FF10を遊んでアーロンに膝をやられるまで|FF10ネタバレ感想
皆さんには所謂「推し」がいるでしょうか。また、「推し」を好きになったのはいつどんな瞬間でしょうか。容姿に一目惚れした時か、ものの考え方に惹かれた時か、何かしらのパフォーマンスにひきこまれた時か。
私は自分のファンボから握手を求められて、満更でもない感じで握手に応じる姿を見た時です。
先日不朽の名作と名高いFINAL FANTASY Ⅹをクリアしました。親子関係が好きな私にフォロワーさんが勧めてくださったのが遊ぶきっかけだったのですが、何年経っても色褪せない物語を主人公のティーダと一緒に楽しみ、時に大号泣しながら体験することができました。この文章はほぼ半日かけてラストダンジョンをクリアした翌日~翌々日にかけて書いているのですが、泣き過ぎて目と鼻が痛いです。ラスボス戦からエンディングまでで余裕でティッシュ一箱無くなりました。泣き過ぎ。
物語全体の好きなところや、各キャラクターの細かい好きなところは別の機会に綴ろうと思っているのですが、クリア後の興奮が冷めないうちに特別好きになったキャラクターについてだけでも書き残しておこうと思い筆をとりました。今回主に書くのは、FF10に登場するパーティーメンバーの一人、アーロンについてです。
序盤にアーロンが登場した時は、何となく訳知りっぽくて主人公のティーダと長い付き合いっぽいイケオジという印象だったのですが、物語が進み様々な事実が明らかになるうちに、この人……もしかして想像以上にティーダ&ジェクトの親子と深い関わりがあるのか……!?と発覚し、かわいげなどを目の当たりにして好きになり、終盤にかけて一気に畳みかけられ情緒という情緒がハチャメチャになりました。
主にFF10クリア後にクチャクチャになった心の整理も兼ねて、どういった過程でアーロンを好きになっていったのか言葉にして残しておきたいと思います。約一ヶ月半かけてFF10をクリアしたツイートはここにまとめてあります。
この先FF10のネタバレを大量に含みます。ご留意のほどよろしくお願いします。
1.アーロン、自分のファンボに出会う
私がアーロンを好きになったきっかけの話です。ユウナよりも先んじて寺院を巡る旅をしていた召喚士・ドナのガードをしているバルテロが、伝説のガードであるアーロンのファンで、「あんたに憧れてガードになったんだ!」と声をかけてきます。ドナとバルテロの嫌味な先輩召喚士とその取り巻きというイメージだった二人の印象が一気に変わるのも、この話の好きなところです。
自分のファンに声をかけられ握手を求められたアーロンは、そういったファンサービスは頑なに断りそうな硬派な雰囲気を普段漂わせているにもかかわらず、フッ……と笑って握手をしてあげます。この瞬間私は、アーロンって自分のファンに握手とかしてくれるんだ!?の気持ち、私もアーロンに握手してほしいが!?の気持ち、何ならティーダがザナルカンドでファンの子にしてたみたいにサインもしてほしいが!?の気持ちに襲われました。欲しい……伝説のガードジェクトとアーロンとシンを倒した伝説の召喚士ブラスカのサイン……。
”硬派なイケオジ”だと思っていたアーロンの意外なギャップにやられた一連の流れですが、アーロンは最序盤にティーダへ「他でもない、これはお前の物語だ」と熱血な語彙で言い放つなど、思い直せばずっと熱い男だったな……と思います。後述しますが私はアーロンの今も昔も熱い心を持ち続けているところが大好きなので、この話が無くてもアーロンを好きになるのは時間の問題だった気がします。
2.アーロン、ティーダとの良質やり取りを次々にお出しする
アーロンってさ……なんかいいよね……とクラスで可愛い女の子が気になり始めた思春期男子のような心を持ち始めた頃、更に追撃を食らったのがティーダとのやり取りです。アーロンに注目するうち自然とティーダとの会話にも目がいって、二人の会話で追い打ちを食らうようにええ~~~!? す、好き~~~!!と敗北し始めました。特に印象に残っている会話をいくつか紹介します。
「急いで待て、という言葉がある。手早く準備をととのえてから次の状況を待て ということだ」
「その言い方 おっさんくさいぞ」
「悪かったな」
ティーダにおっさん呼ばわりされて露骨に拗ねるアーロンに、な、なんだそのあざとい挙動は……とおののいた会話です。このあと続けてアーロンに話しかけると無言でフイッ……と顔を逸らされて、「怒るなよ~!」と宥めるティーダの会話まで聞けます。なんだそのあざとい挙動は……(二回目)
ティーダとアーロン、お互いにちょっと雑なやり取りをしがちなのがたまらなく好きですし、ムッとすること言われたらちゃんと相手に対して不機嫌になるのも大好きです。付き合いの長さと親しみを感じてぐじゃぐじゃになります。
「具合はどうだ?」
「あんたには関係ないだろ!」
「あの人に死なれては俺も困るのでな」
「母さんが死ぬって言うな!」
「……悪かった」
ティーダとアーロンが夢のザナルカンドで暮らしていた時の過去回想はいくつか出てくるのですが、特に好きなのは衰弱していく母親を見守るティーダに声をかけるアーロンのくだりです。子供相手に言葉選びを間違えて、素直に悪かった……と謝るアーロンの不器用さに顔面がしわくちゃになります。
この辺りで私はようやく「アーロンってジェクトやティーダと同じザナルカンド出身なんじゃなくて、元々スピラ生まれの人なのか!?」と気づき、「ほとんど異世界みたいな土地で亡くなった友人の息子の面倒を十年近く見てたアーロンって義理堅過ぎないか……!?」と気づき、アーロンの友情への熱さに頭をやられていきます。
今現在のティーダとアーロンが気安い関係なのを思うと、出会った時のぎくしゃくした会話も趣深いな……と感じます。ちいこいティーダがアーロンに対してちょっとずつ態度を軟化させていく過程、見たい!!!!(祈り子の夢)
「……いじわるだよな あんた」
「なんだ?」
「おっさんと走っても楽しくない!」
「間違いが起こらないようにな」
「なんだよ それ」
「話を複雑にするなということだ。うまく立ち回れなくなって……泣くぞ」
「よけいなお世話だっつうの。……あんたの言うとおりかもな」
「おまえの年頃で……なにも間違いをおかさないのもつまらんがな」
「どっちっスか!」
リュックがアルベド族であることがバレてワッカと険悪な雰囲気になるのをアーロンが「放っておけ」といなし、リュックとルールーがスノーモービルに二人乗りして去っていくのを残念そうに見送るティーダが映ってからの会話です。話の流れが流れなのもあって、アーロンがティーダの女性関係について話しているようにも、仲間内でのアルベド族に対する認識の齟齬について話しているようにも聞こえるのが味わい深いです。
アーロンって意地悪だよな~と思ってるティーダにも、意地悪(=パーティーメンバーに自分自身で物事を決断してもらうためにわざと多くを語らないし判断を委ねがち)しながらティーダの青さを良く思ってもいるアーロンにもオホホホホ最高だねえ……と高笑いが漏れてしまいます。ティーダにあんたって意地悪だよなと言われながら、「立ち回りを間違えたら大変になるぞ」「それはそれとしてお前くらいの年で間違いを起こさないのもつまらんがな」と間違わなければいいのか間違えばいいのかわからない、これまた意地悪なことを言うアーロンと、それにまんまと振り回されるティーダで会話が終わっていくのがかなり好きです。じゃれるなじゃれるな。
「さて……どうしたものかな」
「あんたってさ……とりあえずやってから考えるって感じだよな。いいトシなんだし みんなたよりにしてるんだしさあ……」
「説教か?」
「そういうわけじゃないッス。感想ッス」
「他人にたよるなとまでは言わんが……たよって当然 守られて当然とは思うな。そんな人間にはなるなよ」
「説教ッスか」
「助言だ」
“伝説のガード”として頼られる立ち位置になりそうなアーロンがまあまあその場その場で動いていることを疑問に思ったティーダの話です。「たよって当然 守られて当然とは思うな」のくだりは、誰に決断を委ねるでもなく他でもないあなたの物語を歩んでいく人たちを描いたFF10において殊更大切な言葉であり、同時に現実の日常生活においても大切な言葉だと感じます。困った時は誰かに頼っていいと説く作品は沢山あっても、頼って当然だと思ってはだめだよ、というところまで説く作品を見たのが初めてだったので物語のテーマに沿ったこの言葉が特別心に残りました。
ティーダとアーロンの「説教か?」「感想ッス」→「説教ッスか」「助言だ」の軽やかなテンポも含めて大好きな会話です。この二人の間の軽口、物凄く仲良しって感じじゃないんだけど確実に一段深く心を許してる人にしかできない仕草で、絶妙にノッてて好きですね……。
ティーダとアーロンの関係性、総じてかなり大好きなのでアーロンが好感度一位になったらFF7でいうゴールドソーサーで一緒に観覧車に乗る的なイベントがあったらうれしいな♪と思っていたら色々とそれどころでは無さ過ぎて泣きました。でもアーロンから見たティーダが友人の忘れ形見で、十年間一緒に過ごした知己で、旅を共にする仲間で、かつての自分と同じ青さを持つ若者で、自分が見つけられなかった無限の可能性を見つけて叶えられなかった夢を叶える存在だったから……それでいいんだ……最高関係性なんだ……。
3.アーロン、ジェクトのスフィアに映る
ジェクトのスフィアの存在を知った瞬間、何!?!?こんな親子愛の塊みたいな代物がこの世に存在していいのか!?!?と息巻いて探しに出かけた結果、親子愛と同時に~アーロンとジェクトとブラスカのドタバタ珍道中~映像にぐにゃぐにゃにされました。死出の旅の道中にもかかわらず心の底から楽しそうに笑ってるブラスカ様の笑い声が眩しい……。
初めは相性最悪だったジェクトとアーロンが絆を深めていく過程を断片的にでも見られたのが嬉しかったですし、アーロンがジェクトのしみしみ親子愛シーンを的確にスフィアに残してくれているので命が助かりもしました。アーロン、諸々平和な謎世界線だったらジェクトとティーダのホームビデオを撮影する係やっててほしい(?)
どのスフィアの映像も大好きですが、雷平原の映像を息子に見せてやろうとするジェクト!「何で俺がこんなことを……」と怒りつつ雷に直撃するジェクトを見て面白がるアーロン!二人のやり取りに楽しそうに笑うブラスカ!の、パーティーメンバーが仲良くなり始めて一番楽しい時期の映像が特に好きかもしれません。でもシパーフ乗り場で酔っ払ったジェクトが暴れた後のやり取りも、今のアーロンが楽しそうに振り返ってたの込みでかなり好きだな……選べないな一番を……。
ザナルカンド遺跡で見られるブラスカ達一行の追想シーン含めて、前作主人公パーティーやってるアーロンたちの場面が大好きです。今のユウナ達一行の旅では一人だけ一歩引いたところでものを見てて冷静に見えるアーロンが、ブラスカ達と旅をした時は一番ブラスカの死に対して感情的になってたの、良過ぎるんですね……。
アーロンが頻りにティーダとユウナへ「ジェクトの息子だな」「ブラスカの娘だな」と言っているので、ティーダ・ユウナ・アーロン↔ジェクト・ブラスカ・アーロンの三人が対比になっているのかなと思うですが、究極召喚によって召喚士が命を落とすのをどうにか止めようとしたり、ユウナレスカへの「ふざけるな!!」の言葉が重なったりするあたり、ティーダとアーロンにも近しいところがあるのかもしれないなと思います。
4.アーロン、パーティーメンバーへの好感度が高まる
シーモア老師を止めるため一人犠牲になろうとするキマリを、アーロンはその覚悟を汲んで置いていこうとするのですが、リュックのアルベド族騒動をひと山超えて一段と絆が強まったパーティーメンバーはアーロンの意見を押してキマリを助けにいきます。この話の前にアーロンが「人を頼って当然だと思うな」という話をしていただけに、伝説のガードであるアーロンの意見に唯々諾々と従うのではなく自分たちでキマリを助けに行くと決めて駆け出すパーティーメンバーは、アーロンが好ましく思うタイプの人たちなんだよね……を強く感じられて大好きです。FF10のパーティーメンバー、皆が皆それまで知らなかったことを知りながら痛みと共に自分の物語を生きていく人たちで……大好き……!!
私はフィクション作品における、時に非効率的で無駄かもしれない主人公たちの善性が大好きなのですが、キマリのもとに駆けていく仲間達の背を見て満足気に笑ってから自分も駆け出すアーロンからは私が好きだと思う善性を良いものだと思ってくれているのが伝わってきて、お前のことが好きだが……!?!?となります。
5.アーロン、鬼かっこいい口上を叫ぶ
「さあ どうする! 今こそ決断する時だ
死んで楽になるか 生きて悲しみと戦うか!
自分の心で感じたままに物語を動かす時だ!」
自分の目と耳で真実を知って、死の世界に逃げるか過酷な現実を生きていくかをパーティーメンバーに問いかける鬼のようにかっこいい口上です。ここまでの流れでアーロンのことを好きにならない方が無理では……?と完全に膝を折った瞬間でもあります。私はずっと後方から訳知り顔でついてきているアーロンに、定期的に「何か知ってるなら吐けーっっっ!全部話せーーー!!」となっていたのですが、誰かに教えてもらうんじゃなくて自発的に真実を知ることで自分の物語を動かさなければならないからアーロンは全部知ってても何も言わなかったんだよ、と改めてこの場面で知らしめられた気分になりました。
この時といい最後の異界送りの時といい、アーロンはこれからの未来を生きていく人々の背を押す言葉をかけるのですが、ここまで熱く皆を鼓舞してくれるのは、先述したとおりアーロンが旅の道中でパーティーメンバーへの信頼を大きく高めたからじゃないかな……と思います。この口上を口にしてくれるアーロンも、アーロンにこの言葉を言わせるだけの旅路を歩んできたパーティーメンバーのことも改めて大好きになります。
6.ラストバトル~エンディング
体中の水分が枯れるんじゃないかと思うくらい泣いたラストバトルからエンディングまでの展開ですが、最後までアーロンの猛攻が緩むことはありません。
ジェクトの方は気安く言ったつもりであろう「遅えぞ、アーロン」の言葉に重々しく「……すまん」と返すあたり、長い間待たせたことにかなり責任を感じているんだろうな……とか、
ジェクトが倒れるのを見て前に出ようとするけどティーダが飛び出していくのを見て踏みとどまるのが今を生きてるティーダと過去にジェクトの仲間だったアーロンの構図がバリバリに効いてていいね……とか、
異界送りされる時にかつてユウナを預けた相手であるキマリの胸を軽く叩いていくのズルない!?!?!?!?とか、
その後視点がアーロンのものになってじっとティーダを見てから「十年待たせたからな」てお別れを言うの……ズルない……!?!?!?!?とかとにかく怒涛の勢いです。アーロンがブラスカとジェクトを待たせた十年間をずっと一緒に過ごしてきたティーダにこれを言うのがね……良いよね……。
ユウナレスカ戦前の口上に引き続き、最後にパーティーメンバーへ告げる「もうお前たちの時代だ」が未来を生きる人たちの背を押す過去の英雄として花丸満点で良かったですし、アーロンがこうやって未来を託せる仲間に出会えて良かったな……とも思います。ジェクトとの親子対決ラスボス戦やお世話になった召喚獣とのお別れやティーダとユウナ及びパーティーメンバーのあまりに辛過ぎるお別れでただでさえ情緒が忙しいのに上乗せしてくるんじゃない!!とエンディングを見ている間二周くらい回ってしんどかったです。
今までになく取り留めなくアーロンのここ良かったよね……を書き殴りましたが、まとめると
・クールなイケオジと思わせてめちゃくちゃ熱い男なところ
・ジェクトやブラスカ、キノックといった友人に対して義理堅いところ
・チョコボを食べる魔物を倒そうとするジェクトの行動やキマリを見捨てない仲間達の行動といった善性を好ましく思って付き合ってくれるところ
・死人が世界を導いたり世界を救済したりしようとするスピラで、徹底して今を生きる人間の背を押す死者であろうとするところ
・ちょいちょい拗ねたりファンボの握手に応じたりしてかわいげを見せてくるところ
・前作主人公パーティー仕草を余すところなく見せてくるところ
あたりが特に好きだったなと思います。多いな。
FF10、とっても面白かったし好きなところが沢山あるので、冒頭に書いたとおり別の機会に色々感想をまとめたいな~と考えています。ゲームもまだまだやり込み要素が残っているので出来るところまでやり込んでみたいです。
雷避け200回とチョウ集めからうっすら目を逸らしつつ、クリア直後の感情を書き散らした記事を終えたいと思います。


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