幻想の糸が運命を紡いだのは間違っていただろうか


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作:Xの足跡
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【静寂】と同じ音の女神


更新頻度は遅いです。1年に1度もありえます。


 かつて眷属の物語(ファミリア・ミィス)を紡いだ神は言ったわ。この世界はゲームの様なものだと。

 

 ダンジョンがあって、ステイタスがあって、未知と娯楽を求めて下界に降りてきた神々が作る【ファミリア】の在り方はまるでシミュレーションゲームとストラテジーゲームを掛け合わせたかの様。

 

 だからこの時まで私も忘れていたわ。

──負けイベントって、RPGだけのものじゃなかったのね。

 何かが壊れた音がした。

 

 

 男神(ゼウス)女神(ヘラ)のファミリア連合は『隻眼の黒竜』の前に敗北した。

 ただ一柱の神を除いて、誰もが【最強】と【最凶】によって『救世(マキア)』が果たされると信じて疑わなかった──

 

「──『だけど、黒竜討伐は失敗に終わった。最強の眷属は蹂躙され、生き残った者達は()()()()()。それまでに『神時代』が積み上げてきたものは無意味になった』そう()()()()()()()んでしょう?アルフィア」

 

 妖しい笑みを浮かべて『竜の谷』を訪れた女神にヒューマンの女、アルフィアが返したのはたった一言(ワンワード)、すなわち──

 

「──【福音(ゴスペル)】」

 

 轟き渡る低重音、その音の塊によって吹き飛ばされた女神は空中で体勢を整えると静かに着地した。

 

「なんだ貴様は、私の声で喋るな。不快だぞ」

 

「ふふ、それでこそ最凶(ヘラ)、オラリオを去っても何も変わらないのね。最強(ゼウス)の貴方も」

 

 女神は笑みを絶やさず、この場にいるもう一人に話しかけた。

 

「……お前の事は僅かに覚えている。名は確か、カフカだったか。俺の主神が気にかけていたのを覚えている」

 

「ヘラに聞かれたらまずい冗談はよしてくれるかしら、ザルド」

 

冗談ではないのだがな。それより、どうして女神が護衛もつけず一柱(ひとり)竜の谷(こんなところ)にいる?」

 

 ザルドは冒険者の様な動きを見せたカフカにこの場を訪れた神意(わけ)を訪ねた。

 この地は『竜の谷』、大精霊の『精霊の嵐』によって封印されていると言えど黒竜が生きる領域だ。

 

「千年が経った」

 

「「!!!」」

 

 千年、それは『神時代』が始まってから今日まで積み上げられてきた時間だ。同時に、ゼウスとヘラが黒竜に敗北した事で無駄になってしまった時間でもある。もっとも、嘗ての最強達(ザルドとアルフィア)は言われずとも己の無力感と共にそれを理解しているだろう。

 

「『道化』が踊り、『英雄神話』を始めてから千年が経った。いえ、千年()経ったと言った方がいいかしら。私は子供達の死後に関わる仕事はしてないからそこまで詳しい訳じゃないけど、下界の子供達が生まれ変わる感覚は千年程度だったはずよ」

「『最後の英雄』を育てる気は無いかしら?」

 

「「……!?」」

 

 

 意外と早く終わったわね。ちょっとだけビックリしたわ。けどコレで『静穏の夢』に世界は傾いた。

 ……やっぱり『脚本家』の様にはいかないわね。とりあえず通称『ベル子』セットは揃えておこうかしら。

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