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年末年始に逆転検事をプレイした話※ネタバレ感想

 年末年始に実家でも遊べるゲームをやりた~い!!と思い、色々とゲームをチェックしていて、最終的に「いつか遊びたい」ゲームのうち一つに入っていた逆転検事を遊びました。

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 逆転裁判シリーズのスピンオフ作品にあたる作品で、少し前に逆転裁判1~3をクリアした時から遊ぶのを楽しみにしていたのですが、シリーズの面白さを損なわないまま御剣検事が主人公だからこそ扱われるテーマが描かれている、文句無しに面白い作品だったと感じます。
 逆転裁判1~3の感想は以下の記事でどうぞ。

 ここからは、逆転検事について1話ずつ振り返りながら感想を書いていこうと思います。ネタバレが大量に含まれますので、ご留意のほどよろしくお願いします。


■第1話「逆転の来訪者」

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 逆転検事のシステムを学ぶことができるチュートリアルの役割を果たし、逆転検事全体を通して描かれる一つの事件――KG-8号事件についても触れられる第1話です。逆転裁判1~3はクリアしたものの、逆転検事のゲームシステムがどんなものかをほとんど知らなかったのですが、この第1話で概ねのシステムを理解し、一気にこの作品の面白さに引き込まれました。

 逆転検事のシステムで最も特徴的なのは、<ロジック>の組み立てです。 逆転検事では、御剣が事件現場で証拠品や疑問点を集めていき、それらを論理的に組み立てて事件の謎を解いていきます。

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 この<ロジック>の組み立てが、かなり面白かったシステムです。
 複数の疑問を見て、プレイヤーが一段飛ばしでぱっと答えをひらめいたとしても、逆転検事ではゲームシステム上一つ一つの疑問を順序立てて並べていって答えにたどり着く必要があります。この過程が面倒と感じる意見もありそうだなと思いつつ、ひらめきではなく論理を重要視する御剣の思考をなぞっているようで、個人的には非常に楽しかったです。ロジックをまとめていく御剣の話し方も、相手に自分の考えを伝えるのがとても上手で、この男……頭が良い……!!という今更な事実を改めて感じられました。

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 また、逆転検事では、逆転裁判における裁判パートの代わりに、その場にいる事件関係者の証言をゆさぶったり異議を唱えたりするパートがあります。こうして見ると、逆転検事のストーリーは、逆転裁判よりもある意味で王道ミステリーらしい流れのように思います。

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 また、逆転検事を遊んでいて楽しいポイントの一つに、逆転裁判1~3に登場したキャラクターの再登場があります。たとえばこの第1話では、逆転裁判2、3に登場した、イトノコ刑事の元部下である須々木マコが出てきて、相変わらずのトラブルメーカーっぷりを見せてきます。
 当然逆転裁判1~3で御剣の部下として頻繁に登場していたイトノコ刑事も、御剣の相棒キャラクターの一人として出てきます。その他にも名前がしっかり出ていなくても前作を遊んでいると”ああ、あの人だな”と気づかされる小ネタがあちこちに仕込まれていて、スピンオフ作品ならではの楽しみがあります。

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 逆転裁判シリーズでは、各話ごとに解決する事件が、最後には一つの大きな事件とテーマに繋がっていく伏線回収が醍醐味の一つです。「逆転の来訪者」でも、この流れはしっかりと汲み取られています。
 まず、この第1話ではヤタガラスという名の義賊の存在と、ヤタガラスが盗みの目的としていたKG-8号事件という事件の存在が明かされます。特にKG-8号事件の名前は、逆転裁判無印で作品全体を通してDL-6号事件が中心になっていたことを考えると、事件名を聞いただけで”この事件はきっと重要な事件に違いない”と察せられるのではないでしょうか。
 ヤタガラスの正体と、KG-8号事件の真相は、逆転検事の全5話をかけて追いかけていく謎になっています。

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 また、「逆転の来訪者」で話されている内容には、逆転検事で扱われるテーマに通じる話があります。それは、この事件の真犯人である優木誠人検事の検事としての在り方についての話です。
 逆転検事で語られるテーマの一つは、検事と刑事の信頼です。今作では、今ではすっかり仲の良いイトノコ刑事と御剣検事の出会いの話、そして今作で”検事”を目の敵にしており何かと御剣に突っかかってくるロウ捜査官との交流など、刑事と検事の関係性が描写されます。そんな中、優木検事とその相棒だった仲間戸刑事の関係は、優木検事の自分勝手さがうかがえる関係になっています。

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「(仲間戸刑事が)優木検事の部屋に来るのを何度か見たことがあるッス。いつも、優木検事のバスケの相手をしていたッス」
「楽しそうッスね! 一度くらい混ざりたかったッス」
「でも、いつもシュートするのは優木検事だけで……仲間戸刑事は、パスする役だったッスよ」

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「ずっと気になっていたのだが……。なぜキミは、被害者を”リョウ”と呼ぶのだろうか? 被害者の名前は”仲間戸 真治”なのだが……」
「ボクは、相棒を呼ぶときは、”リョウ”って決めてるんだ。”ユウキとリョウ”……ステキな響きだろ?」
「本名と全く関係無いじゃないッスか」
「”ユウキとシンジ”じゃしまらないからね。たしか”リョウ”は、彼で3人目だったかな」
(フン。まるで、ペット感覚だな……)

 特に優木検事の、「相棒の刑事を誰彼構わず『リョウ』としか呼ばず、個人として認識しない」点は、御剣と信頼を築く前の「検事を全員『検事』とひとくくりにして信用しない」ロウ捜査官に重なるところがあります。第1話では、信頼し合っている御剣検事とイトノコ刑事/信頼し合えていない優木検事と仲間戸刑事の、検事と刑事の関係性が対比として描写されています。こういった検事と刑事の信頼関係は、この後の話でも注目したい点の一つです。


■第2話「逆転エアライン」

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 御剣が第1話で自分の執務室に帰ってくる前の話が、第2話「逆転エアライン」になります。クリアしてから改めて時系列を見直してると、御剣検事、一週間もしないうちに事件に巻き込まれまくっている……。

 「逆転エアライン」では、第1話に引き続き逆転検事全体を通して解決すべき事件の一つ、密輸事件について触れられます。この密輸事件は、ヤタガラスが義賊として活動するきっかけとなっている事件です。

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 逆転裁判1~3では、第2話から本格的にシリーズ全体が動き始める印象ですが、逆転検事第2話はまだ登場人物の紹介と事件のさわりを語るに留まっています。その点で、物語全体の初動が少し遅かったかなと感じるところではありました。
 しかし、この第2話は、「主人公自身が容疑者として疑われる」「対立する立場にある検事の証言に矛盾を突きつける」など、逆転裁判でおなじみの展開を楽しむことができる話でもあります。特に、初めは御剣を容疑者だと疑っていた木之路いちるの疑いを捜査を通して晴らしていき、最終的に彼女にかけられた疑いも晴らしていく過程は、逆転裁判シリーズでメインとして描かれていた依頼人の無実を信じて疑いを晴らしていく過程に似た達成感があります。

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 また、個人的に逆転検事で好きなところの一つに、主人公の御剣がやたらとキャラの濃い女性陣に囲まれて振り回されがちなところがあります。逆転エアラインでは、仕事に真面目であるが故にどこかずれたところのある木之路や、全体的に緩い雰囲気でありながらその実かなり頭の回る女だった真犯人の白音、逆転裁判シリーズでお馴染みの妹弟子・狩魔冥に時折気圧される御剣が見られます。
 第2話以降も女性陣に振り回される御剣の図は続いていき、制作陣の中におもしれー女の群れに御剣をぶち込むことに心血を注いだ人がいるのでは?と思わざるを得ない勢いで、御剣が女性陣にたじたじになる度にずっと笑っていました。そんな中で本編に出てこないトンガリ頭弁護士幼馴染の匂わせを定期的にしている御剣は何なんだ……?

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 また、第2話までの事件を振り返ってみると、事件を担当しようとした検事が真犯人だったため真実を歪められる可能性が高かった事件や、大きな組織がバックについているため真相がもみ消される可能性が高い密輸事件など、裁判より前の現場で解決しなければ真実を完全に明らかにするのが難しい事件が扱われていると感じます。こういった事件について、第3話からは更に深く掘り下げられていきます。

■第3話「さらわれる逆転」

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 第3話「さらわれる逆転」は、逆転検事シリーズにおけるヒロイン・一条美雲と、御剣と対立する捜査官・狼龍士が登場し、物語が本格的に動き出す話です。逆転検事について話す時、この二人は欠かせない立ち位置のキャラクターです。


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 一条美雲は、第3話から登場して御剣の助手として活動する少女です。不思議な和装をした少女、明るいけれどどこか抜けている性格、しかし根底にある芯の強さ、亡くした家族を思う心など、逆転裁判1~3で成歩堂の助手を務めていた綾里真宵のイメージを彷彿とさせられます。
 美雲は御剣に出会った際、自分こそが二代目のヤタガラスだと名乗ります。ヤタガラスはたとえ義賊だとしても泥棒で、犯罪者ではないかと感じている御剣に、美雲は義賊としての心構えを語ります。

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「キミは大ドロボウだろう? どちらかというと、捜査される側では?」
「ああー! 分かってないなあ! わたしは大ドロボウ、ヤタガラスですよ! ”ヤタガラス”が盗むものは、たったひとつだけです。それは……”真実”ですよ」

 今作における美雲の立ち位置は、「”義賊”として真実を追いかける者」です。泥棒という犯罪者でありながら、その目的は御剣と同じになります。泥棒と検事。一見対立しているようで、その実目的を同じとしている二人の関係は、逆転裁判1~3で描かれていた弁護士と検事の関係に似ています。そういう意味で、逆転検事のヒロインが義賊の美雲であることには大きな納得があります。
 美雲の真実を追い求める心、そして彼女の父親についての話は、逆転検事を通して解決すべき謎に深く関わっていきます。こちらについては、第4話、第5話の項目でも話します。


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 狼龍士もまた、美雲に並んで第3話に登場するキーキャラクターです。彼は国際警察の捜査官で、検挙率ナンバーワンを誇る男だと第2話から存在がほのめかされています。

 第1話で軽く触れたとおり、狼は”検事”という存在を強く憎んでおり、御剣に対しても彼を”検事”とひとくくりにして敵意を向けています。その理由は、国際警察である狼一族が揃えた証拠品を多くの検事が捏造したせいで、一族全体が失脚してしまったからです。師匠である狩魔業が証拠の捏造を繰り返していた御剣にとっても、決して無関係ではない話です。今作、逆転検事は、”検事”を信用しなくなってしまった刑事である狼と、証拠を捏造する検事と道を違えた御剣が、お互いに信頼を築く話でもあります。
 御剣に対しては強い敵意を向ける狼ですが、部下に対する態度は頼りがいのある上司そのもので、大勢いる部下の一人一人を大切にしている様子が見られます。こちらに向ける態度こそ厳しいものの、きっと悪い人ではないんだろうと思わせられる、個人的に好きな場面です。

 また、狼のスタンスは「あやしい人間をかたっぱしから捕まえてしめあげる」という、かつての御剣と非常によく似ているものです。

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「アンタらの大好きな……ロジックだっけか? そんな机上の空論、必要ねえんだよ。あやしいヤツはかたっぱしから捕まえてしめあげる。それが、犯罪をセンメツする唯一の道よ!」

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「”罪のない”......? そんなことが、どうして私たちにわかる?
罰を逃れるためならば、彼らはどんなウソだってつく。
見わけることなんてできない。......それならば。
私にできることは、1つ。被告人を、すべて有罪にする。
それが私のルールだ」

  しかし、こういったスタンスを掲げる狼に対して、逆転検事における御剣は強い反発を示します。逆転裁判無印の御剣を知っていると、彼の口から「そんな横暴は許されない! コンキョのない捜査で容疑者を決めるなど……キミには、捜査官としてのプライドは無いのか?」と狼の主張をはっきり否定する言葉が出てくる様には心がじんとします。
 狼と御剣の、同じ事件を捜査する中で築いていく関係は、逆転検事で着目すべき点の一つです。美雲が逆転裁判1~3における真宵の立ち位置にあたるならば、狼は逆転裁判1~3でそれぞれ成歩堂と法廷で向かい合っていた、御剣や狩魔父娘、ゴドーなどの立ち位置にあたるキャラクターだと思います。

 事件を解いていくうちに、第3話では逆転裁判1~3に登場したキャラクターがファンサービスとばかりに沢山登場します。

逆転裁判無印5話「蘇る逆転」の証人だった腹灰巡査

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逆転裁判無印5話「蘇る逆転」の関係者、宝月茜

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逆転裁判1~3を通して(良い意味で)しつこく登場するオバちゃん

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 この他にも、本人が登場するわけではないものの、第3話の事件関係者に届いた借金の督促状が消費者金融カリヨーゼからの物であるなど、前作を遊んだプレイヤーであればニヤッとできる小ネタが沢山仕込まれている点も、逆転検事がスピンオフ作品として良質だと感じる理由です。
 完全に余談ですが、私は目が滑る文章を読むのがかなり苦手なので、腹灰巡査の証言を聞きながら「『蘇る逆転』でもこの人の証言を聞くのが本当に苦痛だったな……」という思い出が蘇りました。このように、メインのみならず登場回数がそれほど多くないサブキャラクターの口調まで違和感無く再現されているところも、逆転検事の凄いところです。

 二人のキーキャラクターが登場し、KG-8号事件の真相やヤタガラスの正体について切り込み始める「さらわれる逆転」ですが、この話で解決する事件の内容も、ただ単発の殺人事件というわけではありません。
 「さらわれる逆転」では、真犯人の狂言誘拐を手伝っていた女性の織戸姫子と、狂言誘拐の共犯者であり殺人事件の被害者である小倉真澄が、実は父娘の関係にあたることが明かされます。姫子と真澄が事件に巻き込まれた悲劇について、美雲はよく同情的な意見を口にします。

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 美雲がわざわざヤタガラスの「二代目」を名乗っているところからも、美雲が姫子に同情するのは、単に美雲が心優しい少女だからという理由以上に、父親を亡くしたという境遇が自分と重なるからではないかとこの時点で察せられます。逆転裁判シリーズでは、キャラクター同士の境遇をかけ合わせた描写が数多く見られるため、美雲と姫子の境遇もその描写を踏襲して重ね合わせているのではないかと思います。
 実際に、次の第4話「過ぎ去りし逆転」で話されるのは美雲が父親を亡くした事件の話です。第3話では、犯罪者の側面を持った父親が、自分の正体を明かせなくとも娘を大切に思う気持ちという、第4話の布石となるような話が成されています。

 また、第3話では大きな密輸組織と繋がっている天野河コンツェルンの代表という、大きな権力で罪をもみ消そうとしてくる犯人が相手になります。こういった人間は、法律で裁くのが非常に難しい悪人です。

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 他人に罪をなすりつける、お金にものを言わせて犯罪の証拠を隠滅する等、彼らの行動は裁判で嘘をつく証人よりもある意味で厄介です。そんな天野河親子を裁判に引きずり出す決め手となるのが、美雲の持っている義賊ヤタガラスの秘密道具「ぬすみちゃん」です。このような第3話の展開は、警察や法機関が存在する社会で、なぜヤタガラスが義賊として活動し真実を盗む必要があったのか?を分かりやすく表現しています。
 ヤタガラスの活動に関する話は、後述の第4話、第5話で詳しく書いていきます。

■第4話「過ぎ去りし逆転」

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 第4話「過ぎ去りし逆転」では、第3話の項目で話したとおり美雲が父親を亡くした事件について回想されます。そしてこの事件は、美雲と御剣たちが出会った事件であり、御剣とイトノコ刑事が初めて出会った事件でもあります。逆転検事では検事と刑事の信頼関係が描写されていると第1話の項目で書きましたが、今やお馴染みとなっている御剣とイトノコ刑事がいつどうやって知り合い、現在のような関係に至ったのかは、検事と刑事の信頼関係をテーマに据えるにあたって欠かせない話です。


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 御剣とイトノコ刑事の出会いは、刑事になったばかりで嬉しそうにしているイトノコ刑事へ「なにをはしゃいでいるのだ、このオトコは……」と呆れる御剣と、御剣の態度へ「若いクセに、ずいぶんエラそうッスね」と難色を示しているイトノコ刑事という、今では考えられないほど第一印象が良くないものになっています。特に、逆転裁判1~3では常に御剣を慕い捜査に協力していたイトノコ刑事が御剣や冥を「コども」と呼んで叱る姿は、今となっては想像も出来ないものです。しかし「過ぎ去りし逆転」で起こる事件を通して、御剣とイトノコ刑事は信頼関係を築いていきます。

 イトノコ刑事が御剣を慕う理由は、「過ぎ去りし逆転」で起きた殺人事件の容疑者として捕まりそうになっていた自分を、御剣が助けてくれたからです。この理由は、奇しくも逆転裁判1~3の主人公である成歩堂が、御剣と親友になったきっかけと非常に似通っています。
 逆転裁判無印の時点では、御剣は既に”被告人を全て有罪にする”というスタンスを確立しています。しかし、御剣が容疑者であるイトノコ刑事を問答無用で犯人だと決めつけませんでした。その理由も第4話の中で描かれています。

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(犯罪者は罪を逃れる為であれば、どんなウソでもつく……
あの刑事も、無実を主張するならば……
ロビーで警備をサボっていた、とでも言いそうなものだが)

 イトノコ刑事は確かに事件について証言するとき嘘をついていましたが、それは御剣が憎むような”自分が罪を逃れるための嘘”ではありませんでした。彼は、事件の被害者である一条検事の娘、一条美雲を守るために嘘をついていたのです。イトノコ刑事の嘘が自分本位のものではなかったからこそ、御剣は彼を犯人だと決めつけなかったのだと思います。
 御剣の、真実を見つけ出して無実の人間にかかった疑いを晴らす志。イトノコ刑事の、他人のためにバレバレの嘘をついてしまうお人好しな性格。これらが合わさって、今現在の二人の信頼関係は存在しているのです。

 第1話「逆転の来訪者」で触れたように、今作において刑事と検事のお互いへの呼び名は、信頼関係の表現に大きな役割を果たしています。第4話「過ぎ去りし逆転」では、それまで御剣を「アンタ」と呼んでいたイトノコ刑事が、最後に彼を「御剣検事」と呼ぶ言葉で回想が締めくくられます。今まで特に気にせず聞いていた呼び名が、実は大きな意味を持つものだったと分かる、個人的にとても好きな場面です。

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 また、「過ぎ去りし逆転」で描かれている検事と刑事の信頼関係は、これだけではありません。長年ヤタガラス関係の事件を追いかけている馬堂刑事と御剣の信頼関係も、この話で描かれます。

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 馬堂刑事は、ヤタガラスに関連する事件を担当している刑事です。それと同時に、KG-8号事件で被害者の護衛を任されていた刑事でもあります。つまり、逆転検事全体を通して解決する二つの謎のうち両方に関わっている人物です。それ故に、彼は美雲と狼に次いでこの物語で鍵を握るキャラクターとなります。

 イトノコ刑事と同様に、馬堂刑事もまた、新米検事でありながら現場の捜査を希望する御剣や冥に厳しい態度を取ります。結局現場の捜査権が御剣に移り、捜査を行えるようにはなるものの、馬堂刑事は情報の提供にかなり非協力的です。
 しかし、御剣たちが証拠を集め、真実を突き止めようとするうちに、イトノコ刑事が少しずつ御剣を見直していったように馬堂刑事もまた御剣たちへの態度を柔らかくしていきます。第4話の中盤には、それまでくわえていた煙草に見える棒が実は棒付きキャンディだったことを立ち絵で明かしつつ、逆転検事でずっと話題に上がっていたKG-8号事件の詳細について教えてくれます。このキャンディを持った姿を見ただけで、馬堂刑事がただ若い検事に冷たくあたる厳しいだけの人間ではないと分かるのではないかと思います。

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 馬堂刑事は、KG-8号事件の話に連なって、一つの問いかけを御剣に提示します。それは、「法の限界」についての話です。

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 馬堂刑事はKG-8号事件について、容疑者に有罪判決が下されるための証拠を掴んでいたにもかかわらず、担当検事の一条検事が密輸組織によって証拠を奪い取られてしまい、容疑者に無罪判決が下ってしまったのだと明かします。そのような、法廷に引きずり出すことができない悪が存在している現実を、馬堂刑事は「法には限界がある」と表現します。この「法の限界」に関する話は、第3話「さらわれる逆転」で触れた、法で裁くことが難しい悪人に対して、義賊ヤタガラスが盗んだ真実が決め手となるという話にも深く繋がっています。
 法に果たして限界はあるのか。法で裁けない悪に直面した時、人はどうすべきなのか。これらはヤタガラスの正体とKG-8号事件の謎を解決するにつれ、御剣が向き合っていく問題にもなります。

 「過ぎ去りし逆転」の終わりには、イトノコ刑事と同じく馬堂刑事もそれまで「コボウズ」「コムスメ」などと呼んでいた御剣と冥のことを名前で呼ぶようになります。相手の名前を呼ぶことが検事と刑事の信頼関係を表しているとは、馬堂刑事とのやり取りからも分かるかと思います。

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 そして、第3話で登場した逆転検事のヒロインである一条美雲との出会いも、「過ぎ去りし逆転」で描かれます。美雲は父親の一条検事に会うため裁判所にやって来ていたのですが、裁判が終わるまでの待ち時間の間にイトノコ刑事と仲良くなります。しかし、美雲は父親と約束ノート「知らない人と話をしてはいけない」と約束しており、この約束を破っていないことにするためにイトノコ刑事は証言で嘘をついていました。

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 約束ノートの内容からは一条検事の誠実な人柄が滲み出ており、特に五つ目の「知らないことは、知る努力をする」という約束には、逆転裁判1~3や逆転検事でも時折触れられる真実から目を逸らさないことの大切さに通ずるところがあると感じます。

 また、第3話「さらわれる逆転」で織戸姫子と美雲の境遇が重ね合わせて描かれていたように、「過ぎ去りし逆転」でも御剣と美雲、冥と美雲の境遇にそれぞれ重なるところがあるように描写されています。御剣と美雲には裁判所内で優秀な法律家の父を亡くしたという共通点が、冥と美雲には偉大な検事の父を持つ娘という共通点があり、二人とも少なからず美雲に共感の念を抱いています。

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 一条検事はKG-8号事件の担当検事だった他、ヤタガラス関係の事件を担当する検事でもありました。そしてもう一人、「過ぎ去りし逆転」で登場する人物が、ヤタガラスに関する事件を担当する弁護士である葛氷見子です。

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 彼女はヤタガラス関係の事件を担当する弁護士である他に、KG-8号事件で妹を亡くした人でもあります。つまり、馬堂刑事、一条検事、葛弁護士は皆、ヤタガラスとKG-8号事件に関わりのある人物です。
 「過ぎ去りし逆転」の最後に、葛弁護士は自分が一条検事を殺害した犯人であること、そして自分こそがヤタガラスの正体であると明かし、裁判所から逃走します。しかし、美雲は父親の遺品を整理しているうちに、自分の父親――一条検事こそが本物のヤタガラスであると知り、偽物のヤタガラスを名乗る葛弁護士を捕まえるために活動しているのだと御剣とイトノコ刑事に話します。葛弁護士らとの因縁は、逆転検事最終話にあたる「燃え上がる逆転」まで続きます。

■第5話「燃え上がる逆転」

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 第1話から第4話までに登場した事件とキャラクター、そして逆転検事という作品のテーマが総括される最終話が、第5話「燃え上がる逆転」です。とある大使館で起こった事件をきっかけに、今作を取り巻く謎の真実が明らかになっていきます。


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 まず初めに、ヒロインの美雲を中心としたヤタガラスの正体について書いていきます。
 大使館で起きた事件を調査するうちに、御剣たちは狼の部下としてずっと彼に付き従っていた女性・シーナこそが事件の最有力容疑者であると結論づけます。そして、彼女の証言を追究していくうちに、シーナの正体が「過ぎ去りし逆転」で因縁を残したままだった葛氷見子その人だと分かります。
 追い詰められた葛氷見子は、美雲を人質にとりながら衝撃の真実を明かします。それは、ヤタガラスの事件を担当していた馬堂刑事、一条検事、葛弁護士の三人こそが、ヤタガラスの正体だという真実です。そう考えれば、事件を解決すべき刑事・検事・弁護士の全員が、証拠を隠蔽していたのですから、ヤタガラスが捕まらないのは当然です。
 この真実こそが、美雲が目を逸らしたくとも逸らしてはならない真実になります。彼女はヤタガラスの正体に大きなショックを受けますが、「知らないことは、知る努力をする」とは生前美雲が父親と交わした約束でもあります。美雲は葛がただ冷酷にヤタガラスとして共に活動していた一条検事を殺したわけではないと理解し、ヤタガラスの意思を引き継いで目の前で起きた事件の真相を突き止めると心に決めます。


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 次に、第1話「逆転の来訪者」から触れてきた、検事と刑事の信頼関係についての話です。「燃え上がる逆転」で、狼は故国を腐敗させた原因である犯罪組織のボス・カーネイジ大使を御剣と共に追い詰めます。
 第3話「さらわれる逆転」では終始御剣と対立していた狼ですが、第5話では密輸組織のボスであり殺人事件の真犯人である共通の敵を前にして、共闘することになります。また、狼が毛嫌いしていた”検事”の手を借りるきっかけとして、腹心の部下として傍にいたシーナが敵のスパイだという真実を御剣が見つけ出したことも大きいのではないかと思います。

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 第5話で真犯人にあたるカーネイジ大使は、”大使”という立場上治外法権などの権利に守られていて、法で裁くことが非常に難しい相手です。そんな相手の周辺を調査し、証拠を掴むため、狼は他の人物を疑っているふりをしてカーネイジの部屋を調査する許可を取るといった芝居をします。そしてその芝居によって、御剣は事件を解き明かすため推理を組み立てます。現場で証拠を集める刑事と、法廷で証拠から真実を見つけ出す検事の関係は、正に信頼関係と呼ぶに相応しいものです。

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 「……検事さんよお。オレには分かってたぜ。
この部屋を捜査して証拠を探し出すことができれば……
アンタの”ロジック”が、真犯人の姿を浮かび上がらせるだろうってな」
「フッ。刑事が捜査で集めた証拠を、検事のロジックがつなぐ……
それが、あたりまえの”検事と刑事”のありかただろう?」

 その他にも「燃え上がる逆転」での御剣と狼の信頼関係は、御剣の推理の矛盾を狼がわざと突いて推理をより完璧なものにするといった法廷で検事と弁護士が行うものに似たやり取りや、優木検事と仲間戸刑事・御剣検事とイトノコ刑事・御剣検事と馬堂刑事などを通してずっと描かれてきた相手の名前をちゃんと呼ぶ形でも表現されています。特に、それまで御剣を”検事”とひとくくりにしていて、「アンタ」と呼んでいた狼が、満を持して御剣のことを「御剣検事」と呼んだ時の感動は忘れられません。

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 逆転裁判1~3を遊んだ時には特に意識せず見ていた検事と刑事の信頼関係がどういったものなのか、今一度言葉にして表しているこの会話が、私はとても好きです。


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 カーネイジ大使は、立場上法で裁くことが難しい上に往生際が悪いといった難敵です。彼のことを美雲は「失いたくないものや譲れないものが無い人間」と評しています。
 そんな相手へ言い逃れのきかない証拠を突きつけ、法廷に引きずり出すまでの戦いは、正にオールスター戦と呼べるようなものになります。御剣と冥の追究、ヤタガラスと美雲が守り通した証拠、狼のコネクションをフル活用した大使解任、もう一人の大使ダミアンによる説得、イトノコ刑事の現場捜索、果てには矢張とオバちゃんの一見トンチンカンなように見えて実は大きな意味も持つ証言など、その場にいる人たち全員で敵を追い詰める間は常にワクワクしっぱなしでした。

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 そして、最後の最後、カーネイジにトドメを刺すのが逆転裁判シリーズでお馴染みの逆転の発想であり、7年前に美雲の父親が法で裁けない悪を裁くために盗み出したヤタガラスのカギであるのも、「逆転検事」というタイトルの作品の締めくくりとして相応しかったと思います。

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 このような法で裁くのが難しい悪人を目の前にして、御剣は第4話で言及された「法の限界」について今一度考えることになります。ヤタガラスが隠蔽していた違法な証拠を使えばカーネイジを追い詰められる場面で、御剣は悩みます。真相を求めれば正義を失い法を破ってしまう。しかし、法を破らない正義を求めれば真相が失われる。それに対して御剣は、自分なりの答えを出します。

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(法に限界はない。それは、人が定めた限界だからだ。
人が限界を乗り越えたとき、法もまた、限界を超える!)

<真実>を求めつづけること。そして……
<法の力>と、それを用いる<人の力>を信じつづけること。
それこそが、検事という生き方を選んだ私の……新たなルールなのだから。

 逆転裁判無印で、御剣は「犯罪者は罪を逃れるためにどんな嘘でもつく。その嘘を見分けることなんて出来ないから、被告人はすべて有罪にする」と人を疑うスタンスを取っていました。それに対して、逆転裁判1~3と逆転検事での出来事を通して御剣が選んだのは、人を信じる道です。かつて学級裁判で無実の級友を信じたところに端を発し、弁護士を、刑事を、そして法律の力とそれを用いる人の力を信じながら検事として歩んでいく御剣の姿は、とても眩しく映ります。
 また、御剣のこの答えは本作のヒロインである美雲にも関わってきます。

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「……お父さんが選んだのは、<真実>のために戦うコト。
わたし、それが”ギゾク”ってことだと思う。
だからね、ミツルギさん。わたしが盗むのは……隠されてしまった<真実>。がんばって”ヤタガラス”が活躍しないですむ世の中にしてね!」

 かつてヤタガラスが世間を賑わせていたのは、本来ならば裁判で明かされるべき真実が、法廷にやって来る前に隠されてしまっていたからです。そういった事態が起こらないために、司法に関わる人間が真摯に真実を追究する必要があるのだと、義賊の志を胸に刻んだ美雲の存在は示しています。
 逆転検事は、逆転裁判1~3のスピンオフ作品として丁寧に作られた良質なゲームであると同時に、「悪人を裁く法の限界」「検事と刑事の信頼関係」といった御剣が主人公だからこそ扱えるテーマが上手く描かれた、完成度の高い作品だったと感じます。


 



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