ゴーストタイプの先制技の一つで、カクレオンがレベルアップで覚える技の一つでもある。
これで確信した。
この世界のモンスターを倒しても経験値は取得できると。
モンスターと戦っていて身体能力の向上を感じていたが、それが筋肉の成長などの可能性があったためレベルアップできているか疑問であったがちゃんと上がってくれて一安心だ。
それからワタシはさらに修行を続けた。
人を避けながらモンスターと戦い、戦い、戦い、たまに人を助け、戦い、戦い、戦い、戦い、たまに商店用の絨毯作り、戦い、戦い、戦い、たまに走り込みなどの基礎練、戦い、戦い、戦い、たまにアイテム制作技術を磨き、戦い、戦い、戦った。
あれから何日経ったのかわからない。わからないが成果はあった。
商店を開ける準備が終わった頃には、ワタシの手に…
くくく、この力で人類に……絶望からの救済と一生残るトラウマを植え付けるのだ!
まあ、商品を盗んだ人に限るけどね。
オマケ カクレオンによる不思議だまの作り方
モンスターが落とす石を用意します。
その石を手のひらにいっぱい乗せます。小さければ数を用意して、大きければ切ってから乗せてください。
そして伝説のポケモンを超えるステータスで圧縮します。
はい、完成です。
なお、原理はわからないし作られる不思議だまはランダム(どのモンスターが落とした石かによって何が作れるかの傾向は存在する)である。