過疎地の小学校、統廃合せず合同授業 「山県方式」で小規模校連携
各地で少子化や過疎化が進む中、岐阜県山県(やまがた)市が、統廃合をせずに小学校を維持する試みを始めている。小規模校が連携する取り組みは「山県方式」と呼ばれ、全国の過疎地などからの視察が相次いでいる。人口約2万5000人の山あいの街を訪ねた。
1月下旬のある朝。市立いわ桜小学校の5、6年生計8人を乗せた青いマイクロバスがのどかな田園風景を走り抜ける。20分ほどして南東に約7キロ離れた市立美山小に着いた。
子供たちを引率するいわ桜小の高畑友宏教諭(48)はバスでの移動時間を利用し、車内で朝の会を済ませた。美山小の山田和弘校長がバスから降りてきた児童を「おはようございます」と昇降口近くで出迎えた。
いわ桜小の全校児童は27人。うち5、6年生は、昨春から週3回、美山小を訪れ、「社会」「英語」「体育」で合同授業に臨んでいる。
この日、高畑教諭は5年生の社会の授業で教壇に立った。「コンビニエンスストアってどんなところかな」。そう問いかけると、机を並べた約30人の子供たちが「雑誌を売っている」「募金箱が置かれている」「ATM(現金自動受払機)がある」などと答えた。その後、グループに分かれ、タブレット端末にそれぞれの意見を入力していった。
いわ桜小単独では、グループ学習を実施できないため合同授業は貴重な機会だ。高畑教諭は「仲間の多様な考えを知り、自分の学びも深まります」と小規模校同士で一緒に授業をする山県方式の利点を説く。
2時限目は体育の授業。今度は美山小の林博之主幹教諭(51)が指導を担い、ミニバレーボールに取り組んだ。子供たちはレシーブとスパイクの仕方を教わり、ネットを挟んでゲーム形式の練習へ。チームメートと声を掛け合いながら、レシーブからスパイクまでボールがつながると、体育館に歓声がこだました。チーム編成では、両校の児童が混成になるよう工夫しているという。
いわ桜小5年の藤田恵史郎さん(11)は「合同授業は楽しい。友達も増えた」と笑顔を見せた。林主幹教諭は「両校の子供が一緒に作戦を考えるなど、刺激し合いながら学んでいます」と手応えを口にした。
2時限目後の中休みにも、両校の子供たちは、グループでおしゃべりをするなどして過ごした。美山小5年の小原奈々さん(10)は「合同授業が始まった頃は、いわ桜小の子とあまり話せなかったけれど、12月くらいからたくさん話すようになりました」と振り返った。
山県方式では、小学校同士…
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