タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。 作:はめるん用
Q,ブレザー女子の集団にひとりだけセーラー服女子(和服改造)が紛れ込んでいるのを連れている男子生徒はどうなるか?
A,バチクソ目立つ。
例外的な視線を向けているのは彼方とパーティーを組んだことのある侍や巫女たち、あとは適性を持たない一般生徒の中で友好関係にある者ぐらいである。
彼ら彼女らにとって無銘彼方とは『皆のお兄さんが5割、皆のお父さんが5割』という評価をしたくなる人物なため「あぁ、また誰か困ってる人の世話してんだな~。まま、アイツが一緒ならとりま放置でええやろ」ぐらいにしか思っていない。これもまた人望の形だろう。
そして教師のほうはというと。
「ふーん。ちょうどいいや、無銘。オマエ、そのまま暮間のこと案内してやってくれよ。ついでに貪狼と巨門もサッサと攻略してきな。許可証の準備は私がやっといてやるから」
「え゛」
「暮間、迷宮攻略の基本はオマエが通ってた『義塾』とほとんどかわらん。だがもしわからないことがあったら無銘に聞けばだいたい解決するから安心しとけ」
「瘴気の薄い常世であれば助力など不要です……と、言いたいところですが。どうやら先生は私の実力を疑っているワケではなさそうですね?」
「虫除けにはちょうどいいぞ、無銘は。ムダに女子にモテようとして意味もなく見掛け倒しのスキル連発するようなこともないしな。それもまぁ思春期の特権だし、そういう男子にチヤホヤされたい女子が多いのも事実だが、暮間はそういうタイプじゃないだろう?」
「あぁ、そういう男子生徒は義塾のほうにもいましたね。暮間の名を知って尚、私を口説こうとする極一部の男子たちの無謀さはそこまでキライではありませんでしたが。無銘さん、ご迷惑でなければ私とパーティーを組んでいただけますか?」
「迷惑ってことはないが……先生、普通、こういうのは執行部とかそういう信頼できる相手に頼むことじゃないんですか? ただの転校生じゃなくて、交換学生なんですよね?」
「おう。だからあたしの独断と偏見で安心できるオメェに頼んでるンじゃねぇか。ちょうど交換学生関係の担当だしな。朝比奈のことも世話してくれたンだし、もうひとりぐらい男の甲斐性ってことで護ってやれよ。いいだろ~? 三年の燕三条とかさぁ、その辺の連中も賛成してくれたぜ~?」
「またあの人かぁ……」
鬼切姫の世界で、序盤の救済措置を担当していた教師がニヤリと笑う。ゲームでは貪狼の迷宮が終わるまで無料で消耗品や基本となる装備を提供してくれる有難いキャラクターだったが、いまの彼方にとってはただのイタズラ好きで厄介な大人でしかない。
徹頭徹尾ヒロインの味方になってくれる女性教師であり、生徒の長所を発掘する能力にも秀でた頼れる大人というキャラクターではある。が、その優秀さは加護無しの一般家庭出身という立場を利用していた彼方にとっては微妙にマイナスでしかなかったのだ。
侍でありながら多種多様の魔法スキルを使えることもそうだが、転生者特有の価値観のズレは如何なる状況でも揺るがない精神力の持ち主として好意的に解釈されていた。
安定したメンタルと(人間関係では)穏やかな人間性、そして加護無し一般家庭という平凡な育ちは大人が介入すると余計に面倒になる問題を解決させるには大変都合がよろしいのである。
「ま、よござんしょう。ほかの巫女たちの助っ人を引き受けてんのに暮間さんからのお誘いだけ断る理由もないですし。あと、同業者として義塾の侍や巫女たちがどんなんかも興味ありますしね」
「そう言っていただけると助かります。当方の義塾と此方の学園を比べてライバル関係のように面白おかしく語る者もいますが、同じ鬼と戦い人々を守護ることを役目とする者同士、できる限り協力して迷宮に挑めればと私は思っていますので」
(ゲームの初対面よりずいぶんと穏やかな雰囲気だな。いや、アレは事情というか状況が悪かっただけなんだけど。黄龍の巫女をしっかり護衛する四神の加護持ちってシチュエーションは、そりゃ見方によっては癪にさわるわな)
◇◆◇◆
転校生にしてライバルである暮間棗と何故かパーティーを組むことになってしまった自称モブキャラの無銘彼方。
こうなったら現状を利用して余計なマイナスイベントをひとつでも多く削ってしまえと、メインヒロインである朝比奈真白についてサラサラッと教えることにしたようだ。
「……ってことがあってな。そして勘違いしてほしくないんだが、先生が言ってた甲斐性というよりは興味本位のほうが強かったね。これだけは真実を伝えたかった」
「なにもそこを強調しなくても……。ですが、なるほど。たしかに一般人として生活していたのが、ある日突然そのような状況になってしまったのでは戸惑うのも当然ですね」
よし、上手く話せたな!
これで真白と棗の初顔合わせが刺々しいモノになる可能性はかなり減ったはずと大満足である。一応、誤解がきっかけで仲良くなるという展開ではあるのだが、それなら最初から友好的な関係を築いたっていいじゃないという臨機応変な対応を試みたワケだ。
そんな彼方の心遣いを棗以上に感心していたのは鵺である。暮間の家系とは古来からの付き合いであり、棗のことも産まれたときから側にいて見守ってきた鵺は、棗が黄龍の巫女へ多少の負の感情を抱いていることを見抜いていた。
己が与えた加護に恥じることの無いよう努力を続けるのは結構なことなのだが、その懸命さ故に朝比奈真白について「偶然手に入れた力で得意気になっているのでないか?」と勝手な想像をしていることを察していたのだ。その先入観を巧く解してくれた彼方を好ましく思うのも当然だろう。
それだけに疫病神手前の神霊に好かれているのが不憫でもあった。冥界童女が足掻く者に惹かれるのは人が前に進もうとする気概を尊いものとしているからだとは知っているのだが、だったら最初から素直に助けてやれよと言いたくなるのが鵺の気性である。
あとテメェ棗が声かけた瞬間トラブルのタネktkrみたいな顔して笑うたぁどういう了見だケンカ売ってンのかクソガキ。
冥界童女にしてみれば乗り越えられる前提の試練しか与えたことがないのに疫病神扱いとは甚だ不本意というものだ。それに鵺が暮間棗という巫女を大切に想っていることは理解できるが、自分のお気に入りの人間のことにまで口出しされる筋合いは無い。
あとキミィ彼方の声をかけられた瞬間の顔を見たら面白そうな予感しかしなかったんだもん笑うしかないでしょ犬モドキ。
鵺は人間を『導く』タイプの神霊であり、冥界童女は人間に『寄り添う』タイプの神霊である。どちらも人間に協力的でありながらケンカ腰なのはこうしたスタンスの違いによるものであり、これはこの2体の神霊に限ったことではない。
四神や鵺を含む大半の神霊はざっくり言うと“なるべく人間には長生きして繁栄してもらいたい”と考えている。人間たちの信仰心が自分たちの力となることもそうだが、純粋に人々の未来が幸福なものであるようにと願っているのだ。
対して黄龍や冥界童女を含む一部の神霊たちは“人と共に生きるのであれば、人と共に滅びるもまた一興”と考えていた。過酷な運命に翻弄され死の定めから逃れられなくなったとしても、最後に運命とやらへ向けてニコニコ笑顔で中指を突き立ててくれるド根性が拝めるのであれば共倒れも望むところなのだ。
もっとも、そんな事情は神霊同士が背後でバチバチと睨み合いをしていることなど知らない棗と、そもそも神霊の姿を見ることができない彼方にはあまり関係のない話である。
何故なら棗にとって重要なのは学園の管理下にある迷宮攻略に1日でも早く対応することであり、彼方にとって重要なのは棗の口から語られた──ゲームには存在しなかった『追加の交換学生』にいったい誰が来るのかということだからだ。
鵺が神霊扱いなのは女神転生シリーズで天使や精霊もまとめて悪魔扱いされているのと似たようなものという言い訳を感想を読んでいて思い付きました。