手術後の医療ミス認定、渋谷暴動の受刑者巡り国に賠償命令 東京地裁

米田優人
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 無期懲役が確定して服役中だった男性が死亡したのは刑務所の医療ミスのためだとして、遺族3人が国に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(村主隆行裁判長)は24日、刑務所の医療ミスを違法だと認め、国に計約2200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 判決は、刑務所が男性のがんの疑いを把握していたのに、仮釈放を判断する「地方更生保護委員会」にその情報を伝えなかったことも違法だ、とする判断を示した。

 男性は73歳で死亡した星野文昭元受刑者。デモ隊鎮圧にあたった警官1人が死亡した1971年の「渋谷暴動事件」で殺人罪などに問われ、87年に無期懲役が確定した。

 徳島刑務所で収容中だった2019年、腹部の検査で肝臓に腫瘍(しゅよう)が見つかり、東日本成人矯正医療センター(東京都昭島市)で手術を受けたが、その後に亡くなった。死因は、肝細胞がんによる急性肝不全とされた。

 判決は、手術後に星野元受刑者の血圧が低下したり尿量が低下したりしたのに、同センターの医師が術後の出血に伴う血液量の不足を疑わず、腹部のエコー検査やCT検査をしなかったと指摘。「術後の出血の有無を確認する注意義務に違反した」と認め、「再び開腹して止血していれば星野元受刑者が死亡しなかった高度の蓋然(がいぜん)性がある」とし医師の対応を違法だと判断した。

 遺族側は、徳島刑務所が、仮釈放の可否を審理する四国地方更生保護委員会に、肝細胞がんの可能性が高いなどとする検査結果を伝えなかったために「心身の状態を考慮せずに判断された」とも訴えた。

 判決は、検査結果を伝えたとしても、仮釈放を認めなかった同委員会の結論に影響があったかは定かではない、と指摘。しかし、がんの可能性があるとの事実は、星野元受刑者の心身の状況の重大な変動だと言えるため仮釈放を認めるかの判断にあたって「考慮要素として一定の重みがある」とした。

 そのうえで、今回の場合は「仮釈放の審理で適正な手続きを受けることへの星野元受刑者の期待権が侵害された」と認め、国に慰謝料などの支払いを命じた。

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この記事を書いた人
米田優人
東京社会部|東京地裁・高裁
専門・関心分野
司法、刑事政策、消費者問題、独禁法