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2025年3月13日木曜日

齊藤飛鳥・小説リプレイvol.28『常闇の伴侶』その4 FT新聞 No.4432

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児童文学・ミステリ作家、齊藤飛鳥さんによる
TRPG小説リプレイ
Vol.28
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〜前回までのあらすじ〜
《太古の森》で行なわれている、怪しい儀式の原因を突き止めれば、高額報酬が期待できる。そんな噂を安酒場で聞いた冒険家乙女のクワニャウマは、カリウキ氏族の戦士ゲルダとまじない師ヴィドと《太古の森》の探索を始めた。やがて出会った樹人の長老から、怪しい儀式をしているのは闇エルフ達であり、その儀式に自分の弟が利用されているので楽にしてやってほしいと依頼される。それを引き受けたクワニャウマ一行は、歓迎の宴に打ち興じた後、新たな冒険の段階へと進むのであった。


『常闇の伴侶』リプレイは、今回から従者が登場します。ルールを読んでいる時には何気なく見ていた、この従者を連れていけるシステムですが、よくよく考えたら「プレイヤーは、主人公にあたるプレイヤーキャラ以外のキャラを複数人作る」ことに気がつきました。
今までTRPGやゲームブックでプレイしていて主人公は何度も作成してきましたが、それとは別に新規のオリジナルキャラクターを作成するのは初めてです。
ローグライクハーフが、TRPGのようなゲームブックのような定義が難しいゲームというのが、また一つ実感しました。
自分オリジナルのキャラクターを同時に複数人登場させ、うまくゲームをプレイできるのか。ゲルダとヴィドとの掛け合いを、うまく成立させられるのか。
かと言って、新規キャラを作るのが難しいから従者を雇わずに冒険を進めていったら、絶対に死ぬ自信があります。
この時に思い出したのが、十五年くらい前に読んだ西尾維新先生の『ザレゴトディクショナル』で紹介されていた登場人物の創作技法でした。
すでにいる登場人物の個性とかぶらないように、新規の登場人物を作るというものです。
この技法に当てはめて、ゲルダとヴィドとクワニャウマとかぶらないキャラを作れば、無事にゲームをプレイできると考え、さっそく実践しました。
ゲルダは硬派、ヴィドは軟派、クワニャウマは強欲で、お兄さんお姉さんキャラ。
彼らの個性に重ならないように従者のキャラを設定すればよいだけになり、困難は瞬く間に解消。後はここに自分の好みや動かしやすさを追加させていけばいい。そう言えば、リプレイは主人公キャラの一人称で書くという自分ルールのせいで、片言キャラは読みづらくなるから今まで採用してこなかった。でも、従者なら台詞だけで地の文は語らずにすむから片言キャラにしよう……との試行錯誤を経て完成したのが、「エルフの弓兵で片言少女・ボケの主人公と区別をつけるためにゲルダとヴィドと同じくツッコミ属性」という従者キャラでした。
名前は、ウペペサンケ。
……天才作家の創作技法まで引き合いに出して考えたキャラクター作りの流れで、どうしてファンタジー世界ではけったいな名前をつけてしまったのか。
我ながら、謎です。


※以下、冒険の核心部分に触れる内容を含みますので、未読の方はご注意下さい。

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ローグライクハーフ
『常闇の伴侶』リプレイその4
《2回目の冒険》

齊藤(羽生)飛鳥
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0:冒険のはじまり ≪2回目の冒険≫
昼間だというのに、そこから先に一歩踏み出すと急に背筋が寒くなった。影が濃くなる気配。全身に違和感を禁じ得ない。決して、ゆうべの樹人たちの宴会で呑みすぎたせいではない。まあ、ヴィドが「二日酔いなんで後から行く」と言うので置いてきたから、彼と一緒に飲んだわたしも、ひょっとしたら呑みすぎたかもしれないけどね。
何はともあれ、ここからは闇の聖域なのだと改めて噛みしめる。
どこか遠くで角笛の音が響く。闇エルフの巡視隊に気をつけろという樹人たちの注意をわたしたちは思い出す。闇エルフはこの地に他種族が踏み込む事に寛容ではない。彼らに捕まったが最後、生け贄として闇神に捧げられると蛮族の狩人たちの間でも恐れられている。
まだ、見つかるわけにはいかない。何せ、まだまだ稼ぎたりない。
「冷静に考えたら、わたしもゲルダも若くていきがいいんで、生け贄にはもってこいだから用心しなきゃ。自分のヘマで相手が獲物をただで手に入れて丸儲けすることほど、頭に来るものはないからね」
「お前は損得しか頭にないのか、クワニャウマ」
「節約も頭にあるよ。例えば、ゆうべの冒険で預かった無花果の若木になっている果実を食糧代わりにして飢えをしのぐとか」
「命がけの冒険の最中だが、実はゆとりがあるだろう? たいした肝の太さだ」
別にゆとりもなければ、肝も太くないのだけれど、ゲルダはわたしをそのような人間と解釈したらしい。
「それこそ、冒険家にふさわしい資質だ。お前と組めてよかった」
ゲルダは、最上級の賛辞をわたしにくれた。
良好な人間関係とは、美しい誤解から成立することもあるのかな……?


1:エルフの集落
森を歩くうちに、わたしたちの目の前に光のエルフたちの集落が現れた。
〈太古の森〉に棲まうのは闇エルフだけではない。光のエルフたちもまた集落を営んでいる。
偉大なるエルフ王、カセル・ケリスリオン・フィスティリオンに忠誠を誓うエルフたちは、森の統治者として闇のものどもをこの地から掃討するべく争いを続けている。御苦労なことだ。
「やあ、あんたら冒険家かい?」
「この時期に森の奥へゆくのなら、闇エルフどもに気をつけるのだな」
エルフたちが感情の読めない口調で助言をくれる。
「お前たち人間が夏至を祝う祭りをするように、奴ら闇の眷属も邪悪な神に捧げる祭りを行うそうだからな」
感情が読めない虚無顔で、情報をくれた。
ここの集落のエルフたちはみんな、基本この顔つきか。
「闇エルフに気をつけるとなると、従者を雇った方がよさそうだ」
ゲルダが、考え考え言った。
「そうだね。お金は使ってこそ、その真価を発揮する場合がある。というわけで、従者を雇いたいんだけど、この集落に腕のいい戦える従者はいる?」
「いるとも」
「おーい、ウペペサンケ。お前を雇いたいというお客さんがいらっしゃるぞ」
感情が読めない声と虚無顔だけど、基本的に親切らしい村人エルフは、広場で遊んでいた子どもたちへ呼びかける。
すると、その中から12〜13歳くらいの少女がこちらへやって来た。
プラチナブロンドの髪をポニーテールにした、青緑色の瞳が美しい少女だ。
「ウペペサンケ。弓兵!」
ウペペサンケは、勢いよく自己紹介をする。人間の言語にはまだ精通しきっていないらしく、若干片言だ。
「そう。今まで冒険した回数は?」
「ない! でも、弓はこの集落で一番うまい! この前も、狩りで鳥を十羽射落とした。だから、金貨5枚で従者を引き受ける! その分、よく働く!」
自分を売りこむのに「病気の親が〜」とか「うちは貧乏なので〜」と無自覚にこすずるく人の善意につけいろうとはせずに、自分にはそれだけの値打ちがあると交渉するフェアな姿勢。初めて冒険に出た時のわたしに似ている。
「ねえ、ゲルダ。この子にしない?」
「むぅ……」
ゲルダは、少し眉間にしわを寄せる。
「何か戦士として気になることでも? 」
「弓兵としての腕前が確かなのは、筋肉の付き具合でわかる。ただ、お前の名前のクワニャウマも言いにくいのに、今度はウペペサンケ。わたしの舌の鍛錬になりそうだ。頼むから、次に雇う従者がいたら、モケーレ・ムベンベとかヨナルデパズトーリとかいう名前の奴は勘弁しくれよ。これ以上はわたしの舌が限界だ」
「つまり、ウペペサンケを雇うのに賛成ってことね」
「そういうことだ。わたしは戦士のゲルダだ。よろしく」
「よろしくね、ウペペサンケ。わたしは、冒険家のクワニャウマ」
ゲルダの舌に負担をかけることになったけれど、従者が増えたことはこの先の冒険で助けになる。
わたしたちは、少しの休息の後、三人で先を進んだ。


2:古き樹人に刻まれた壁画
わたしたちがエルフの集落を出発して一時間もしないうちに、弱り果てたポプラの樹人と出会った。
彼はぐったりとその巨体を傾け、幹に現れている表情も苦しげだ。
(これは酷い……)
わたしは樹人の背中にあたる部分に、奇妙な文様や図形が深く刻み込まれている事に気づいた。
《闇の妖精どもが刻んだ図を写し取るのだ……》
樹人が苦痛に顔を歪めながらも伝えてくる。そこには闇の聖域へ向かう道が記されていた。
「他人様の背中を好き勝手に使う奴がいたものね。わかった。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ。えーっと、紙を背中に押し当てたら、そこを上からチョークでシャカシャカシャカ〜」
弱り果てたポプラの樹人だったけど、すさまじい悲鳴を上げた。
「写し取れと言われたら、実物を横目で見ながら紙に書き写すものだろう! じかにこすって拓本をやる奴がいるか!」
「この方が一気に写し取れるから、時間がかからなくてお得かと思って」
「ゲルダ。クワニャウマ、危険人物……」
「大丈夫だ。私がちゃんと手綱を握っておく」
《そうしてくれ……》
先程まで以上の苦痛に顔を歪めながら、樹人は虫の息でゲルダに言う。
何だかすっかり樹人の信頼をなくしてしまったが、地図が確保できたので、よしとしよう。


3:中間イベント1≪2回目の冒険≫:『闇妖精の集落』
(しっ……静かに)
ヴィドがわたしたちの前に現れるなり、ハシバミの茂みに低く身を潜めながら、身振りで前方を指し示した。
ごめん。今の今まですっかり忘れていたよ、ヴィド。
そういや、今朝、二日酔いがきついので後から行くって言っていたよね。
痩せた田畑や粗末な藁葺き屋根が葺かれた丸太小屋が目に入る。集落だ……そして恐らくは。
(闇エルフ……か)
ゲルダが苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。ヴィドが小さく頷いた。ウペペサンケは、眉間と口元に深い皺を寄せている。
(見つかるわけにはいかない……迂回しよう)
わたしたちは集落から距離をおいて、周辺の木立の中を足音を忍ばせながらゆっくりと進む。
「遊んでいる暇は無いんだよ!」
女の怒鳴り声に目を遣ると、年増の闇エルフ女がなにやらガミガミとまくしたてている。やせ細った闇エルフの男たちがぶつぶつと恨みがましく文句を口にしながら、手にした農具を荷車に積み込んでいる。
「真夜中までに刈り入れた収穫物を祭壇に集めるんだからね」
「連日の前夜祭のおかげで眠くてたまらんぜ」
「ガキどもの手も借りたいところだがな」
「常闇の伴侶たちをこき使おうってのかい。まったく呆れるね、あんたらは」
疲れたような口調の年増女の小言を背に、男たちは荷車を押して森の奥へ姿を消した。仕事ができない男たちと、彼らに手を焼く女。人間の集落とまったく変わらない光景に、闇エルフに対する恐怖心が雲散霧消した。
(おい。あれ)
ヴィドの耳打ちに視線を横に移すと、糸を紡ぐ若い闇エルフの女たちが背にした赤子が、まぶしいほどに白い肌に太陽の光を浴びながらすやすやと眠っている。
(あいつら……エルフの子供を攫ってきているのか?)
(いや、それにしては……馴染みすぎている)
ゲルダの指し示した先には、鶏小屋で餌を撒いている幼いエルフの少年少女たちの姿があった。皆一様に白い肌を粗末な衣服に身を包んでいる。この集落で黒い肌をしているのは大人だけなのだ。しかし、なぜ。
不意にばたんと納屋の扉が開き、わたしはあっと小さい声を上げる。
(馬鹿)
ヴィドがわたしの脇腹を小突く。
顔をこちらに向けたのは、泉の傍で絞首樹に囚われていたエルフの少女だ。向こうもわたしに気づき、ぽかんと口を開けている。
(まずい、見つかる前にずらかるぞ)
そりゃそうだ。
わたし、彼女ごと絞首樹に炎球を食らわせて、危うくこんがりさせかけたからね。
ヴィドとゲルダが足早に木立の奥へ歩を進める。わたしもウペペサンケも慌ててその後を追いかけた。


4:狂える精霊
何か小さな鈴の音が聞こえた気がして振り返ったけれど、結局だれも見当たらない。
そんなことを二、三度繰り返してから歩き続けることしばらく。
わたしは、喉の渇きを覚えた。
「水飲みたい……」
「クワニャウマ。この先、泉ある。しっかりする」
「森に詳しい奴がいると助かる」
わたしたちは、ウペペサンケの案内で最寄りの泉へ向かった。
ようやく辿り着いた泉には、非道にも毒が流し込まれていた。
「ひどいな。闇エルフかオークかの仕業だろうか」
「そうかもね。どんな事情で誰がやったことであれ、せっかくただで飲める泉があったのに使えなくするとは、世界に対する大いなる損失! こんな真似をした輩は、これから一生タンスの角に足の小指をぶつける呪いをかけてやりたいわ!」
「そこまで恨む……。クワニャウマ、おとなげない」
「だって、せっかくただで水を飲めるチャンスだと思ったのに……」
わたしの言葉が終わるか終わらないうちに、泉の中から水の精霊ウンディーネが襲いかかってきた。
「オクレ、兄サン!」
「へ……変な夢を見てるーっ!」
「違う! 毒にやられて正気を失っているんだ!」
「どっちにしろ、まずい!」
完全なる不意打ちにうろたえていると、刹那、生い茂った無花果の葉が毒水からわたしたちの身体を守る。
《せめてもの礼じゃ》
無花果の古木の精霊の声が聞こえた気がした。
「預かっているこの無花果の若木のお母さん……。ただで助けて下さった御恩に報いるために、お子さんをちゃんと安全な場所に植えさせていただきます」
「ゲルダ、クワニャウマがまともなこと言っている。毒水、浴びたせい?」
「考えられなくはないな……」
「おーい、二人とも。しっかり聞こえているからね?」
そうは言ってみたものの、急速にゲルダとウペペサンケが仲良くなっているからいいや。
冒険には、結束力が何より大事だからね。


5:殴木
運よく水の精霊ウンディーネの襲撃を免れた後、わたしたちは木立の中を進んだ。不意に何かの気配を感じると、大木が太いこぶだらけの枝を振り下ろしてきた!
「あれ、殴木。知能の低い樹木の怪物。縄張りに入り込んだものを容赦なく打ち据える」
ウペペサンケが説明しながら器用によける。
「へえ、そうなん……ブホッ!!」
よけたつもりが、背中にこぶだらけの枝を食らい、わたしは顔面で道路を開拓できたのではないかと錯覚するほどふっ飛ぶ。
だが、顔を上げると、目の前には黄金色に光り輝くキノコが実っていた!
「金貨15枚、確保ー!」
「クワニャウマは大丈夫かと声をかけようと思ったが、その様子だと大丈夫だな」
「顔面血だらけなのに、幸せそう」
「ゲルダ、ウペペサンケ、無事だったのね。よかった。こっちは、見よ! 金貨15枚キノコを確保よ!」
「はいはい」
「へいへい」
若干の温度差はあったけれど、わたしたちはお互いの無事を確認し合ってから、再び歩き始めた。


(続く)

∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴

齊藤飛鳥:
児童文学作家。推理作家。TRPG初心者。ゲームブックは児童向けの読書経験しかなかったところへ、『ブラマタリの供物』『傭兵剣士』などの大人向けのゲームブックと出会い、啓蒙され、その奥深さに絶賛ハマり中。
現在『シニカル探偵安土真』シリーズ(国土社)を刊行中。2024年末に5巻が刊行。
大人向けの作品の際には、ペンネームの羽生(はにゅう)飛鳥名義で発表し、2024年6月に『歌人探偵定家』(東京創元社)を、同年11月29日に『賊徒、暁に千里を奔る』(KADOKAWA)を刊行。

初出:
本リプレイはFT新聞が初出の書き下ろしです。

■書誌情報
ローグライクハーフd66シナリオ
『常闇の伴侶』
著 水波流
2024年7月7日FT新聞配信/2025年書籍版発売予定


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