Startup Aquarium 2025 に、Nstock社で参加しました!
スタートアップで働くことに興味をもった人たちが、有料チケットを買って、土曜のお昼にも関わらず、なんと参加者3,300名という、世界最大級のスタートアップキャリアフェアです。
メインイベントは、54社が3分間でピッチ(プレゼン)する「スタートアップピッチ」。私もSmartHRの初期ぶりに、作り込んだピッチで挑み、なんと優勝することができました。
カンファレンスのピッチ大会と違い、審査員はいなくて、ピッチを見た来場者の投票で1位だったのですが、便宜上優勝とさせてください。
- Open Network Lab 2015「Demo Day」
- TechCrunch Tokyo 2015「スタートアップバトル」
- B Dash Camp 2016「Pitch Arena」
- IVS 2016「Launchpad」
- Startup Aquarium 2025「スタートアップピッチ」
これまでに、5つの大会で優勝しており、「ピッチ得意」と言ってもいいかなと思ったので、私なりの勝てるピッチの作り方をブログにまとめました。
よければブログを読む前に、実際のピッチをご覧ください!
1. まずは目的を整理
通常のピッチ大会の場合は、「資金調達」が目的のケースが多いでしょう。Coral Capitalの過去の調査では、優勝したスタートアップは資金調達額も2倍以上だとか。
優勝せずとも、ピッチでインパクトを残せれば、会場にいるVCやエンジェルの皆さんに話しかてもらえらり、こちらから声をかけたときにちゃんと話を聞いてもらえる率も高くなると思います。僕もピッチを見て気になったスタートアップさんには、会場で声をかけることもあります。
今回のStartup Aquarium 2025の場合は「キャリアフェア」なので、イベントの目的自体が「採用」です。なので、当日出展している「Nstockのブースに来てもらう」をピッチの目的にしました。
2. 原稿作成
目的を意識しつつ、制限時間に合わせたボリュームの原稿を作成します。
僕は、スタートアップのピッチは、プレゼンというよりは演説に近いと思っていまして、いかに完璧な原稿をつくるかが1番重要だと思っています。
目的はVCとの面談を獲得することなのか、採用候補者にブースに来てもらうことなのか、審査員からいい点数をもらうことなのか、いずれにせよ「人を動かす」ことです。
「この内容であれば、人を動かせる」と思える原稿を書きましょう。
今回のStartup Aquarium 2025は、制限時間が「3分」と短く、かなり内容を絞る必要があります。なので、3つある事業のうち「セカンダリー事業」という1つの事業のみに絞って原稿のver.1を作りました。
3. 社内でフィードバック収集
原稿ができたら、社内メンバーに読んでもらい、内容や構成、言葉のチョイス、伝わりやすさについてフィードバックをもらいます。
今回のNstockのプレゼンは、金商法に関係する部分もあるので、社内のコンプラ担当のmikaさんに特に意見をもらいました。
セカンダリー取引所に関する説明は「正確に伝えることが大事、しかし必要な文量がすごく多い」という制限に頭を抱えました。時間の尺もとるし、暗記が苦手なので絶対間違えそう。
考えた結果、制約を逆手にとって、あえて長文をスライドに全文表示して読み上げるスタイルでいく方針にしました。
あわよくば「難しい事業領域にチャレンジする事業なんだな、面白そう」と思ってもらえてたらうれしい。
4. スライド作成
ここまでやって、ようやくスライド制作に取り掛かります。
僕の場合はそんなに凝ったスライドではないのですが、「1スライド、1メッセージ」を基本としています。
あと、Startup Aquariumの場合は、ステージ上から発信者ノート(カンペ)をみることができません。なので、原稿をすべて覚えてピッチに挑む必要がありますが、うっかり忘れて数秒間つまってしまえば、そこで試合終了です。聴衆にダメそうな印象を植え付けてしまい、プレゼンの効果が激減します。(と、僕は感じています。)
なので、今回は保険もかねて文字のスライドを多めにし、内容を忘れて言葉につまることがないようにしました。ただ、文字のスライドばかりだと単調になるので、イメージ画像をつかったスライドを挟むなど、リズムが出るように工夫しています。
5. 練習とタイム計測
実際に声に出してプレゼンを練習します。
スマホのストップウォッチ機能を使って時間を測りながら、スムーズに話せるようになるまで何度も繰り返します。
全体で3分(180秒)というタイム計測しても改善はしづらいので、原稿を15〜30秒くらいのパーツに分けて練習すると、時間調整しやすくなります。
6. 原稿を “磨く”
「5」の練習と並行して、原稿をシンプルに削っていきます。
言いづらい箇所、舌が回らない箇所、言葉が出てこない箇所も、1文字単位で修正していきます。
自分的には「原稿を磨く」という表現がしっくり来るので、こう呼んでいます。
ver.1(15秒)
トップバッターのNstockです。
スタートアップアクアリウムにお越しの皆さん。
わざわざ休日に、こんなイベントに来るなんて、 おそらくいま転職活動中か、いいスタートアップがあれば転職したい。 そういう方、たくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか?
最終ver. (9秒)
こんにちは、Nstockです。
皆さん、わざわざ休日に、この会場にいるなんて、スタートアップで働くことに「興味はお持ち」ですよね?
↑ 顔を上げてもらうのに重要な語りかけの箇所。ほぼ同じ内容で、6秒短縮できました。
ver.1(24秒)
例えば、イーロン・マスクのスペースX社は創業20年でまだ上場していません。
しかし、ここ数年は毎年のようにセカンダリー取引を行っており、社員のSOや株が換金できる機会を提供しています。
驚くべきはその取引総額です。昨年、2024年に実施されたセカンダリー取引では、メディアの推計ですが、日本円換算で1,500億〜1,900億円もの株が、一度で売却されたそうです。
最終ver. (20秒)
例えば、イーロン・マスクのスペースX。
創業20年で、まだ上場していません。
しかし、ここ数年は、毎年のようにセカンダリーを実施。
社員も、株やストックオプションを換金できています
驚くべきはその規模。昨年のセカンダリーでは、一度に、1500億円以上もの株が、売却されたそうです。
↑ こちらは、ゆっくり読んでも4秒短縮。よければ口に出して読んでみてほしいのですが、ver.1の原稿は舌がまわりません(笑)。
上記は一例ですが、表現をシンプルにすることで、読みやすく、時間も短くなるので、その分ゆっくり喋ることができ、伝わりやすくなると思っています。
7. 覚える
正直、僕は暗記がめちゃくちゃ苦手です。
苦手なので、録音した自分のプレゼンを通勤中に聴いたり、寝るときもイヤホンして寝たりして、自然と言葉が出てくるように努力しました。
原稿も100回近くは実際に口に出して読んでいると思います。一週間くらい前から、歩くときもブツブツ言いながらだったので、めっちゃ変な人だったと思います。
ただ、それでも動画と原稿を見比べると、大きく3箇所で間違えています。ムズい。
質疑応答の準備
今回の、Startup Aquariumの場合は質疑応答はなかったです。しかし、大会によっては質疑応答があるため、想定質問とその回答を事前に準備しておくといいでしょう。
ピッチのなかに入れると尺をとられる内容は、あえてカットして、質疑応答用に温存しておくのも手です。
SmartHR時代、「なぜいままで類似サービスがなかったのか?」は必ず聞かれる質問でした。これはピッチのなかで説明すると時間がかかるのですが、質疑応答でズバッと回答できると説得力がアップする内容なので、あえてピッチには入れないようにしていました。
トップバッター対応
今回、ピッチの順番が54社中1番目のトップバッターでした。ちなみに、SmartHR時代に出場したTechCrunch Tokyo 2015でもトップバッターだったので、人生2回目の経験です。
M-1などの、お笑いの賞レースで「トップバッターやりづらい」と聞いたことがあると思いますが、正直すごくやりづらいです。
みんな聞く準備ができていない、会場の出入りも多いし、何より空気が重いです。本番は、主催者のCoral Capital 津田さんが前説で会場を盛り上げてくれたおかげで、多少は空気の重さは緩和されました。しかし、投票がスマホでQRコードを読み込む形式、しかも要ログインと、トップバッターは不利です。
できる対応としては、なるべく序盤で顔を上げてもらい、聞くモードに持って行くことです。
今回のピッチでは、序盤の70秒を来場者に話かけることや、来場者への情報提供につかっています。例えば「皆さん、わざわざ休日に、この会場に〜」や、「皆さんが、これからもらうストックオプション、本日時点では〜」など、顔を上げてもらえそうな単語を多めに用意しました。
ルールを知る
一番重要なのは、発信者ノート(カンペ)を見ながらピッチできるか、見れないのかを、事前に把握することです。これで原稿の詰め込み具合や、練習量が変わります。
また、事前に審査基準を教えてもらえるケースがあるので、ダメ元で主催者に聞いてみましょう。審査基準を意識した内容に調整することで、勝率は高まると思います。ぼくも実際に2つの大会で審査基準を事前に教えてもらい、内容を調整したことがあります。
原稿貼っておきます
最後に、Startup Aquariumで実際に使用した原稿の最終ver.を貼っておきます!
こんにちは、Nstockです。
皆さん、わざわざ休日に、この会場にいるなんて、スタートアップで働くことに「興味はお持ち」ですよね?
では、なぜスタートアップで働きたいですか?
- 社会を変えたい
- もっと仕事で熱狂したい
- もしかして、ストックオプションでお金持ちに……?
でも、それも大事ですよね。
ただ、1つだけ知っておいて欲しいことがあります。
実は、皆さんがこれからもらうストックオプション、ほとんどの場合、上場まで換金できません
上場までは平均、10〜12年。
人生をかけた転職をして、会社が成功しても、換金できるのは10年後。
「いまは若いから気にしない?」という人もいます
しかし、10年で、あなたのライフステージ、どれだけ変わっていくでしょう?
多くのスタートアップが、社会を変えるため、今日も挑戦しています。
そこで働く人達も、もっと報われる日本に変えていく必要があります。
変えるのは、私たち、Nstockです。
キーワードは未上場時点での「セカンダリー取引」。
セカンダリーとは2次流通、つまり、持っている株やストックオプションを「売ったり、買ったり」することです。
例えば、イーロン・マスクのスペースX。
創業20年で、まだ上場していません。
しかし、ここ数年は、毎年のようにセカンダリーを実施。
社員も、株やストックオプションを換金できています
驚くべきはその規模。
昨年のセカンダリーでは、一度に、1500億円以上もの株が、売却されたそうです。
1社の、1回のセカンダリーで、1000億円以上の規模。
日本でも事例があります。
実は私、SmartHRの、創業者です。
私が創業したSmartHRでも、昨年、セカンダリーを実施。
なんと、114億円もの株が、一度に売却。
そして大半は、投資家ではなく、私を含む初期メンバーたちの株です。
1社の、1回で、100億円以上の規模。 日本でもおきてます
セカンダリーは、スタートアップで働く人にとっても、事業テーマとしても、夢がある話だと思いませんか。
Nstockはいま、「非上場スタートアップ株式」の、「セカンダリー取引所」を開発中です。
読みます。
2ヶ月後、改正後の金商法が施行され、私達が準備しているセカンダリー事業に関する規制緩和が予定されています。その後、私達は金商法に基づく業登録を行う必要がある為、まだ確実に事業を開始できる段階ではありません。しかし、日本で一番最初のプロダクト公開を目指し、その準備を進めています。
セカンダリー取引所は、日本経済の、歴史に残る大仕事です。私たちと一緒にやりましょう!
いざ、スタートアップ! Nstockでした。
以上です。
最後に
来場者さんが自分からブースに「話を聞きたい」と来てくれるほど熱量も高く、参加スタートアップとしても楽しい思い出ができて、Startup Aquarium 2025は素晴らしいイベントでした。
主催のCoral Capitalさん、本当にありがとうございます。また来年も出ます!
Nstockでは、引き続き積極的に採用活動をおこなっています。
よければ採用サイトだけでも見ていってください〜!
日本語ラップ好きの皆さんへ
一部から「ブログの最後の日本語ラップコーナーを復活してほしい」という声をいただくので、しばらく復活しようと思います。
モチベーションになるので、よければXで日本語ラップコーナーについてのコメントをお願いします。
去年の「ラップスタア2024」観ましたか??
FINAL STAGEだと「Chrarluが優勝では??」とも思ったんですが、その後の活動をみてると、Kohjiyaがチャンピオンでよかったなと思っています。
ぼくはBIMのライブで「DNA」を生で聴けたのと、社内で macha さんが「今年は本当にKJシーズンだったね!」と言ってたのが印象深いです。
下記は、↑YouTube動画の曲「Never Disappoint」からの引用
お前らの想像の上の上 ゲトる全部
他はねえ俺はこいつだけが取り柄
完璧にこなすから言われてる「出来レース」
もう俺の動き誰も真似できねえ
Hmm 俺は若すぎるチャンピオン
Hmm 頭とマイクは使いよう
Hmm ダチと金しか見えないよ
Hmm 新しい2Bを買いに行こう
こういう気持ちでスタートアップやっていきたいですよね。
おわり