2022/05/07
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――上野さんは日本の「女性学」のパイオニアであり、独自の使命感で新しい仕事をつくり出してきた方として知られています。また、名誉教授となられた東京大学をはじめ、教員としてのキャリアも長く、学生指導の経験も豊富です。「夢中になれる仕事を見つけるにはどうしたらいいのか」と迷う10代に、何とアドバイスをしますか。
いきなり水をかけるようですが、「夢中になれる仕事」を求めるなんて、幻想です。仕事になるとは、つまり、カネを稼げるということ。他人様からお金をいただけるだけの何かを生み出せて初めて仕事になります。
仕事は、夢中になるためにするものではありません。私がこれまで働いてきた理由を聞かれたら、それは「食うため」です。もう一つ加えると、「自分以外、誰も私を養ってくれないから」です。
食うために何ができるかを考えるのが基本のキであって、夢中になることと仕事が結びついているのはほんの一握りの人たちだけ。たまたま運に巡り合った、成功者たちのモデルしかメディアが取り上げないから幻想が生まれます。結果、幻想を追って失望する若者を大量に生んでしまうんですよ。
――おっしゃるとおりです。子供たちに対して「夢中になれることを探しなさい。その先に仕事がある」と伝える良さを疑わない大人は多いかもしれません。
どんなに好きでもニーズのないことをやったって、ちっともお金になりません。ただ、皆さんが防衛的になってもいけないので、私は仕事を3つに分けて考えてほしいと思っています。
一つめはVocation、訳して天職。カネにならなくても夢中になれる仕事です。二つめがProfession。専門性のあるスキルや能力を提供することで、お金を払ってもらえる仕事です。最後はJobで、雇われ仕事。他人から求められて、こなす仕事です。大事なのは、この3つのバランスを取ること。今の時代には、どれか一つを選ぶ必要はありません。
――むしろ、子供には、Professionを持ってほしい、と願う親は多いように思いますが。それがあればいいとも言えないですか。