タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 座敷童は彼方の守護霊ではないので初投稿です。



安心しろ、乙女ゲーのイケメンだぞ。

「えっと……。棗ちゃん、人にはそれぞれ向き不向きっていうものがあると思うんだ。棗ちゃんはほら、属性スキルを使うのが上手だし、ムリに武器スキルの熟練度を上げなくてもいいんじゃないかな〜、なんて……」

 

「いいえ、真白さん。確かに長所を伸ばすことは大事です。だからこそ私も得意とする投擲スキル、風属性スキル、雷属性スキルを幼少の頃から鍛えていました。しかし、先の戦いでは……もしもあのとき、無銘さんが同行していなければと思うと、現状に甘えるワケにはいきません」

 

「いや、まぁ、私も彼方くんがフォローしてくれなかったら、いまごろ私のほうが病院に入院してたのかな〜とは思うけど。もっと火属性のスキルを鍛えておけばよかったな〜とか思ったけど」

 

「それなら私の考えも理解してくれますね? 暮間の巫女として、鵺の加護を持つ巫女として、常に研鑽を怠らずと心掛けていたつもりでしたが、それはただの自己満足でしかありませんでした。本物の戦場で求められるのは────」

 

 すっごいよくしゃべってる! 

 

 クールで知的な雰囲気だった女の子がだいぶ印象が変わっちゃったな〜? などと思いながら真白が鵺のほうに視線を向ければ、そこには驚きや困惑などの気配ではなく、むしろ真剣味の増した様子で棗を見守っている姿がある。

 ひとまず言いたいことを言い終えたのか、迷宮攻略の準備をしてきますと鵺を残して棗が歩き出した。少しだけどうしたものかと迷う真白であったが、鵺が自分にも見えるようにしているということは、なにか話したいことがあるのだろう……と、一応声を掛けてみた。

 

「なんか……スゴいね、熱量」

 

『悪ィが付き合ってやってくれ、朝比奈真白。棗なりに色々あって色々考えた、それはテメェも知っての通りだがよ……あ〜、なんだ。怒らねェで聞いてほしいんだが……暮間の本家からな、その、小僧の戦ぶりを軽んずるような通達がよォ……』

 

「いまの学園の空気みたいに?」

 

『まぁ、な。加護すら持たぬ学園の侍如きで退けること敵うなら、伝え聞く蜂眼坊なる鬼も暮間の敵ではない……ってよ。神霊・鵺が認めるが、あの時の小僧は暮間のボンクラなど足元にも及ばぬ真の侍だった。迷宮から離脱してなおダメージが残るほどの無茶をしても巫女を無事に守護り通した。それを何も知らぬ連中に好き勝手に言われたのではな。いくら己が暮間と共にあるとはいえ、さすがにこればかりは神霊として擁護できねェ』

 

 ひとつだけ嘘がある。鵺は彼方が冥界童女に取り憑かれているのを知っている。だが事実として加護なんて無いに等しいので言わないだけで。

 

 そんな鵺の話を聞いている真白もひとつ、勘違いがあると確信している。彼方の()()()()に慣れている真白にしてみれば、巫女を守るためではなく自分の力を試すために前に出たことなどお見通しであった。

 必要なことは自分の身体に刻み込んで覚えろというストロングスタイルで戦い方を学ばせる彼方が貴重な“学習の機会”を潰すとは思っていない。鋼蜂の能力をネタバレした時点で師匠としてのケアは終わっていた、その情報を活かしてあとは自分たちで最善を尽くしてみろというメッセージとして真白は受け取っていたのだ。

 

 だからこそ自分の番が巡ってこなかったのは残念だったが……相手は師匠の死に様を天晴として敗北を認めたのだ。それを弟子が背中から斬り掛かるような真似をするなど無粋の極み。

 奴を斬るのであればあの仕込み錫杖ごと真っ向両断せねばならぬとの想いから矛を収めることにしたのだ。そんな真白の内情を知れば彼方は「いやその理屈はおかしい」と頭を抱えることだろう。優秀な死にゲー指導者の教えがしっかり血肉となっている証拠である、喜んで諦めろ。

 

 ま、当然ながらそんなことを考えちゃうスーパーヒロイン真白ちゃんにしてみれば学園の空気はすこぶる面白くない。面白くないが……自分よりずっとイライラしている棗を見ているせいで逆に冷静になってしまっていた。

 ついでに凪菜から彼方のリハビリのために学園の外に連れ出してトレーニングしてくるという報告があったので、特にキレ散らかすようなことはなく冷静な対応ができている。もちろん表面上冷静なだけで学園上層部への信用は特価大廉売となり消え去った。

 

 

 ちなみに、彼方の友人知人たちは。

 

 教師

「え〜、無銘のヤツは回復したがリハビリのために何日か学校を休むらしい。本人からは負けて入院するほどボロボロになった精神的ショックと、学校の雰囲気が辛いから気持ちを整理する時間が欲しいと連絡があったが……」

 

 クラスメイト

「「「「絶対に嘘だ」」」」

 

 これが信頼と絆の力であるッ!! 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 知り合ってまだ日は浅いが気分は同門の姉弟子と妹弟子。本人のやる気があるなら尊重するべきだろうと棗の武器スキル上げの手伝いを了承した真白だが、さすがに蜂眼坊の襲撃のこともあってソロでのブッ込みは推奨するべきではないと思い留まった。

 こういうときに頼りになる無銘兄妹はリハビリという名の修行中。先輩巫女の雅は接近戦は専門外。ならばどうするか? そこはヒロインに許されたご都合主義の出番である。学園側からも迷宮攻略時には護衛として連れ歩くようにと指示があった四神の侍チームに協力を頼めばいい。

 

 

 と、いうことでパチポチとメッセージを送信して待つことしばし。

 

 

「あれ? 増永くんは?」

 

「申し訳ありません……ちゃんと声は掛けたのですが……」

 

 連絡先は交換していたがイチイチ全員にメッセージを送るのが面倒だった真白は、記号や絵文字などでデコらなくても誠実に対応してくれるであろう静流にメンバー集めを頼んだ。業務連絡は効率が大事なのである。グループチャット系のアプリ? もちろん知ってるし使ってるけどそれがなにか? 

 しかし現場にやってきたのは静流と大地と風魔の3人。火属性スキルと剣属性スキルを担当する紅蓮の姿だけが見当たらない。プライベートな遊びなどの誘いならばともかく、強くなるための特訓であれば参加してくれるだろうと期待していたのだが……。

 

「紅蓮のヤツ、ひとりで巨門の迷宮に行く予定があるって言っててよ。まぁ、四神の加護持ちってことで一括りにされちゃあいるが、アイツはトレーニングなんかもひとりでやってること多いからなぁ」

 

「いつものこと、と言えばいつものことではあるのですが……ここ数日の紅蓮くんはなんというか、少々気が張り詰めているようなんです。トレーニングに熱が入って昂っているだけだ、と本人は言っていましたが」

 

「ふーん……?」

 

 

 ①そのときの様子を詳しく聞く。

 ②自分で直接話に行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ①404 not Found

 ②404 not Found

 →③時間が勿体ないので放置する。

 

 

「残念だけど、予定があるならしょうがないね! それじゃあ棗ちゃんの特訓と、ついでに私の特訓のために、禄存の迷宮に行ってみよう!」

 

「いいのか? 朝比奈。いくら浅い階層で試すったってよ、紅蓮のヤツがいないってのは戦力としちゃあ」

 

「学園からはイロイロ言われているけどさ……いくら私が黄龍の巫女だからって、なんでもかんでもみんなに命令するのは違うでしょ? あくまでお願いする側なんだから」

 

 別に真白は紅蓮のことを嫌っているワケではない。だが考えてもみてほしい。特に親しいというほどでもない異性のスケジュールに干渉するなど普通に考えれば非常識であるし、虫の居所が悪いらしいと言われた人物のところへわざわざ行く必要性がどこにあるというのか? 

 ここにいるのはプレイヤーが選んだ選択肢の通りにしか動けない『キャラクター』の朝比奈真白ではない。無限の選択肢を自分で自由に選べる朝比奈真白という人間なのだ。ならば学校という集団生活の場の常識的に考えて、黄龍の巫女と朱雀の侍という仕事仲間だとしても適度な距離感は必要だろう。

 

 大丈夫、関心が薄いということは明日から合流することになっても気兼ね無く「よろしく!」と出迎えることもできるのだから。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 真白たちのパーティーが禄存の迷宮の浅い階層で武器スキルについて盛り上がっているその頃、紅蓮は巨門の迷宮のボス部屋にて双骨鬼を討伐してそのまま居座り続けて瞑想を始めていた。

 その様子を黙って静かに見守っていた神霊・朱雀だが、どれだけ表面を取り繕うとも紅蓮の精神が荒々しく乱れていることに気付いている。そして紅蓮の心を乱している原因についても……朱雀が、自分が発した迂闊なひと言なのでは? と責任を感じていた。

 

『ふーむ。いくら斜に構えた態度を見せようと、大人びた雰囲気で振る舞おうと、紅蓮もまだ学生であり思春期だものなぁ。自分より実力で劣る、と思い込んでいる無銘彼方を我が評価すれば……愉快ではないだろうなぁ。これは十中八九、いや十の中の十が全て我の失態なのだろうなぁ』

 

 朱雀は『個』としての名を持つ上位の鬼のことをよく知っている。連中の多くは生物としての強度が低い人間を見下すものだが、ある一定のラインを超えた鬼たちは人間に対する評価が反転するようになる。

 それはこのゲームの開発者たちがプレイヤーにボス戦を楽しんでもらうための工夫のひとつであった。リトライしやすい迷宮の環境作りは勿論だが、負けたときのストレスを緩和するためにはボスとなる鬼のキャラクター性も重要だと考えたのだ。

 

 そのせいで強い鬼ほど人間に対して油断しないという、実際に戦う侍と巫女にとっては厳しい世界観になってしまったワケだが……ともかく、無銘彼方という学生が蜂眼坊を退けたという話を聞いたときも、学園や義塾の人間たちとは違いそれほど驚きはなかった。

 人の恐怖の心を喰らう鬼たちは、それ以上に人の強い心に魅入られる。あの問題児のお気に入りでありながらずっと正気を保っている無銘彼方であればほぼ確実に条件を満たすことを朱雀は疑っていない。入学式のときに見かけて憐れんだのも今となっては良い思い出である。

 

 だがそれを、無銘彼方は侍としての実力以上に心が強いのだろうという話をそのまま紅蓮に話したのは失敗だったのかもしれない。

 

『いまはまだ知るべきときではない、と。上位の鬼の存在を我や増永の者が黙っていたことも……紅蓮にしてみれば未熟者扱いとしか思えなかったかもしれんのだからなぁ。自分には黙っていたクセに、無銘彼方は手放しで褒めるのかと……申し訳ないことをしてしまったのだろうなぁ。ふーむ』

 

 ゲームではストーリーの都合で学生である主人公たちが解決することになるが、この世界では学生に頼るよりも先に大人が動く。当たり前のことだが、死亡する可能性がある案件を子どもに押し付けて自分たちは安全な所で待つなどという恥知らずな大人は────多数派ではない、はずである。たぶん。

 

 

『ふーむ。これは我の経験則でしかないが、こういうときに理屈で納得させようとするのは大人の都合よなぁ。せめて、せめてこう……なにか会話の切っ掛けでもあればよいのだがなぁ。さて、どうする────』

 

「朱雀、そこにいるか」

 

『む? 応とも、紅蓮。我はいつでも側にいるぞ』

 

「そうか。ならお前に頼みたいことがある。オレは無銘彼方と勝負がしたい。ヤツにそのことを伝えて欲しい」

 

『勝負、とな?』

 

 まさか、無銘彼方を武力で捻じ伏せることで自尊心を取り戻すつもりなのだろうか。もしそのような軽挙妄動のために朱雀の加護やスキルを使おうというのであれば仲が拗れることも覚悟で戒めてやる必要があるだろう。

 

『なぁ、紅蓮よ。お主の気持ちもわからなくはないが、いくらなんでも』

 

「ヤツと直接勝負をして、そして戦いの中でヤツから学びたい。お前が言う心の強さとやらを」

 

『不満を暴力で解消しようなどと────え? なんだって?』

 

「侍としての強さ。スキルの強さ。鬼すらも認める人間としての、心の強さ……どれだけ考えてもオレにはなにも見えなかった。なら、それを知る者から学べばいい。無銘彼方……お前が認めるほどの実力者、いや、単純なステータスだけならばオレのほうが上なのかもしれないが、そういうことではないんだろう? 果たして、迷いを抱くいまのオレにヤツの強さを理解できるだけの器があるのか……オレが本当の意味で『侍』と成れるのか……どうしても試してみたい。だから、頼む」

 

『ふ、ふーむ。そういうことであれば我としても協力を惜しむ理由は無いがなぁ……。しかし、無銘彼方が引き受けてくれるかは我にもわからぬからなぁ』

 

「そのときは迷宮攻略の協力を頼む。それも断られるようなら…………どうすればいいんだ?」

 

『それを我に聞かれてもなぁ。なに、まずは勝負のことを伝えてみよう。しかしな、紅蓮よ。この我を、四神・朱雀を伝書鳩の如く扱おうというのだからなぁ。もし勝負が叶い、それで何も学べなかったなどということになれば……そのときはお主の幼少期の恥ずかしいエピソードを、無銘彼方に教えてやるとするかなぁ』

 

「……死ぬ気で学んでやるさ」

 

 

 結論から言えば、彼方は紅蓮からの挑戦を快諾するのだが……とりあえず、本気で勝負をするため事故に備えて死に戻りが可能な貪狼の迷宮を勝負の場に選んだところまでは良かった。

 だが、戦いの前に紅蓮が「朱雀の加護も含めて本気で戦う。だからお前もオレを()()()()()()()()()かかってこい」と宣言し、それを彼方が了承したことで大変なことになるのだが、それはまた次の話────は無銘兄妹のDLCダンジョン攻略なのでさらに次の話で語るとしよう。




世界の理
『黄龍の巫女と朱雀の侍の仲を……アレ?』

黄龍
『紅蓮ルートなら休暇でベガスにいったぞ』
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