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Dr.片山の100均ロボット研究室

難しい専門知識は不要、100均のプチ電車でペンプロッターを自作するNEW

こんにちは。片山均(かたやま ひとし)です。愛媛県八幡浜市にある三瀬医院で院長を務めながら、夜な夜な低予算なロボット製作を行っています。

これまでロボットを作ることが多かったのですが、今回は新しいジャンルにチャレンジ。ペンプロッターを作ってみました。

ペンプロッターとは、ペンを使って絵を描く装置です。ペンプロッターをご存じの方は、難しそうだなと思うかもしれませんが、構造自体は比較的シンプル。なので、簡単にできるかと思っていました。果たして……。

一筆書き専用ペンプロッター

まずは完成したペンプロッターをご覧ください。

動力には、100均のプチ電車を採用しました。ペンプロッターの製作には、絵を描くために数学的知識、プログラミングの知識などが必要になりますが、私の作品ではそのような知識は不要です。ただし、製作作業が多少煩雑にはなりますが。

ホンモノのペンプロッターは、ペンが持ち上がる機構が入っていますが、今回の作品にはその機構がありません。なので、常に一筆書きとなります。

それでも、一見難しそうなペンプロッターを自分で作れたというのは、なかなか達成感がありました。

プチ電車ペンプロッターの製作過程

それでは製作過程をご紹介します。材料は以下の通りです。

  • プチ電車(駆動車) 1個
  • ボールペン 1本
  • 竹の箸 約20本
  • 竹串 1本
  • 木製スティック 3本
  • ストロー 1本
  • ロリポップスティック 1本
  • 厚紙 適量
  • タイルマット 適量
  • 輪ゴム 5本
  • 画鋲(がびょう) 5個
  • 足の長い画鋲 1個
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はい、いつもの設計図はこちら。

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竹の箸をグルーガンで接着してペンプロッター本体を作ります。

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竹の箸、ストロー、タイルマット、厚紙、輪ゴムでプチ電車の車輪の回転を2個のカムに伝える機構を作ります。

ここで問題発生。この機構だけでは2個のカムを回す軸が同期せず、徐々にずれてしまいます。

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木製スティック、画鋲、足の長い画鋲、ロリポップスティックでパンタグラフ機構を作ります。

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このパンタグラフ機構を取り付けると、見事に2本の軸が同期しました。

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竹の箸とストローでできたアームを取り付け、輪ゴムを掛ければペンプロッター本体の完成です。意外と簡単! 手元にペンがなかったので、とりあえず鉛筆を取り付けてみました。

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続いて、思い通りにアームを動かすためのカムを作ります。描きたい絵1枚につき、2個のカムが必要です。A4用紙と木製スティック、画鋲でカムを設計するための装置を作りました。中心の四角いチェック模様部分が、絵が描かれる領域です。

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中心の四角の各座標にペン先に相当する部分を移動させます。

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そして、右側の円に描かれたカムの中心からの距離を示した目盛りを読み、

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左のマス目に記入していきます。この作業、非常に手間がかかります。最初は1マスずつ確認していましたが、途中からは1マス飛ばしで確認し、残ったマスは周りのマスの平均値で埋めることにしました。

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出来上がったペンの座標と2つのカムの中心からの距離の対応表です。エクセルの機能を使い、数値に応じて色を変えているので傾向がわかりやすくなっています。これでカムを作ることが可能になります。

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準備が整ったところで、ペンプロッターに人型を描いてもらうことにしました。

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適当に頂点を32個選び、その座標に示された中心からの距離を線でつなぐとカムの形が出来上がります。

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カムの裏に丸く切ったタイルマットを貼り、ペンプロッター本体に取り付けます。

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プチ電車を載せてペンプロッターを動かします。そして描いた絵がこちらです。……キタキツネかな?

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検証の結果、カムとフォロア(対偶部)が接触する位置が2つのカムでそろっていませんでした。気を取り直してやり直し。これで、うまくいってるのでは?

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これに気をよくして、下絵を手直しして鉛筆もボールペンにチェンジして再チャレンジです。

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そして完成した絵がこちら。ちょっとゆがんでますけど、まあいいでしょう。

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この結果に満足してSNSで自慢していたところ、丸、三角、四角のような基本図形を試してみたらとご提案をいただきました。そこで早速カムを作って図形を描いてみました。なんとなくそう見える!

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丸、三角、四角が描けるようになったので、最後にそれらを統合した絵を描いてみました。おでんに見えませんこと?

まだまだ改良の余地あり

今回の作業で一番苦労したのは、なんといっても絵の座標とカムの径の表を作るところでした。これはなかなかたいへんでした。

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今回はカムが持ち上がらない機構のため、一筆書きしかできませんでしたが、実はすでにペンを持ち上げるための簡単なアイデアは浮かんでいます。描画の精度を上げたり、もっと複雑な絵を描いたりといった改良の余地はまだまだありますので、今後もペンプロッター製作を突き詰めていきたいと思います。

しかし、昔のからくり師は、これ以上の手間をかけて人形に文字を書かせたりしていたんでしょうね。やはり、先人はすごい!


企画・制作:片山均
取材・文:三浦一紀

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