日常にもう少し彩りを添えてみたい。そんなとき、着物を取り入れてみてはいかがでしょうか。
私は今年、娘の入学式のために自分で着物を着てみました。思いどおりにいかない部分もありましたが、周りから褒められたこともあり、気分も上がって楽しく過ごすことができました。
着物はルールや着方が難しい印象がありますが、うまく着こなせば行事ばかりでなく、観劇や外食のときなどのおしゃれ着として使え、楽しみは広がります。今回は、私なりの着物の楽しみ方や、着物を楽に着る工夫などについてご紹介していきます。
- SNS、サブカルを通じジワリ人気の着物
- 着物好きのルーツは、七五三で着た着物を「褒められたこと」
- どうやって着る?着物で戸惑う3つのこと
- その1.どうやって着ればいい?
- その2.TPOにあわせてどのような着物を着ればいいの?
- その3. 季節によってどういう着物を着る?
- コンサートや街歩き 着物を普段着として楽しむ日常
- 観劇やコンサート、パーティー
- 和装の街歩きイベント、着物参加のイベント
- レンタル着物を利用して一歩踏み出そう
- 私がたどり着いた「着物を楽に着る」工夫とは?
- 着物に必要なメンテナンスとちょっとした心遣い
- 着物は湿気と日光が大敵。年1回は陰干しをする
- 汗をかいた後やシーズン終わりにはクリーニング
- 着物を着る日のマイ・ルールをつくる
- 着付けの環境を整えよう
- 身近に着物を直してくれる人を持とう
- 着物を着て、気持ちよく過ごそう
SNS、サブカルを通じジワリ人気の着物
着物(和服)のルーツは奈良時代にまでさかのぼりますが、現代の着物のような形になったのは平安時代。染め、織り、刺繍などの職人技により、日本の四季折々の美しさや日本人の美意識を表現した柄が多く、今ではさまざまな柄を楽しめるようになっています。
洋服と違って体形の違いに左右されないため、年齢による体形の変化にも対応しやすく、正しく手入れすれば、何代にもわたり受け継いだ着物を着ることができます。最近は、インターネットなどで昔の質の良い着物が手に入りやすくなったことや、アニメ、サブカルチャー、SNSなどでも着物の話題が取り上げられ若者の間で、関心が高まっています。
着物好きのルーツは、七五三で着た着物を「褒められたこと」
私が初めて着物を着たのは3歳の時。今は亡き祖母が、七五三のために仕立ててくれた着物を着ると、周囲が「かわいい」と褒めてくれたそうです。幼い頃でしたが、心のどこかでそのときのうれしさを覚えていて、今の私の“着物好き”に結びついているようです。
今も祖母が縫ってくれた着物が実家にたくさんあります。母も私もそれぞれ着付けを習ったことがあるものの、実際は親戚や友人の結婚式で着るくらいしか機会はなく、「祖母から受け継いだ着物がもったいない」と感じることもしばしばです。着付けを習っていても、自分で着る機会を作らなければいずれ着られなくなります。「普段の生活でも着物を着て楽しみたい」というのは私の正直かつ切実な気持ちです。
どうやって着る?着物で戸惑う3つのこと
このように着物への愛着が強い私ですが、季節に合った着用ルールなどもあり、着物で戸惑うことも少なくありません。以下、理由をまとめてみました。
その1.どうやって着ればいい?
やはり最初に戸惑うのが、着物を「どうやって着ればいいのか?」ということだと思います。身に着ける物も多く、その順番や着け方……。洋服のようにさっと着られないことが、最初の大きなハードルと言えるでしょう。着物のレンタル店や美容院で着付けを頼むという方法もありますが、今回の目的である自分で「楽に着る」という点から、無料動画や無料体験できる着付け教室、さらにオンライン着付け教室も増えています。
多くの着付け教室が、体験用として無料または低料金設定で6~20回程度のコースを設けています。「着物の販売や勧誘があるのでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、教室により異なりますので、体験のときに確認してみましょう。ある程度の月謝を払って、勧誘がまったくないところに通うというのも一案です。
その2.TPOにあわせてどのような着物を着ればいいの?
着物選びで迷うのが、TPOに合わせて「どういった着物を着ればよいのか?」ということだと思います。友人同士のカジュアルな食事会、子どもの入学式や卒業式、披露宴には?着付けの次に来る第2のハードルが着物選びです。
どこにどのように着ていくか?は着物の「格」で決まります。格とは、織り方や柄、紋がいくつ付いているのかなどにより見分けますが、最近は柄が多様化しており見分けづらいときもあります。着物の種類やTPOの判断がつかないときは、着物に詳しい人、呉服店、年配の方などにアドバイスを求めましょう。
以下、着物の格とTPOについての簡単な基準です。
友人として披露宴に出席する場合
礼装である訪問着、準礼装である付け下げ、一つ紋の色無地など。黒留袖、色留袖は親族用です。
子どもの入学式・卒業式
訪問着、付け下げ、色無地など。
おしゃれ着として観劇や会食に行く場合
付け下げ小紋、小紋友禅、無地の訪問着、無地の紬(つむぎ)、お召し、更紗(さらさ)、絞り
日常着、ちょっとした外出
紬、絣(かすり)、黄八丈、ウール、銘仙(めいせん)、木綿、浴衣
*高価な紬や絣でも婚礼やお茶会には不適格とみなされます。
着物を楽しむ人たちは、このルール内で帯などの小物とのとりあわせを工夫し、好みを入れて楽しむわけですが、初心者はびくびくしますよね。まずは、入学式などの準礼装用と、普段着用の区別がつけばよいでしょう。
その3. 季節によってどういう着物を着る?
季節は主に2種類と考えてよいでしょう。
6月と9月は単衣(ひとえ)、7・8月は薄物、10~5月は袷(あわせ)という3つの区分がありますが、年々温暖化の傾向が強くなってきている日本で、真夏に一般人が着物を着る機会は少ないため、単衣と袷を中心に考えてもよさそうです。
特に肌襦袢、長襦袢と重ねて着る着物は、洋服よりも暑く感じます。そこで最近は、袷の時期を短くし、夏仕様の単衣をもっと長く着てもいいのではという考え方も出てきています。こうして、着物というベースは変わらずとも、時代や気候とともに着方は変化してきています。
コンサートや街歩き 着物を普段着として楽しむ日常
着物を着る楽しみの1つは「どこに着ていくか」です。おしゃれであり、自己満足であり、コスプレ的要素もあります。世の中がほとんど洋服ばかりの中で、着物を着ることにより「周りの注目を集める」からこそ、がんばって着るかいもあります。
少し考えただけでも、入学式・卒業式、お茶など「和」の習い事、食事会以外にも着物を着る機会が意外にたくさんあります。
観劇やコンサート、パーティー
観劇というと、歌舞伎や能などをイメージしますが、他の舞台や音楽会にも着物はおすすめです。
どのような着物を着ていけばよいかは既にご紹介しましたので、そちらを参考にしていただき、その上で、中古の着物と帯を組み合わせるなど、自分なりの組み合わせで楽しんでみるのもよいと思います。
私もいつか、大ファンのピアニストのコンサートに着物で行きたいと思っています。着物を着ていくことで、ファンとしての本気度が示すことができるかもしれません。
和装の街歩きイベント、着物参加のイベント
着付け教室や、SNS上のサロンなどが開催する着物で街歩きをするサークルやイベントに参加するのも楽しいです。私はたまに読書会を企画してますが、どうしても着物を着る機会を作りたくて、「今回の作品の舞台である『昭和』をドレスコードにしよう」と参加者に提案したことがあります。
着物が昭和を体現するかは分かりませんが、こうした機会をつくることで、普段の生活の中で着物を楽しむことができます。着物を着るのは訓練のようなものでもあり、着ないと着られなくなります。機会を見つけて、どんどん着ていただきたいです。
レンタル着物を利用して一歩踏み出そう
着物の魅力に惹かれていても、「着物を持っていないので難しい」とあきらめている方はいらっしゃいませんか。そのような方は、レンタル着物で一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
皆さんは、着物の写真を投稿しているSNSを見たことありませんか。ここ数年、「友達と着物を着て街歩きしてみたい」、「着物ですてきなプロフィール写真を撮りたい」という方が増えています。東京・日本橋や浅草のように町単位で浴衣街歩きをバックアップするところでは、卒業旅行や修学旅行の思い出にと、着物や浴衣のレンタルや学生向けに割引料金を設定しているお店もあります。
このように最近、レンタル着物店が増えています。着物一式のレンタルと着付けがセットになっているため、普段着でお店に行けば、お気に入りの着物姿になることができ、そのまま街歩き。こんなセットが人気です。準備も後片付けも不要、レンタル料金込みの着付け+お散歩がセットになっていて、追加料金を払えば、へアメイクがついていたり、着物の格(グレード)を上げることもできます。
主に、外国人観光客の多い京都、新宿、原宿、銀座、浅草、神楽坂など観光地にあります。原宿のあるお店では、レンタル料金込み着付け+シンプルヘアメイク+17時までの返却で、4000円程度から(2022年9月現在)。お手軽に体験できるので、日本人、特に若い人の利用も増えています。
私がたどり着いた「着物を楽に着る」工夫とは?
さて、ここまでは気軽に着物を楽しめる方法を中心にお話してきましたが、皆さんの中には、既にご自身で着物を着ているという方も少なくないかと思います。私も自分で着付けする派です。
私は長年、着物を着る際の準備や後片付けの大変さには苦労してきました。最近でこそ、効率的に着物を着る工夫がたくさん取り入れられてきましたが、そんな中で、私自身の経験を通して得た、「楽に着られる工夫」の一端をご紹介します。
着物を着る手順別に、楽に着るための方法を考えてみました。
1.小物の確認・足袋をはく
・紐をゴム製に変えれば、結ぶ手間が省け、後から着崩れを直しやすいです。
・仮どめや衿を挟んだりするために、小さい洗濯ばさみがあると便利です。
2.肌襦袢を着る
従来の上下2枚に分かれているタイプではなく、上下一体型の肌襦袢にします。
3.長襦袢を着る
少し高度な技ですが、最初に着る肌襦袢に半衿(本来は長襦袢の衿)を取り付けられる通称「うそつき衿」を使って、長襦袢を着ずに済ませる方法があります。長襦袢の袖に見える「うそつき袖」も市販されています。長襦袢を省くことで素早く、涼しく着られます。
4.着物を着る
・お尻に入れる補正以外は、補正にこだわりすぎないこと。補正は、体形の凹凸を隠すためですが、はじめのうちはあまり神経質にならなくてもいいでしょう。
・さらに美しい仕上がりを目指す人には、首の後ろのカーブの部分を開けて衣紋を抜くための衿抜きや、衿元の着崩れ防止のためのコーリンベルトという着物用のベルト、などがあります。
5.帯を結ぶ、帯締め・帯揚げを仕上げる
・結ばなくてよいワンタッチ作り帯もあります。この後の写真でご覧ください。
私が入学式で着物を着たときは、補正を入れるのを忘れてしまったうえ、帯の立体感を出すための帯枕の位置が低くて帯がぐにゃっとなってしまいました。その後、1回完結の着付け教室にいくと「お尻の補正は必ず入れましょう、帯の位置が安定するので」とコツや理由を教えてもらえたので、次からは忘れません。
ここだけはしっかりというポイントを大切にしながら、便利グッズや楽な着方を取り入れるのがよいでしょう。
着物に必要なメンテナンスとちょっとした心遣い
最後に「いつでも着物を楽しむためのメンテナンス」について少し触れておきます。いざ出してみたらとても着られない…では遅いので、着物の保管方法をご紹介しましょう。
着物は湿気と日光が大敵。年1回は陰干しをする
着物の保管に、湿気と日光は大敵です。特に湿気に弱いので陰干しが必要です。桐ダンスが理想ですが、自宅に置くとスペースをとりますので、押し入れなどを利用しましょう。その際、使うのは洋服用よりも、着物用ハンガーがよいでしょう。突っ張り棒と普通のハンガーを組み合わせて手作りする方もいるそうです。
プラスチックの衣装ケースでも大丈夫です。その際は、たとう紙や空気をとおす不織布などで着物を包みます。着物は保管場所の大きさに応じて畳めます。日光と多湿の場所を避けて保管し、できれば年1回陰干ししてあげると着物を傷めにくいです。
着物や長襦袢の畳み方は独特ですが、折跡がついているのでコツを覚えればその折跡をたどれます。浴衣と着物の畳み方は同じです。
汗をかいた後やシーズン終わりにはクリーニング
汗をかいた後やシーズンの終わりにはクリーニングに出しましょう。着物は、シミなどがつき色が変わると元に戻すのが大変です。1着3,000円くらいです。クリーニングから戻ってきたらビニールの袋から出して、たとう紙や不織布に包んで保管しましょう。
着物を着る日のマイ・ルールをつくる
「いつでも着られるように」メンテナンスを行うという趣旨とは少し異なりますが、着物を着る条件についてマイ・ルールを決めるのもよいかもしれません。例えば、「雨の日は着ない」、「夏は着ない」。着物用の雨合羽や雨用の履物もありますが、自分が苦手なことは避ける、と決めておくと気が楽です。
着付けの環境を整えよう
着付けには、ご自宅に大きな姿見があると見やすいですね。そして、やはり和室が快適です。フローリングやじゅうたんの場合は、床に着物用衣装敷紙を敷くとやりやすいです。着物用衣装敷紙は数百円で入手でき、着物保管にも使えます。
身近に着物を直してくれる人を持とう
着物を着ると、周りに褒められる、気分が上がる、所作が美しくなるなどいいことがたくさんあります。どうせなら、着物を着て気持ち良く過ごせれば最高です。そんなとき、周りに着物をちょっと直してくれる人がいると非常に助かります。
背中心をあわせる、衣紋を抜く、帯を押さえてもらう、おはしょりを直すなど、自分ではなかなか難しいことがあります。年に数回着物を着る友人は、お子さんやご主人に着つけのワンポイントサポートを頼み、「背中心をあわせるのだけ手伝って!」と毎回お願いしているそうです。
着物を着て、気持ちよく過ごそう
私は一時期、中国で生活する機会があったのですが、留学生によるパーティーでは、スペイン人はドレスでフラメンコを踊り、中国人も民族舞踊を披露します。しかし、日本人の私は着物を着ることも踊ることもありませんでした。茶道や華道、着付けをかじっていたにも関わらずこの有り様で意気消沈。このような経験から「着物をひとりで着られるようになりたい」、「ここぞといとき時は簡単なお茶のお点前くらいは披露したい」」と少しずつ学び直すようになりました。
ぜひ皆さんも、普段から着物を着て自由におでかけしてみてください。もちろん特別なイベントでも映えること間違いなしです。まずは気軽に浴衣からチャレンジしてみるのもいいかもしれません。