タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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イケメンの登場シーンは初投稿です。


会話のファウルボール。

 鬼切姫は女の子の主人公がイケメンとキャッキャウフフな青春を楽しみながら冒険に出かける学園ファンタジー作品である。少なくともゲームはそういうコンセプトでスタッフが作っていた。

 故に、この物語の主人公でありメインヒロインである朝比奈真白(あさひな ましろ)も攻略対象である男子たち──四神の加護を持つ侍たちと日々の交流で絆を深め、彼らに守護られながら迷宮に挑む権利を持っているのだが……。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 牙狼鬼の討伐に成功した翌日、戦利品であるエーテル結晶が入った袋を片手に真白はルンルン気分で錬成工房へ向かっていた。

 

 初めて手にした武勇伝を語って聞かせたルームメイトにして先輩巫女である燕三条雅(つばめさんじょう みやび)と後輩巫女の無銘凪菜(むめい なぎな)からは「あまり無茶をするな」と心配されてしまい欲しかったリアクションを得られずちょっとだけションボリしていた真白であったが、事情を察した友人にして頼れる侍・無銘彼方(むめい かなた)がイロイロ言いたいことを全て飲み込んで徹底的に褒めて伸ばすムーヴをキメたおかげで上機嫌なのだ。

 その代償として牙狼鬼のエーテル結晶の使い道が新しい武器の作製に決定してしまったが、これは言ってしまえば必要な犠牲だ。便利な魔法スキルの習得にも使えたのだが……真白の戦闘能力の強化という結果は同じなので実質巫女プレイを継続しているようなものである。大丈夫だ、RTAプレイヤーたちも同じ使い方をしているから問題ない。

 

「う~ん、斧もいいけどラストをピシッ! とキメてくれた大太刀を改造してもらうのも──いやいや、いっそのこと新しいカテゴリーに挑戦してみたりとか? ムフー、夢が広がって困っちゃうなぁ~♪ ……あ」

 

「む」

「おや」

「オッス!」

「こんにちは」

 

「えーと……どうも皆さん、その節はいろいろと」

 

 

 朝比奈真白、廊下を歩くだけで美形と美形と美形と美形に出会う!

 

 これぞ乙女ゲー主人公の貫禄!

 

 

「貪狼の迷宮を攻略したらしいな。少しはできるようだが、あそこは中等部の連中でもクリアできるダンジョンだ。この程度で浮かれているようでは……な」

 

 朱雀の加護を宿す正統派剣士! 増永紅蓮(ますなが ぐれん)! 

 

「紅蓮、少しは朝比奈さんのことを認めてもよいのではないですか? 一応、巫女としての能力は持ち合わせていることは証明されたのですから」

 

 青龍の加護を宿す知性派槍使い! 望国風魔(もちくに ふうま)

 

「そういやアイツと一緒に攻略してたよな。名前は知らねェけど、ちょくちょくひとりで迷宮に潜ってるところを見たことがあるぜ。わざわざ声かけてやるたぁ、アンタ優しいな!」

 

 白虎の加護を宿す豪快格闘家! 目白大地(めじろ だいち)! 

 

「まずは牙狼鬼の討伐成功、おめでとうございます。そして先日は試すような物言いをしてしまい誠に申し訳ありませんでした。ほかの巫女たちのお誘いをお断りしている手前、無条件で協力するワケにはいかなくて……」

 

 玄武の加護を宿す穏和系射手! 喜多静流(きた しずる)! 

 

 

 この4人こそが本作の攻略対象となる侍たちであり、初対面の挨拶でバッチリ協力要請を拒否してきた薄情者たちである。

 乙女ゲーム的には攻略対象となる男性キャラクターが序盤にしょっぱい対応をしてくるのは珍しいことではない。幼なじみとして昔から付き合いがあるのならまだしも、初対面の相手を簡単に信用するほどネオロマンス世界の人間関係は甘くないのだ。

 

 紅蓮からは「鬼との戦闘は遊びじゃない。弱いヤツにウロチョロされると目障りだ」と断られ。

 

 風魔からは「現時点で僕には貴女とパーティーを組む利点がありません」と断られ。

 

 大地からは「伝説がどうとか、黄龍の加護がなんだとか、そういう面倒なのはパスで」と断られ。

 

 静流からは「喜多の弓術を従えるだけの器であると示していただければご協力しましょう」と断られた。

 

 ハーレム系エロゲーのようにわかりやすさを重視している作品は別として、男性向けにせよ女性向けにせよ恋愛シミュレーションやそうした要素を含むゲームで遊んだことがあるプレイヤーであれば「ほーん」程度にしか思わないだろう。相手の性格や攻略タイプを知る手掛かりとしてサラッと流して終わりである。

 だが真白はプレイヤーではない。ほかの巫女よりもちょっとだけ前向きでちょっとだけ活発でちょっとだけ不退転なだけのどこにでもいる普通の女子校生ヒロインなのだ。転校したばかりの友人も知人もいない状況でこのような対応をされてそれもそうかなどと簡単に納得できるハズがない。

 

 故に四神の侍たちから黄龍の巫女への好感度は現在ニュートラルだが、黄龍の巫女から四神の侍への好感度はややマイナス気味である。当たり前だよなぁ? 

 

 ちなみに彼方が声をかけるまでパーティーメンバーが見付からなかったことそのものについては、この4人に八つ当たりするほど視野は狭くない。

 あれは学園側と理事長の初期対応に問題があると考えているからだ。牙狼鬼との腕試し? アレは自分で始めたことなのでノーカウントですよ、ノーカウント! 

 

 

「朝比奈さん、もしよろしければ適性レベルを上げるためのトレーニングをご一緒しませんか? 四神の加護を持つ私たちとのトレーニングは朝比奈さんにとってもよい経験になると思いますが、いかがでしょう」

 

「私“たち”だと? おい静流、なにを勝手なことを……」

 

「紅蓮さん。朝比奈さんだって黄龍の巫女という使命と向き合って頑張っているのですから、せめてトレーニングぐらいは協力してもよいではないですか。弱いのが気に入らないと仰っていましたが、ならば朝比奈さんが強くなれば同行するのもやぶさかではないのでしょう?」

 

「……最低限、自分の世話ぐらいできるのなら我慢してやってもいい」

 

「そうですねぇ……僕としても黄龍の巫女に関係する伝承には興味がありますし、もしかしたら青龍の加護の力を高める切っ掛けを得られる可能性もゼロではない。ならば、そこまで悪い話ではありませんね」

 

「そういやなんかそんな話あったなァ。つまり朝比奈に協力すればより強ェ鬼とバチバチやれるってことか! よっしゃ、そういうことなら喜んで協力するぜ! っても、土属性の特訓ぐらいか? 役に立てんのは。もちろん拳に興味があんならいくらでも教えっけどよ」

 

 序盤をクリアしたプレイヤーへのご褒美“一緒に特訓”コマンドの追加イベント、完了である! 

 

 あれれ、おかしいなー。私は一言も喋ってないのに会話が完結しているぞー? などと思いつつも協力を得られるならそれはそれでヨシ! とアドレスを交換する真白。

 それがポジティブ思考によるものなのか、目の前のイケメンとまともに会話するのが面倒になったことによるものなのかはわからない。しかしこれでいずれは──それぞれに対応する適性のレベルを上げれば仲間として認められダンジョン攻略に同行してくれることになるだろう。

 

 問題があるとすれば、四神の属性や攻略対象の侍たちと対応する適性レベルがほぼ全部初期値の『G』であることぐらいだ。

 

 適当に振り回すだけでもそれなりにダメージを出せそうな斧とは違い、剣や槍の扱いは適性レベルが上がるまで苦労しそうだからと後回しにしていた。弓は記念すべき最初の一矢が彼方の後頭部に突き刺さる未来しか見えなかったので論外。

 唯一『F』まで成長しているのは拳だけ。これは貪狼の迷宮のザコ鬼たちが巫女装束を着た女子がサムズアップするだけで武器を棄てて脱兎の如く逃げ出すようになった奇跡の一撃『オーガニック魔眼殺し』と、牙狼鬼との戦いで決め手となった戦法が『根性試・割腹打ち』というスキルとして昇華した影響である。

 

 火水風土の属性レベル? いえ、知らない子たちですね。次回作の追加要素ですか? 

 

(どれどれ、皆さんの適性レベルは──おぉう、さすが四神の加護なのかな! A+ときましたかぁ~。うーん、これなら一緒にトレーニングしたら私もイロイロ勉強になるんだろうけど……う~ん)

 

 学ぶことは嫌いではない。

 

 ただ、ダンジョンで戦えばエーテル結晶や素材を集めながらレベルアップできるのに、わざわざ学園でトレーニングをする必要性を感じないのだ。

 さすがに新しく攻略許可が出された『巨門の迷宮』で使ったことのない武器や魔法スキルを試す勇気はないが、それなら貪狼の迷宮にソロで潜ってコツコツ鍛えればいいだけの話である。

 

(でもな~、理事長から言われてるもんな~。黄龍の巫女は四神の侍と一緒に戦うことで真の力を解放できるって。毎回のように彼方くんを連れ回すのもアレだし、付き合いを増やしておくのは悪くないよね、うん)

 

 誕生、ネオロマンス(義務感)ヒロイン朝比奈真白。少なくとも攻略対象となる侍たちの好みをわざわざ調べてプレゼントを用意するようなタイプではない。




世界の理『侍とパーティー組めばスキル覚えられるのにわざわざ自分で開発する巫女なんかおらんやろww』

黄龍『お、そうだな』
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