03.辛辣なことをボソッと言う同級生と気遣い上手の後輩ちゃん

「——あーあ、またみゃーこ先輩のこと怒らせちゃった」


 美夜が去った逆側から、二人の少女がゆっくりと近づいてくる。


 一人は、苦笑いを浮かべながら、美夜が去ったほうを見つめていた。

 その少女は水泳部唯一の一年生の貴島きじま彩莉さいり

 茶髪のサイドテールがトレードマークの小柄な少女で、実年齢より三歳ほど幼く見える。端的に言えば、ペッタンコ。


 そしてもう一人は水崎みずさきフィリシアというのだが——


「…………」


 いつも無表情な二年生。


 周りに「シアちゃん」と呼ばれているが、可愛げのないほど冷静で、感情の起伏がほぼない。


 銀髪と碧眼が示す通り、西洋の血を引いており、幼い頃に親の再婚で日本に来たらしい。 


 日本語はペラペラだが、周斗に対してはほぼ無言。

 話したとしても——


「……周斗はゴミ」


 冷淡かつ的確な一撃を浴びせるのみ。


「まあまあ、シア先輩。ゴミはちょっと酷いから、せめて『生』をつけてあげましょう」

「そっか……周斗は生ゴミだった」

「いや、二人ともなかなか酷いぞ!」


 思わずツッコむ周斗だが、二人はあっさり流す。


「お前ら、美少女だからってフツメンの俺をバカにして!」

「いえ、性格がゴミだと言ったんですよ?」

「顔は普通。問題は人間性」


 二人の冷淡な視線が突き刺さる。


「でも、彩莉を美少女って言ってくれたことについては、ポイント高めです♪」

「まあ、それは事実だからな」


 彩莉が嬉しそうに笑い、周斗は軽く肩をすくめる。


 水泳部は美少女揃いだ。三年の柚葉、二年の美夜とシア、そしてこれから成長しそうな一年の彩莉。


 そんな中に男子はたった一人。


 役得と言えば役得だが、スケベなアクシデントも多く、目のやり場に困ることもしばしば。この一ヶ月で多少は慣れたが——。


「……早く、柚葉先輩のおっぱいに近づきてぇなぁ」


 周斗は遠い目で天井を仰ぐ。

 美少女だらけの水泳部という恵まれた環境。それなのに、なぜか毎日精神的ダメージを受けている気がする。自分はただ、柚葉のおっぱいにタッチしたいだけなのに。


 見返してやりたい——柚葉のおっぱいに堂々と触れられる男になりたい。


 そんな彼の横で、シアはふっとため息をついた。


「……やっぱり生ゴミ」

「俺だって一生懸命に生きているんだ!」


 シアが「フンッ……」と鼻を鳴らすと、彩莉がクスクスと笑う。


「まあまあ、シア先輩。あんまり言うと周斗先輩が傷ついちゃいますよ?」

「そうね……」


 シアは思案げな顔になる。


「……傷んだ生ゴミになっちゃうか」

「ダメージ軽減どころか追加されたんだけど!?」


 周斗がツッコむも、シアの目は相変わらず冷たい。


「周斗先輩の最終目標って、柚葉先輩のおっぱいに触ることですよね?」

「ま、そういうことだ」

「えっと……触ったとして、その次は?」

「んー……次は、美夜のおっぱいかな?」


「「…………」」


 彩莉とシアが揃って無言になる。まさにゴミを見る目だ。


「ちょ、なんだよ!? そっちが訊いてきたんだろっ!」

「周斗先輩……女なら誰でもいいんですか?」

「馬鹿言え! 俺が狙うのは 柚葉先輩のおっぱいただ一つ!」


 周斗は小声で「……いちおう、今のところ」と付け加えた。


「だから、それ以外のおっぱいに手を出しているヒマはない!」


 シアはじっと周斗を見つめ、


「……やっぱり生ゴミ」


 と、お決まりのセリフを呟いた。


「今の発言はむしろ男らしくて格好いいだろ!?」


 シアの目は「ただのスケベとどう違うのか説明してみろ」と言わんばかりだった。


 そんな騒がしいやり取りのあと、彩莉がプールサイドの時計を見て「そろそろ上がりましょう」とシアに言った。


「じゃ、私たちは上がりますねー」

「おお、お疲れさん」

「周斗先輩は?」

「ん? 俺はー……もう少し練習してから帰るよ」

「え? まだ練習するんですか?」


 彩莉は目を丸くした。


「俺の人生、今日という日は一度しかない! ならば、柚葉先輩のおっぱいに一秒でも早く近づくべきだろ!?」

「いや、ちょっとなに言ってるかわかんないです……」


 彩莉は苦笑しながら、手をひらひらと振る。


「じゃあ、一人で溺れないように気をつけてくださいね〜♪」

「……明日の朝刊の見出しが楽しみ」

「ん? シア、今のはどういう意味だ!?」


 ツッコミを入れる間もなく、二人は更衣室へ去っていく。

 静かになったプールで、周斗は水面を睨んだ。


「よし……今日こそは、先輩のおっぱいに一歩でも近づいてやる……!」


 そんなどうしようもない決意とともに、彼の自主練が始まった。

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着とけ、セーラー服!〜じゃないと全裸下校〜 白井ムク @shirai_muku

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