選択肢
怠惰と大食、そして安全
これらを保証されていれば取りあえず禿裸でも実装石は幸せらしい
さて、次は何を与えて何を没収してみようか・・・
食と住居と安全の代りに禿裸として暮らしていた実装石
しばらくすると子供が欲しいと言って来たので生ませてやった
もちろん生まれた子供も親と同じく禿裸にした
それでも生活を保障されているのでとりあえず幸せそうである
だが、何の代償も無く子供と暮らせると思ったら大間違いだ
子供1匹につき1つ、代りに何かを奪うと宣言した
それは「食事」か?「住居」か?
それとも他の何かか?
あるいは子供を諦めるのか?
選択の権利は実装石に与えてやった
悩む実装石・・
仔を育てたいなら1匹につき何か1つを失う……簡単な条件である
しかし元々馬鹿なこの実装石には理解するのが難しかったようだ
「デェェ…よくわからないデスゥ…」
彼女はしばらく何か考えていたが、急にポンと手を打ち、
「グッドアイデア思いついたデッスゥ!!」
そして…
「デッゲロゲ~♪可愛い子を増やして半分ゴシュジン様にあげるデスゥ♪
そうすればみんな飼ってもらえて、みんなで幸せデッゲロゲ~♪」
やはりとんでもない勘違いをやらかした
新たに命の宿った腹を愛おしそうにさする親実装
どうでもいいが、そろそろタイムリミットとさせてもらおうか
「何言ってんだ?違うだろ?」
「デッデッ!?」
グッドアイデアを即否定されて親実装は驚いている
こいつはあの後4匹の仔を生み、今じゃ親子8匹の大家族
俺はもう一度分かり易く条件を説明してやった
仔実装は全部マイナス要素である事、プラスにはならない事…
仔の数だけ何かを失うか、仔を失うかのどちらかだという事…
「…………デッ!?……デェェェェ!!!?」
完全に理解できなくとも、肝心な部分はわかったようだ
そう、無条件の幸せなど与えはしない
何かを得れば何かを失う…それがルールだ
とはいえお前には酷な選択だな…
俺が選んでやろう
「デギャァァァァァァァァァァァァ!!」
これで4匹分…まだあと3箇所いただくよ…
仔のために頑張るんだな
実装石にとっての幸福、それは地獄と隣り合わせ
「デヒンデヒュゥ…デッデッフゥ」
肉の固まりが呻いている
これはあの太った親実装の成れの果てだ
7匹の我が仔と暮らせる代りに7つの物を失った親実装
四肢と共に自由を、両目と共に光を、そして舌と共に味覚を…
こいつに考えさせたら仔が増えるだけなので俺が選択してやったのだ
なかなかのグッドチョイスだろう?
最初はこいつも泣いてばかりいたが、しばらくして落ち着いた
仔実装達も不自由な親実装の世話をしてやったりと、
一家はまあまあ幸せな様子だった
そのまま何事も無く時は流れるかとも思ったが
仔の成長と共に歯車が狂い始めた・・・
仔達は動かない親に飽き、徐々に知恵を付けて自己中心的になって行った
親実装はやがて仔達に馬鹿にされ、ついには相手にもされなくなった・・
時は残酷である
そろそろ最後の選択肢を与えてやろうかな
俺は放置されて糞まみれになっていた親実装を洗い、
一時的に目と舌を戻してやった
「デヒッ…辛かったデスゥ…寂しいデスゥ…」
「仔達と暮らせたのに幸せじゃなかったのか?」
「デヒィン…そんなわけ無いデスゥ…仔達の顔も見えないデスゥ
撫でてもやれないし話もろくに出来なかったデスゥ…」
そして最後には全ての仔が親の存在をただの糞袋としか見なくなった
親実装の身体は糞にまみれ、あちこちに齧られた痕まである
エサは俺が与えてやっていたので色艶は良い
「デッスゥ…普通に暮らしたいデスゥ」
「ここで暮らすには全ては手に入らないんだよ」
「デェェ…どうすればいいデスゥ…?」
「ここを出て公園で暮らすというなら、服も髪も元に戻してやろう」
「デェェ!元に戻りたいデスゥ…でも公園はとても怖い所デスゥ…」
こいつは公園生まれなので公園の恐ろしさを知っている
「仕方が無い特別に選択肢を増やしてやろう」
「デッ?」
「仔実装1匹の自由と引き換えに、お前に失った物を1つ返してやろう」
「デェェェ!?」
それはあまりにも過酷な選択肢…
だがそれでも公園で暮らすよりは何倍も幸せなのである
そして仔実装達の自由は奪われた
今度は母実装無しでは生きて行けない
親のありがたみがわかる事だろう
さて、しばらくまた様子を見るかな
「デェェェェン!!どうしてこうなるデスゥ!」
「だからお前が選択した事だろ?自由を奪うっていうのはこういう事だよ」
四肢と視力を奪われた仔実装達の無惨な姿に号泣する親実装
舌は残してやったから食事の楽しみはあるけどな
「これじゃ仔供達がかわいそうデスゥ!」
「そうか、ならばこの前と同じようにお前がこうなって、仔実装を元に戻すか?」
「デェッ!?」
「また仔に無視されて一人ぼっちにされるぞ?あるいは仔に食われるかもな」
「デッ!デデデッ!!」
「仕方が無いからまた選択肢を増やしてやろうか?」
「ど、どうするんデスゥ…?」
「仔を1匹公園に捨てれば、別な仔を1匹元の姿に戻してやろう」
「デェェッ!!」
「さあどうする?そうしたいなら捨てる仔を選べ」
「ヘヒョァ~!」「フェチャァ~!」「ヘヒィィ!」
とたんに仔実装達が騒ぎ出した。話を聞いていたようだ
「デッェェェェェェェェ…………」
「デェッ…選べない…選べないデスゥ…」
小さい脳ミソで親実装が悩んでいる
子供達と暮らしたい、でも幸せに暮らすには仔を半分あきらめねばならない
…などと必死で悩んでいる所に俺がよけいな一言
「3匹捨てれば3匹助かるのはわかるな?……じゃあ残りの1匹はどうする?」
「デデッ???………デッデッデ???………………デァァッ!!」
仔の数を漠然としか認識してなかった親実装の脳にはかなり効いたらしい
その後も親実装が何か考える度に矛盾を指摘してやっていたら限界が来たらしい
「…テヒッ…テヒッ…テヒッ…もう…考えて…いられないデスゥ…」
「ここでは自由と安心は両立しないんだよ」(俺ルールだが)
「デェスゥ…子供達をみんな自由にしてやりたいデスゥ」
「そうか、”安心”よりも”自由”な方がいいのか?」
「わからないデスゥ…でも家族一緒に自由に暮らせればきっと幸せデスゥ」
「…なるほどな…それじゃ全員公園行きだぞ?わかってるのか?」
「………………はい…デ…ズゥゥ…」
もはや正気では無いのかもしれない
しかしこいつの選択した事は尊重してやろう
「デッスゥン♪」「テッチャァ♪」「テチュゥン♪」
喜ぶ親とはしゃぐ仔達
見違えるように綺麗(?)になった実装一家は公園にいた
前に言った通り、公園に捨てる時は髪(頭皮ごと再生)も服も戻してやったのだ
守る必要の無い約束だが、禿裸のこいつらがすぐに殺されるのは望まない
生き延びていれば後日再開し、また色々と話が聞けるだろう
それはそれで面白い
俺の心づくしの餞別であるダンボールハウスと、
中に備えられた10日分ほどの餌、お菓子、毛布…
これだけあればしばらくの間だけは自由と幸せを楽しむ事ができるだろう
「ここはなかなか奇麗な公園デスゥ♪」「とっても広いテチィ!」
「ママあれは何テチィ?」「見た事も無いものばかりテチャァ♪」
この後に待っている過酷な生活の事も忘れて親子ははしゃいでいる
自由の代償にこれからこいつらは何を支払うのだろうか?
堪え性の無いこの親子は安全よりも自由を選んだ、これが今回の俺の結論だ
再びまた別な実装石でこういう意地悪な実験をやるかはわからない
だが愛すべきこの愚かな種族達との付き合いは終りにするつもりも無い…
さて俺はちょっと先のコンビニによってから帰ろう…
帰りにまた様子を見てやろうかな…
「さあお前達、ゴシュジン様のくれたオウチに入るデス」
親実装はまずは安心なハウスの中で子達とオヤツでも食べながらこれからの事を
考えるつもりだった
今までは何をするにも条件が有り、選択を迫られ続けた…
でもそれはもう終った
これからは自由だ、厳しいかもしれないが自由になったのだ
親子は希望に満ちた顔でハウスに入ろうとした…だが…
「オマエら待つデス!」
「デッエ?」
親子はいつの間にか数匹の汚い野良実装に取り囲まれていた
「オマエら捨てられたデスゥ?ここに済むならルールを教えてやるデスゥ」
ドガッ!ペシッ!ザクッ!
「デッ…ギィエエエ…」
野良は親実装を殴り倒し、木の小枝で激しく突いた
突然の暴力に親実装は抵抗も出来ず、仔実装達は固まって震え上がった
親実装の心には、忘れていた公園の恐ろしさが蘇って来た
「これはアイサツデス!アイサツされたらお返しくらいして欲しいデス…」
「お返しはあのガキどもがいいデス!」
「いやいや、あのオウチの方が良いデス!」
「…そうデス…いきなり両方奪うとコイツの使い道が無くなるデス…
おい!オマエに選ばせてやるデス!子供とオウチ、どっちにするデスゥ?」
「デププ…とっとと選ぶデス!」
「デェェェッ…そんなぁ…デスゥ…」
終ったはずだった…こういう悩みは終ったはずだった…
選択の苦痛から逃れるため、安心を捨ててまで公園に来たのに…
しかし相手が変わっただけで運命は変わってはいなかった…
↓後編
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