アニメの「メダリスト」は何故つまらないのか
アニメの「メダリスト」がつまらない。
なぜつまらないのか、うまく言語化できなくてここしばらくグルグルと考えています。
つい1週間前に、12冊一気買いして、漫画「メダリスト」を読み始めました。もったいなくてゆっくり読んでいるのでまだ途中。
作品の存在は知っていたんですが、読んでなくて。
なぜこのタイミングで漫画「メダリスト」を読み始めたかというと、1月から放送中のアニメ版を観たから。
私の人生を変えたアニメ「ユーリ!!!on ICE」クラスタとして、「フィギュアスケートのアニメ」を観ないわけにはいかないでしょう。
アニメ「メダリスト」面白い!これは原作も読まなくちゃ!という流れではなくて、その逆です。
アニメの「メダリスト」にぜんぜんピンとこなくて、「……面白いのか、これ……?」て思った。
第1回がそんなで、第2回以降も「そういえば放送日過ぎてるな~」と数日遅れで再生してます。すでに義務感。
スケートシーンの作画はそりゃ美しいんですよ。3Dバリバリで回り込み俯瞰煽り、今どきのCGって自然ですごいなあ、という印象。
しかし。しかし、だ。
これがつまらない。
美しいスケートシーンが頭に入ってこない。右から入って左に抜けていく感じ。
アニメとして決して面白くないわけじゃないけど、面白いわけでもない。
スケートは綺麗だけど印象に残らない。むーん。
そんな折、主題歌のMVが公開になりました。そう、あの羽生結弦が出演したことで界隈大騒然となったあのMVです。
米津玄師が「ぜひ主題歌をやらせてほしい」と自らオファーするくらいの「メダリスト」ファンだというのは有名な話です。私が信頼する SNSのフォロイーさんで「メダリスト」プッシュしてる人もたくさんいる。
おそらくきっとものすごく面白い漫画なんだろうなと。
イマイチ納得いかないアニメを観てモニョっているより、漫画を読まなきゃならないのでは?と思い……とりあえず3巻まで買ってきて読んだんですよ。
なんだこれ、むっちゃ面白いな!!!???
即、続きを買いに本屋に走ったよね。
ああ、「メダリスト」ってこういう話だったのか!と、今までつっかえていたものがストンと腑に落ちた。すごくスッキリした。
アニメは……なんだろ、全キャラの言動が空回りしてて誰にも感情移入できない感じかな。
何気ないエピソードをあちこち削っている、または掘り下げが足りない(例えば表情の表現とか)ので、キャラの解像度が低いというか。
もとから漫面を読んでいる視聴者なら脳内補完するんだろうけど、アニメしか観てない層には届かない。
漫画を読んで「このシーン、アニメにあったっけ?」と確認したら、ちゃんとあるんだよ。でも印象に残らない。エピソードとしてはとりあえず描かれているのに、とにかくすべてにおいて印象が薄い。
漫画では丁寧に描かれている親やコーチ達の「大人視線」「葛藤」が、アニメではぜんぜん伝わってこない。どのキャラも中途半端なの。
コミカルなシーンとシリアスなシーンのバランスが変。だから全体の流れが悪いってのも一因かなあ。
じゃあスケートシーンはどうかというと、これもかなり微妙。
鈴木あっこさんの振付でプログラムを観られるのは楽しいけど、作画もすごく綺麗だけど、バリバリ回り込んで凄いんだけど。
けど……。
もうホントぶっちゃけるね。
YOIのように「永遠にこのプログラムを観ていたい。何度でも何度でも観たい。終わらないでほしい」って、リアルの演技と同じような、あの気持ちにならないんよ。
「作画、綺麗だなあ」
「CGだとこんな回り込みができるんだなあ」
「すごいなあ」
と「感心」はするけど、でもそれはYOIのような「感動」ではないんだなと思う。
いやもう比べてごめん。でも比べるなったって無理じゃん!!???
そしてこれは驚くべきことですが、アニメより漫画のほうが動いてます。
バリバリに動いてます。
光がいのりの前で初めてジャンプを決めるシーン、これかなり重要なエビソード。
それなのに、きちんと尺を取っているにもかかわらず、アニメのほうではやっぱりさほど印象に残らない……
でもこれ漫画で読んだら凄いスピード感だった。そして「これがすべての始まりなんだ」と読者には一瞬でわかってしまう。
アニメにはそれがないんだよ。
これはフィギュアスケートをちょろっと観ているだけの素人の戯言なんですが、4回転ばんばん跳べる選手は「うわ、凄いな!」と思うしジャンプは大会の華だと思う。
でもそれと同じくらい4回転なしで高得点をたたき出す選手が好きなので、ジェイソン・ブラウンタイプの選手はいなくなって欲しくない。
これはアニメ「メダリスト」の滑走シーンが「つまらない」ことの理由のひとつなんじゃなかろうか。
CGが悪いわけじゃないし手描きのほうがいいと言っているわけでもない。
でも技術的にハイレベルなことと、それが心に響くかどうかってのは必ずしもイコールではないってことです(4回転が心に響かないと言ってるわけじゃないですよ念の為)。
「技術的には下手だけどやたらと面白い漫画」ってのは存在する。漫画だけじゃない、ギターだって写真だって絵画だってそう。
綺麗なものを綺麗に描くだけじゃ、上手いだけじゃ、駄目なのよ。
アニメ「メダリスト」にはなにかが足りない。
YOIがあれだけ、それこそ多くの人の人生すら変えてしまうほどの物語だったのは、まさに山本監督がフィギュアスケートで人生変わった人だからなんじゃないのか。
ふと思い出したのは市東亮子先生の「籠の鳥」という漫画です。
老前整理と場所不足で大量の本を処分した中で何度も「残す本」に分類されて手元にある一冊。
電子版で読めます。
画家を目指す主人公が、あちこちの画商に作品を持ち込んで言われるセリフ。
「あるものの形がきれいに描けりゃ、これで食っていけるってもんだったら、あんたこんな楽な商売ありゃしないよ。何というかねえ………魂の問題なんだよ」
初めてこの漫画を読んだ時から、たった2コマのモブのセリフが刺さりまくって何十年も忘れられない。
アニメの「メダリスト」には、漫画の「メダリスト」にある「魂」が入ってないんだ。
作品にあるべき「魂」とは?
それはどうやって形作られるんだろう?
うまく言語化できなくて、でも何か言いたくてグダグダと書いてしまいました。言い足りないけどうまく言葉にできない〜〜!
私みたいにYOI大好きな人が、「メダリスト」のアニメをどう思ってるかすごく興味がある。
それで、漫画を読まずにアニメだけ観ている人がもしいるなら、ぜひぜひ漫画を読んで欲しいと思います。
もう泣ける。泣いた。
司先生が小学生の生徒に「いのりさん」「あなた」と呼びかけるの、すごくいいよね〜〜
実際の試合を観てると「みんな最高の演技でシーズンベスト更新して笑顔のキスクラでいて欲しい!全員金メダル獲って欲しい!」って思うけど、ページをめくるたびそんな気持ちになります。
さて、私は4巻を読んでます。
どんどん先に読み進むのが惜しくて、読み返しながら読んでる。夜鷹純がどういう人なのか、これから読むんだよ。
いいだろ。


コメント
4アニメ見てないです。アフタヌーン連載を毎月追ってて、興奮して(笑)、今、失速中です…(長編になってくると、途中で脱落する派…)。司の熱さといのりの素直なガッツが噛み合ってて毎回「シャーッ」って心の中で拳を握ってました。MV見て、羽生さんのスケーティングがまさに夜鷹純だ!とこれまた興奮しました。ボキャブラリーが…興奮ずくめで失礼しました~。
多紀さん、読んでるんですか!熱いですよね〜。ノービスの試合なんて実際見る機会はほぼ無いんですが、今年はちょっとチェックしようかと思ってます。岩手からもっと選手が出ないかな…
初めまして。記事、大変興味深く読ませていただきました。
米津さん含め漫画既読の方が激推しするほどのものをアニメから感じなくて、アニメを追い越さない程度にゆっくり漫画も読んでいたところだったので、とてもよくわかる気がしました。セコマさんのいのり愛の深さとか、納得ができてこそキャラの言動に必然性が生まれるというか…。この先も読むのが楽しみです。
ミナミさん>
コメントありがとうございます!そうなんですよ〜信頼できるいろんな方が大絶賛している漫画なので、アニメを観た時のガッカリ感がすごくて、「いや、きっとこんなんじゃないはず」と漫画を読み始めました。結果的には良かったのかもしれませんが、こうなるとアニメだけ観てないで漫画を読んでくれ〜っと言いたくなりますね