
その後の、物語。【さとゆみの今日もコレカラ/第509回】
昨日は福岡で、『書く仕事がしたい』の読書会だった。
参加者の中に、「この本が、生まれて初めて1冊読み切った本だった」と話してくれた人がいた。
昔、マンガ家を目指したことがあり、マンガはたくさん読んでいた。でも、本にはなかなか手が伸びなかったのだという。
その後、私の本を次々と読んでくれ、私がすすめた本もどんどん読んでくれ、「ついに本棚を買うまでになりました」と、彼女。
自分も書けるようになりたいと思ったそうで、昨年、福岡から大阪まで、私のエッセイ講座に通ってくれた。
彼女にはお母様がいる。
昨年末、彼女は、この「今日もコレカラ」のZINEを2冊頼んでくれた。
1冊は、彼女の名前でメッセージが欲しいという。もう1冊は、お母様にプレゼントするという。
エッセイ講座のとき、介護が必要になったと言っていたお母様のことだとわかった。
少し認知が混乱するときがあるそうだ。だけど、彼女がエッセイ講座の話をしたり、私の本の話をするときは、いつも楽しそうに聞いてくれるという。
お母様は種子島で美容師をされていた。
書くことが大好きで、結婚前は、仲間と集まって同人誌をつくっていたそうだ。だから娘が本に興味を持ったり、書くことに興味を持ったことがとても嬉しかったのだという。
彼女が買った私の本も、読んでくださっているのだとか。
ケア先で、お母様が、この本を手に取ってくださるのだろうか。
心をこめて、栞にメッセージを書いた。
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大晦日の前日。彼女から「ZINEが届きました」と連絡があった。早速お母様に渡したという。
「ええ?! さとゆみさんが私の名前書いてくれてるの? わたしのため?」と、お母様はすごく喜んでくださったそうだ。
そして、ご自身が同人誌を作っていた時のことを話してくれたという。実は編集長をしていたということを、彼女はその日初めてお母様から聞いた。
「種子島の本屋さんに置かせてもらってて、たしか200部ほどは売れた」と話してくれたらしい。「自分が一生懸命書いていた時代を思い出していて、さとゆみさんのZINEのメッセージに涙していました」と書かれている。
昨年彼女は、営業の仕事を辞めて、書く仕事への一歩を踏み出した。
昨日の読書会では「家族を養えるくらい稼げる仕事だったのですが、でも、書く仕事がしたいと思っちゃったんです」と話してくれた。
彼女はいま、私のゼミに通ってライティングを学んでくれている。
両親の介護、お子さんのお世話。そして、新しく始めた仕事に慣れなくてはならない自分。ギリギリまで受講を迷っていたらしいけれど、背中を押してくれたのはお母様の言葉だったらしい。
「あなたに、たくさん面倒みてもらっているから。私の貯金で足りるなら!」と、お母様がゼミの受講代を払ってくださったのだという。
いまは、母の気持ちも私の肩にのっている。だから、気合を入れて受講しますと、ゼミが始まる前、彼女は連絡をくれた。
ZINEを渡した日、「あなたの本もいつか読みたい」と、彼女はお母様から言われたそうだ。
「うん、私も書くから、これ以上ボケちゃダメだよ!!」と、彼女も泣きながら”本を書く” 宣言をしたという。
「『忘れてばかりで、面倒ばかりかけてごめんね』が口癖の母が、こんなに喜んでくれて、本当に私も嬉しくて。今年一番、親孝行できた日になりました」と教えてくれた。
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本を書いたあとの、その先に。
誰かの人生がこんなふうに動いている。
彼女だけではなくて。いろんな人たちの本を読んでからのその後の物語をプレゼントしてもらった。
本を読んでくださった読者のみなさんから、著者孝行された1日だった。
ありがとうございました。
(ご本人の許可をいただいて書いています)
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