タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。 作:はめるん用
人類の敵対者『鬼』
鬼を討つ者『侍』
そして、侍の導き手『巫女』
この世界は、ある日突然その巫女の力に目覚めてしまった女の子が主人公の乙女ゲームである。
俺は前世も今世も男として産まれたが、この『鬼切姫』というゲームが面白いゲームであったことだけは知っている。アクションゲームが好きだけど下手な妹と協力してエンディング全部制覇したからな。
イケメンに護られるのが乙女ゲーだと思い込んでいた俺だったが、女性向けのゲームに登場する女主人公はタフガイというか強かなキャラもいるのだと素直に感心したものだ。少なくともヘタレ系の男主人公よりはネオロマンスのアクティブ女子のほうが俺は好きになったね。
あと、ゲームをプレイしているときは特になにも思わなかったが、舞台が現代風学園物だったのはかなりナイスである。何故かって? そりゃ妹ともどもこの世界に転生しちまったからですよ。
案の定というかなんというか、この俺『
残念ながらチート能力などというご都合主義には恵まれなかったが、このゲームはコツコツ鍛えればいくらでも強くなれることを俺たちは知っている。凪菜はアクションゲームどころか運動もあまり得意ではなかったが、今世では小さいころから一緒に外で身体を動かして遊び回ったおかげでなんとか鬼と戦えるようになれた。
後にファンの要望で追加された、自由なキャラメイクでストーリー関係なくアクションを楽しむ『ダンジョンバスターモード』もこの世界には含まれているようで、さまざまなゲームやマンガの装備、技、魔法を再現できるのもありがたい。
どうせ戦わなければならないのなら、なんとか楽しみを見付けなければ心が持たん。社畜人生とはまた違うストレスによる弊害が……いや、まぁ、いまのところ全力で異世界転生を楽しんでいるけど、ホラ、やっぱりそのうちあるかもしれないし。なんかこう、イロイロと。
もちろん真面目な理由もちゃんとある。侍の所持するスキルはパーティーを組んだ巫女も使えるようになるのだが、肝心の巫女の戦闘スタイルと噛み合わないと有効に活用できないのだ。
例えば妹の凪菜の場合、鍛えた分も含め能力として【剣:C】と【刀:C】と【槍:B】に【雷:A】の4つの攻撃系適性を持っているので、それぞれの適性による補正が発動するようなスキルを俺が使えないと意味がない。
正確には全くの無意味というワケじゃなく、ゲームシステムとして、適性の無い武器スキルや魔法スキルでも使い続ければ適性を獲得できる。だがそれを知るのは前世の知識を持つ俺たちだけ。いや、もしかしたら公表されていないだけで偉い人たちは知っているのかもしれないが……まぁ、黙っていたほうが身のためだろう。こういうのはトラブルの原因になるのが異世界転生のお約束だし。
ともかく。
前世で鬼切姫シリーズをやり込んだ俺たち兄妹は、知識と経験を活かしてこの世界を楽しむことにした。
あとは主人公である『
このゲーム、プレイヤーとしては序盤が1番面白い。武器や防具を揃え、スキルを集めてどんなビルドにしようかと悩んでいる時間はゲーマーにとって至福の時間である。
だが、当事者にそんな余裕などあるはずがない。朝比奈真白の中にチート転生者でも入っていれば別だが、そうでなければ彼女は正真正銘の一般人として生きてきた少女なのだ。いくら巫女の力に目覚めたとはいえ、産まれてすぐ適性やスキルを持っていた俺や凪菜とはスタートラインがまるで違う。そんな状況で周囲の人々や攻略対象であるイケメンたちの信頼を得るためにひとりでダンジョンに挑まなければならないとか、もはや嫌がらせでしかない。
ワンチャン歓迎される可能性も考えたんだけどね。序盤の単独行動はチュートリアル的な都合もあるからね。
でもダメだったよね。特別な巫女の力に目覚めた主人公は学園から優遇されちゃうもんだから、一般生徒はまだしも巫女と侍の適性を持つ生徒たちからは風当たり強いよね。
妬んでもいいじゃない。
だって、人間だもの。
これは大人側の、学園側の対応が悪いな。普段ガキ扱いしておきながら、こういう都合のいいときだけ理解ある態度を期待するのは卑怯ってなモンだ。
あとはどうやって声をかけるかだが、なんと朝比奈のほうからダンジョンに誘ってきた。一緒にダンジョン探索をしてくれる侍が見つからなくて困っているとルームメイトに相談したところ、俺に頼めば大丈夫だとアドバイスされたらしい。
どうやら原作開始と同時にオリチャーが発動していたようだ。だってゲームだと朝比奈はひとり部屋だもの。しかもそのルームメイトってのが俺の知ってる先輩の巫女っていうね。やっぱり転生者のせいでシナリオ壊れたじゃないか(呆れ)
しょうがねぇ~な~。なら俺がサポートしてやるか! リカバリーは転生者の嗜みで候。ちなみに凪菜は不参加である。パーティーの巫女が増えると獲得できる経験値が減るシステムなので、ある程度スキルを修得するまではむしろ邪魔になるので遠慮するとのこと。
とりあえず今回はダンジョンの雰囲気だけ味わう感じでいいか。ゲームではプレイヤーが操作するので初期装備と初期スキルでチュートリアルダンジョンを攻略することも可能だが、初期装備の錫杖についている輪っかをつついて「ほぇ~」とか言ってる朝比奈にはたぶん無理。
さて、まさかの主人公さまの初陣をエスコートである。紹介者である先輩のメンツを潰さないためにも、気合い入れてサポートしようか!
(いんゆめ要素は)ないです。