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フジテレビ第三者委員会調査の焦点──8つの問題はどれほど解明されるのか?

松谷創一郎ジャーナリスト
フリー素材を使って筆者作成。

 フジテレビの第三者委員会の調査結果が、まもなく発表されると見られる。当初から3月末を予定していたので、今週末(28日)か来週頭(31日)あたりだと予想される。

 この問題の発端は元タレントの中居正広氏が2023年6月に起こしたとされるトラブルだ。だがフジテレビは、現在まで「当該社員は会の設定を含め一切関与していない」と全面否定の姿勢を変えていない。

 その一方で、1月15日の『週刊文春』の続報では、現役と思しきフジテレビの女性アナウンサーからの新たな告発が報じられるなど、疑惑はひとつに限ったことではない。そのほかにも『文春』は、女性社員やアナウンサーを「接待要員」として扱う企業文化の存在や、被害報告に対する不適切な対応、さらには経営トップを含む組織ぐるみの関与の疑惑を指摘している。

 今回、発表される予定の調査報告書では、以下の8つが主な注目点と言えるだろう。発表前にポイントを確認しておこう。

1. 第三者委員会の構成と調査の網羅性

 今回の第三者委員会は竹内朗弁護士を委員長とし、他に五味祐子氏、寺田昌弘氏の計3名の弁護士が委員となっている。フジテレビが彼らに委嘱した調査事項は以下だ。

  1. 本事案への当社及びフジ・メディア・ホールディングスの関わり
  2. 本事案と類似する事案の有無
  3. 当社が本事案を認識してから現在までの当社及びフジ・メディア・ホールディングスの事後対応
  4. 当社及びフジ・メディア・ホールディングスの内部統制・グループガバナンス・人権への取組み
  5. 判明した問題に関する原因分析、再発防止に向けた提言
  6. その他第三者委員会が必要と認めた事項
    (フジテレビ「第三者委員会の設置について」2025年1月23日/PDF)

 調査範囲は一定の広がりを持つが、そこで気になるのは約2ヶ月という調査期間の短さだ。この短期間で十分な調査が可能か疑問が残る。継続調査の可能性も含めて確認が必要だ。

2025年1月27日、フジテレビの記者会見
2025年1月27日、フジテレビの記者会見写真:REX/アフロ

2. 中居氏トラブルの実態解明

 中居氏と女性との間で実際に何が起きたのかを明らかにすることは、この調査の出発点となる。トラブルは2023年6月に、中居氏の自宅で発生したとされる。

 注目すべきはこの会食の設定過程だ。『文春』の初報と続報では、微妙な表現の違いがある。昨年12月25日の初報では「あの日、X子(※女性)は中居さん、(※フジテレビの)A氏を含めた大人数で食事をしようと誘われていました」とされていたが、今年1月7日の続報では「あの日、X子は中居さんからA氏を含めた大人数で食事をしようと誘われていました」と明確に中居氏からの誘いと表現されている(このニュアンスの変化は、その後問題となったとおりだ)。さらに、当日に中居氏から「今日は大雨でみんな来られなくなってしまったけど、2人でもいい?」というメッセージが届いたとされる。

 この点について、中居氏と女性側の説明には食い違いが見られる。中居氏側は「フジの関係者は本件とは無関係」としているが、女性側は「Aさんがセッティングしている会の"延長"」と捉えている。これらすべての情報を総合すれば、中居氏が嘘をついて女性を誘い出したことになる。果たしてそれが事実なのか。

 また、トラブルの内容とその程度についても解明が必要だ。中居氏は「暴力は一切ない」と主張したが、女性の被害程度や、示談とその経緯も可能な範囲で明らかにすべきだろう。

 もちろんプライバシーに関わることも多いため公表の範囲に慎重な判断が求められる。この点は、決して調査報告書で「全容解明」などを報道陣が期待するべきではなく、大枠の事実確認があれば良いと考えられる。1月27日の記者会見では、高齢のジャーナリスト複数が女性のプライバシーに配慮しない質問をして問題視されたが、今回も会見等が行われるのであればその点について注意が必要だ。

3. 「接待文化」の実態解明

 1月15日の『週刊文春』の報道によれば、フジテレビでは編成部長・A氏によるグランドハイアット東京での「ハイアット飲み」が常態化していたとされる。この飲み会では、A氏の部下を通じて女性社員が呼び出され、事前の集合場所を知らされないまま、当日になってホテルのスイートルームに案内されるケースもあったという。

 また、中居氏のトラブルの被害者とされる女性は「Aさんがセッティングしている会の"延長"」と認識していたと証言しており、現役と思しき女性アナウンサーも同様の告発をしている。さらに、港浩一前社長自身が常務時代に「港会」と呼ばれる会合を開いており、多いときには8人の女性アナウンサーが集められていたという。

 第三者委員会は、こうした「接待文化」が実際に存在したのか、存在していたとすればいつから、どのように形成されたのかを明らかにする必要がある。また、この文化がフジテレビの組織全体の問題なのか、特定の部署や個人の逸脱行為なのか、そうした判断も重要だ。

 同時に確認が必要なのは、こうした「接待文化」があるとされるなら、それはどのような範囲でどの程度行われていたかも解明が必要だ。要は、それがタレントに対してだけなのか、あるいは芸能プロダクションや広告代理店などに対しても行われていたのか、そうした確認もする必要がある。

2025年1月27日、フジテレビ記者会見における港浩一(前)社長
2025年1月27日、フジテレビ記者会見における港浩一(前)社長写真:ロイター/アフロ

4. 組織的隠蔽疑惑の真相

 『週刊文春』の報道によれば、フジテレビはトラブルのあった2023年6月の段階で、すでに女性から具体的な被害報告を受けていたという。3人の幹部まで報告が上がり、医師を交えた話し合いまで持たれていたという。

 にもかかわらず、フジテレビは1年半もの間、中居氏の番組出演を継続し、『プロ野球珍プレー好プレー大賞』など複数の特番も放送していた。さらに問題なのは、フジテレビが中居氏への聞き取り調査も実施していなかったとの報道だ。

 第三者委員会は、なぜフジテレビは被害報告の段階でしっかりとした調査を開始せず、なぜ『文春』報道まで通常の番組制作を続け、そしてなぜあのタイミングで放送休止を決定したのか──これらの判断の根拠を解明すべきだ。

 さらに、トラブル発生から『文春』の報道までの間、どのような情報共有と意思決定がなされたのかも明らかにされなければならない。

フジテレビ『中居正広の珍プレー好プレー大賞2024』オフィシャルサイト。
フジテレビ『中居正広の珍プレー好プレー大賞2024』オフィシャルサイト。

5. フジテレビの「ユルい」組織文化

 多くはないものの30年近くフジテレビとの仕事で筆者が感じてきた同局の社風は、「自由」と「個人主義」だ。外部の人も含め、スタッフはかなり自由に番組独自の判断をする傾向が感じられる。

 これは、現在フジテレビに向けられている批判とも矛盾しない。要はガバナンスがあまり機能していない結果、個々が自由に動いている可能性がある。組織としてちゃんと社員をグリップできていない感じがある。良くも悪くも「ユルい」。

 その悪い側面として「ユルさ」が今回の問題の背景にあるとすれば、第三者委員会はフジテレビのガバナンス体制の機能不全について厳しく指摘することになるだろう。また、こうした組織文化がどのように形成され、どのような影響を及ぼしてきたのかについても分析が必要だ。

6. 女性役員比率とジェンダー問題

 筆者の今年2月の調査では、在京キー局とその持株会社、そしてNHK(理事以上)を含めた女性役員比率の平均は12.8%となった。日本の上場企業の平均は13.4%だが(内閣府男女共同参画局)、テレビ局と持株会社がともにそれを超えているのは、NHKとTBS・TBSHDのみで、日テレ・日テレHDとフジテレビ・フジMHDは、ともに13.4%を下回る結果だった。25%に達していたのはNHKのみだ。

筆者作成。
筆者作成。

 日本を除くG7の平均は38.8%、OECD諸国の平均は29.6%であり、日本のテレビ業界の女性役員比率の低さは際立っている(女性活躍と経済成長の好循環実現に向けた検討会、2023年/PDF)。


 こうした状況を受け、民放労連は2月からテレビ局の女性役員比率を30%にするよう求める署名活動を開始した(朝日新聞2025年3月11日)。女性役員登用の効用としてもっとも期待されるのは、放送局に根強く残るホモソーシャル(男性同士の社会的結合)文化の打破だ。コンテンツ制作にとって、このようなホモソーシャルやそれにともなう上下関係は創造性を阻害する害悪でしかない。

 「上司-部下」の関係は、単に役割の違いでしかない。しかし日本ではそれが「親分-子分」として解釈されがちで、上意下達の関係性に陥りやすい。この構造がハラスメントを生み出す土壌になっている可能性もある。

 第三者委員会は、こうした構造的な問題と今回の事案との関連性についても分析すべきだろう。とくに重要なのは、女性アナウンサーをはじめとする女性社員が決定権を持たない中で「接待要員」として扱われてきた可能性についての検証と、経営意思決定への女性の参画が組織文化をどう変えうるかという展望にある。

7. 再発防止策と組織改革

 第三者委員会の調査結果と提言を受けて、フジテレビはどのような再発防止策を講じるのか。その実効性が問われることになる。

 港浩一社長と嘉納修治会長が辞任し、清水賢治氏が新社長を務めているが、当然これだけでは不十分だろう。女性役員の増加や、接待文化があるとすればその根絶、内部通報制度の実質化など、具体的な改革案が示される必要がある。

 視聴者やスポンサーをはじめ、前述した民放労連など外部からのプレッシャーもあり、フジテレビはより広範な組織改革を迫られるだろう。

8. 日枝相談役の影響力と経営責任

 今回の問題を考える上で無視できないのが、約40年にわたり経営トップを務め、現在はフジサンケイグループ代表としてフジテレビとフジ・メディアHD両社、そして産経新聞でも取締役相談役を務める日枝久氏の存在だ。

 10時間を超えた1月末の記者会見では、日枝氏の会見出席を求める声が上がったが、実現しなかった。遠藤副会長は「日枝相談役が、ここに来る・来ないというよりも、今後それぞれがどういう責任を取るかが重要」と述べていた。

 第三者委員会は、日枝氏の経営姿勢やガバナンスへの影響についても踏み込んだ調査を行う必要があるだろう。とくに長期政権下での企業文化の形成と今回の問題との関連性は重要なポイントだ。

2024年11月19日、第35回世界文化賞授賞式における日枝久氏
2024年11月19日、第35回世界文化賞授賞式における日枝久氏写真:REX/アフロ

おろそかだったジャニーズ検証

 以上のように、3月末に提出予定の第三者委員会の調査報告書は、フジテレビの組織文化とガバナンスの根本的な問題を明らかにする可能性がある。

 フジテレビは一昨年の旧ジャニーズ問題でも、検証の問題を指摘されていた。今回も同様の問題が繰り返されており、放送事業者としての判断能力と説明責任が厳しく問われることになるだろう(検証されない『スマスマ』〝公開処刑〟──2016年1月18日にフジテレビで起きたこと」2023年10月31日)。

 同時にこの報告書が、単なる個別案件の事実確認にとどまらず、テレビ業界全体の構造的な問題に光を当てるものとなることが期待される──。

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ありがとうございます。
ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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