屋久島珍道中(5)〜アマプラを見ながら屋久杉トレイルをしたら怒られたよ編〜
こちらの記事の続編です。
命に関わる病気でドクターストップが出ていて、屋久島に行くと言ったら「次の発作が出たら命の保証は出来ないよ」と言われていたM様は、それでも屋久島に来て、縄文杉を見ると決めた。それのお供をすることになったけいご坊や(私)は、一切の詮索をすることなく、よく言えば寛容に、悪く言えば俺は何にも知らねえと無責任に、屋久島トレイルに行ってきた。事前アンケートに「持病はありますか」とあったが、M様は、しれっと「ありません」と答えていたことを当日知った。
死んだら死んだで関係ないんだ、ちょっとそこらに捨てといてくれとは思っていたが、世界遺産に死体を放置する訳にはいかない。私は、ただただ「俺がいる時に死にませんように」と、昨日、ガジュマルの森で出会ったジーザス・ダンシング・クライストに祈った。ジーザス・ダンシング・クライストとは、ガジュマルの森近くに住む外国人浮浪者で、ひょんなきっかけで仲良くなった。ジーザスは言った。飲もう今日はとことん飲み明かそう。私は言った。明日は三時半に起きなきゃいけないから俺は飲めないよ。明日に備えるのだ。
ジーザスは言った。明日に備えるだと。お前は一体何を言っているのだ。俺たちに明日はないはずだろ。その言葉に目を覚まし、そうだよなと奮発して、狂気の夜更かしが決まった。翌朝(つまり今朝)、二日酔いの状態でホテルを出て、屋久島トレイルの登山口に着いた。レンタルしていた登山道具一式は、全部ホテルに忘れてきた。みんなが登山ウェアをびしっと決めている中、私だけ、黒のダボダボしたパンツに赤チェックのシャツというお前登山をなめてんのかスタイルになった。違う。違うんだ。なめているのは登山ではない。俺は、人生全般をなめているのだと思い直した。
死ななきゃいいなと思っていたが、無事に往復四万歩のトレイルを終えた。道は想像していた五億倍イージーで、私は汗もかかなければ息があがることもなかった。余裕でしたねとM様に言ったら「私は三回死にかけた」と告白された。死ななくてよかった。縄文杉を前にして、M様に感想を尋ねたら「自分もやればできるってことがわかって嬉しい」と、青息吐息の回答を得た。私は、ガイドツアーに参加したことの恥辱にまみれていたため「こんなものは冒険ではない」と爆発寸前になっていた。縄文杉は確かに立派だったが、ガイドが「あれが縄文杉さんですよ」と言ってるのを見て、俺も縄文杉も恥辱にまみれていると思った。
隊列を組んで歩くことが生理的に無理なのと、端的に登山に飽きた私は「帰りは好き勝手歩こう」と決め、隊列の最後尾でアマプラを見ながら下山をしていたら怒られた。動画はダメなのかと思って、スマホから直接音楽を垂れ流していたら、イケイケの若い女の子から「それ、デヴィッドボウイですよね?」と声をかけられた。お、いよいよ話のわかるやつが現れたぞと思って、気をよくした私は「あなたはもしかして、犬とタバコとアルコールがお好きではありませんか?」と言った。
ら、奇跡が起きた。
(つづけ・・・)
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